にゅうめん
お昼が終ったら、片付けをしてから木刀作り。
いつもの流れのように今日も片付けをしているのですが、今日のお昼は鯵の南蛮漬けもあったので、豆腐ハンバーグが少し残りました。
残ってくれたので、逆にこれはそのまま使えるという事で。
といっても、残っているのはまだ焼いていない豆腐ハンバーグ。
片栗粉を入れたところまでは一緒なのですが、空気をなるべく含ませないようにしたまま冷蔵庫でそのまま。なので、今夜の夕飯の心配が減ることに。
「焼かないのですか?」
「うん。別に使うようにしようかなって」
「別、ですか?」
「そそ。夕飯に出すから」
「お夕飯ですね。という事はコレから昨日の続きでしょうか?」
「だね。まあ、迷っているんだけどね」
重たい木刀の形作りは終っているので、硬い方を形作って明日両方一気に磨いてみるのもいいかなというちょっとだけ欲張りな考えが浮かんでいるのです。
三本、手の馴染みや重さの違いも気になりますし、もし今週もダンジョンに行くのであれば硬いものや重たいものも試してみたいという所。
「それでしたら……」
迷っている話をしてみた所、精霊に思いがけないアドバイスをもらいます。
それがまた理に適っているので、何とも悔しい所。
「明日ソレをやってみるつもりだから、今日は硬い木持って削ってくるよ」
「ええ。それがいいと思いますよ。お夕飯が決まっているとはいえ、なるべく早めに帰ってきてくださいね?」
「はいはい。で、精霊はどうするの?」
「もう少し、ローブについて調べてみようかと」
「わかった。じゃあ、行ってくるよ」
「ええ、行ってらっしゃい」
と、片付けが終ってからいつも通りに南の扉へ。
今日は硬い木の木材を持ち歩いているので、若干不審者のような感じはありますが、扉の皆さんもああ、いつものと簡単に会釈をして通してくれます。
扉を抜けて、優しく風がひと撫でしてくれるのはいつもの事。
軽い足取りでいつもの場所まで行って、風のチェンソーで木材を思い通りの木刀の形へ加工していきます。
木刀の形がある程度出来て来たら、風のチェンソーで撫でる様に木刀を磨くような感じで、加工していくのですが何度もやってきているのもあってか、ごく一部はそのままでもいいのではないかと思える程度にはいい感じに磨けてきているのは、成長でしょうか?
そんな感じで自画自賛をちょくちょく挟みながら、木刀の形が出来ます。
念のために、柄頭にちょちょっとマークを付けたら終わり。
思っていたよりも早く、それは出来あがったのでまだ帰るにはちょっと早い気がしますが、意外と後片付けに時間がかかります。
穴を掘って、木屑を入れて埋めなおして。
「って、いつもやっているけど少しおかしいよな」
昨日も同じことをしているので、すぐそこに穴を掘った記憶があるのですがそこに穴の後は無く。普通に草原の一部になっているのです。
それだけでも不思議なのに、近い場所を掘っても木屑が出て来ることもありません。
そんな速さで土に分解されるというのも地球ではありえないので、不思議に思う所なのですが、
「まぁ、地球じゃないもんな」
そう。家の掃除を風の精霊がしてくれていて、ゴミの片付けを街に居る精霊が片付けてくれているとも教えてもらっています。
そんな不思議な地球とは違う世界の土。埋めたそばから分解をしていたとしても不思議ではないと思えば、納得もしてしまいます。
でも、気になるのでちょっと悪戯するように埋めてからすぐにもう一度穴をスコップで開けてみることに。
「……あれ?変化ないか」
変化していると思っていたのですが、そんな事は無く。
ちょっと予想と違ったなと思いながら穴を埋めなおしていると、日も傾き始めています。
「さ、帰って夕飯つくるかな」
風のチェンソーでいい感じに磨けたのは持ち手の部分なのである意味硬い木の木刀としては出来上がりに近い状態なのですが、やはりしっかり形は整えたい所。
行きと一緒で、帰りも南の扉の所で挨拶をしたのですが、いつもの人が声を掛けてきます。
「ああ、いつもの。今日もそれを作っていたので?」
「ええ。明日もですけど、硬い木で今回は作っているので多少の差異はありますけどね」
「ほほぅ。急ぎではないのですが、今度相談を一つしたいのですが」
「相談ですか?」
「ええ。お時間を作ってもらう事は可能ですか?」
「長い話でなければ」
「それは助かります。こちらも話を詰めてお話ししたいのでまた声を掛けさせてもらいますね」
「分かりました。あー、明日はまたここを通ると思いますけど、明後日以降は分からないので、声かけてください」
「ええ、よろしくお願いします」
どんな相談なのか、少し気になるところではありますが難しい話でもなさそうなので聞いてから決める方向で。
日が落ちるスピードも少し早くなってきているのか、夕日になるのが早くなってきている気もしますが、まあ問題は無く。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
精霊のいつもの出迎えに挨拶をして、木刀を置いて手を洗って。
夕飯をパパッと作るとしましょう。
豆腐ハンバーグのタネは昼間の残り。入っているのは鳥のひき肉、豆腐、卵、そして味付け。このままの味でも悪くないのですが、夕飯用にちょっとアレンジ。
醤油を少し多めに回し掛けて、ショウガのすりおろしも少し多いぐらいに足して全体をしっかり混ぜ合わせます。
鍋でお湯を二つ沸かして、一つは普通にそうめんを茹でる用。
別にうどんや別の麺類でもいいのですが、アッサリが合いやすいのと少し温まるので、食べやすい細さもいいという事で、今日はそう麺。
麺を茹でている隣の鍋は同じくただのお湯なのですが、そこにさっきの醤油と生姜を足した豆腐ハンバーグをスプーン二つ使って丸く形作ってポンポン落としていきます。
勿論残っている分全部でオッケー。
全部入れ終えたら、入れたゆで汁の味の確認。
少し薄いようであれば、出汁やガラスープを足すか麺つゆを薄めに入れるのも一つ。ただ、あまり味を濃くしすぎないのが今日のそうめんとしてはコツ。
少し薄いスープが出来たら、後は茹でたてのそうめんをお皿に盛って、出来たスープをかけるだけ。
「精霊、出来たよー」
「おお、麺ものですね」
「うん、伸びないうちに食べよう」
「ええ」
「「いただきます」」
そうめんのつるっとしたのど越し、少し薄いスープに感じますが鶏団子のような形をしている豆腐ハンバーグは口に入れるとほろほろと簡単に崩れるような結構な柔らかさとちょっと濃い生姜のツーンとした味。それが丁度いいバランスで食べやすく、箸が進みます。
「これ、美味しいですね。お昼のハンバーグも良かったですけど」
「薄目の味だから、少し飽きて来たらポン酢を入れてアッサリにしてみるのもいいし、七味などでピリッとさせてもイイよ。もし濃く行きたいならゴマダレを足してみるのも悪くないかな」
「なるほど。味の変化を自分でするタイプのそうめんなのですね」
「あー、そうめんというかにゅう麺かな?」
「名前まで変わるのですか」
冷たいとそうめん、温かいとにゅうめんだったかな?
たしか、そうめんとひやむぎは細さだったかな?手延べがそうめんで機械だとひやむぎだったような気もするけど、詳しく知るよりも美味しく食べられればいいやと言う気持ちの方が強いので、あまりよく知っていて知らないモノ。
「まあ、このにゅうめんが美味しい事に変わりはないので問題ないですね」
「それはよかった」
「という事で、おかわりを」
「はいはい」
そうめんを四束ほど茹でていたのですが、自分のおかわりを思うともう少し欲しい所。精霊の分を作ったら、茹でなおす必要を考えながら夕飯を続けるのでした。
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