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かつ丼

 作り置きを作るとはいえ、出来るだけ温かい方がいいに決まっているので、時刻としては十一時を回ったぐらいからカツを人数分揚げていきます。


「雅、おろしもやっぱり合いますねぇ」

「何となく言いたい事は分かるけど、こっちのカツはお昼用だからあげないからね」

「むぅ、もう少しぐらいくれてもいいと思いますけど?昨日アレだけ活躍したのですから」

「それとこれは別。じゃあ、お昼の分は無しでいいなら出すけど?」

「それは困りますね。我慢しますよ」


 そんな会話が厨房でありながら、ご飯も炊ける音がして、カツのストックも出来あがって後は少しいつもの時間までゆっくり待とうと思ったところ、


「ちょっと早めだけど、いいかい?」


 がーさんの声が来店を告げます。


「こんにちは、いらっしゃい」


 いつもの様に挨拶をしながら、お水とおしぼりを用意して皆さんに持っていったのですが、いつもより皆さんが少し緊張している感じ。


「どうかしましたか?」


 あまり緊張していてはゆっくりご飯も食べられないので、確認するように聞いてみると、


「いや、無事戻って来たようでよかったという安心感と、どうだったのかという期待が入り混じったような感じでね」

「そうそう。楽しめたの?」

「その様子だと、大きなケガもなさそうだね?」

「がーさんだけ知っているのもずるいわよねぇ」


 と、皆さんが一気に口を開きます。


「えーと、結構しっかりと楽しめました。少し大きめの魔石も手に入れましたし、宝箱も出ましたし。あ、まだ宝箱はあけていないんですけどね」


 なので、簡単な説明とばかりに戦果の報告だけをしたのですが、


「少し大きめの魔石?」

「宝箱?」

「……どういう事だ?」

「……?(そんなことはどうでもいいとばかりに頭をこてんと横に、ご飯が何か考えている)」


 思っていたのと違う反応が返ってきます。

 ですが、まあ無事帰って来たというのもこの通り示せているので、先に昼食の方がいいでしょう。


「先に作りますので、食べてからの方がいいですよね?」

「うん。そうしてほしいな。あ、僕から喋るつもりはないからね?」

「わかりました。あ、今日のランチは二人前ずつしか出来ないので、順番決めておいてください」

「わかったよ」


 がーさんがそう言って、皆さんも多少の文句を言い始めますが僕はフリーになるので、厨房へ。

 今日のランチを完成させていきましょう。


 カツがあって、作るものと言われれば大体予想が付くと思いますが、多分その予想の通りで間違いありません。

 カツを揚げる前に準備しておいた、返しは酒、醤油、みりん、砂糖、出汁を混ぜて作ったもの。家などでは麺つゆなどで代用していましたが、お店なのでちょっと今日も頑張ってみた感じ。お酒とみりんはしっかりと酒精を飛ばして、醤油と砂糖を溶かして出汁で伸ばしたこの返しが今日の味の決め手。

 タマネギのスライスの準備も整っているので、一気に作っていきます。

 丼ぶり用の片手鍋(親子鍋)にスライスしたタマネギをある程度入れて返しを入れて火にかけます。二分少々経ってタマネギにグツグツと火が入ってきたら、先にご飯をよそいます。

 ご飯をよそい終わったら、卵の確認をしてからカットしたカツを入れて卵を三分の二入れて蓋をして大体30秒。

 蓋を開けて残りの三分の一の卵を入れたら火から下して蓋をしておよそ15秒。

 かなりトロトロのカツ煮ができあがるのでそれを丼に乗せて出来上がり。

 蓋をしてお客さんに持っていくその間でも少し火が入るので、トロトロが多少緩くても大丈夫。


「お待たせしました、かつ丼です」


 かつ丼を作る前に、白菜と豚バラのミルフィーユスープをよそって、おろしはわざと上に乗せずに別皿へ。乗せなければ、ちょっと醤油をかけるだけでもつまみにもなるのでかつ丼の箸休めにもぴったり。

 まず二人前を出して、同じ流れで次の二人前。もう一回と二人前を作って、最後はチラッと横を見ると、精霊が頷くような動き。


「食べるよね?」

「勿論です」


 なので、この後も二人前。

 精霊も含めて全員にかつ丼を出し終えて、一段落。

 いつもであればこのままゆっくりできる時間となるのですが、この後少し話をする流れになりそうなので、この間作ったレモンシロップを一度しっかり混ぜて大丈夫か確認を。

 といっても、冷蔵庫の中に入れているので腐ったり、カビができたりという事は勿論なく、問題はありません。

 食事中なので、少し迷いましたが一度客席の方へ行って、確認を。


「この後の話すとき用でレモンシロップを割る予定なのですが、どうしましょう?」


 食事が温かいものだったので、皆さんレモネードでという事で、トニックウォーターで割る形で提供することに。

 作り方はいたってシンプル。

 グラスに氷を入れて、シロップを二杯とレモンを一枚そこにトニックウォーターを入れて軽く混ぜるだけ。

 全員分を作って、客席の方へ行こうとしたのですが、


「雅、私の分は?」

「……いるの?」

「勿論ですとも。私が喋った方が臨場感もありそうですからなんでしたら喋りますよ?」


 とりあえずお断りを精霊にして、自分の分をそのまま渡すと精霊は静かに。

 一人前を作ることがそれほど大変でもないので、サクッと作って客席の方へ行くと皆さん結構がっついて食べていたようで、殆ど食べ終えている様子。

 レモネードを全員に配って、自分も空いている席へ座って一口飲んで休憩を。

 少し皆さんも食休みをしているようで、大きな息をつきながらレモネードを一口。

 口に合ったようで、小さく頷きながら結構いい勢いで飲んでいる人も。


「それで、結構大きな魔石の話と、宝箱が出たって言っていたが、本当か?」


 ちょっと強めに、キツく聞こえるような声色で火の精霊付きの人が聞いてきます。


「ええ。あー、折角なので持ってきますよ」


 そう、見せる方が早いので自分の部屋から持ってくることに。

 ついでに結構いい勢いで飲んでいるのも見えたので、シロップのビンとスプーン、トニックウォーターだと甘すぎるという人も居そうな空気だったので、普通の炭酸水も先に準備。

 部屋からそのまま腕輪の上に乗せたままの魔石と宝箱を持って、皆さんが食べているテーブルの脇に置くと、そのまま厨房に用意しておいた飲み物セットも持って客席へ。


「……本当だな。何かの間違いじゃなかったか」


 追加のドリンクを作るかどうかを聞く前に、そう言葉が返ってきます。


「コレは低層では出ないはずですが?」

「だよ。あと、この腕輪はアタリだね?」


 皆さん食後でゆっくりとジュースを飲みながら楽しそうに会話をしているので、飲み物が無くなった人に追加で作って回っていると、


「皆に何をしたか教えてあげるといいよ」


 がーさんが飲み物を追加するついでのように言いました。


「えーと、スライムに魔石をあげたら、赤いスライムになりまして。それを魔法で倒したら、その魔石と宝箱が出たんです」

「え?」

「赤い、スライム?」

「は?」

「……(ジュースを美味しそうにニコニコ笑顔で飲むだけ)」

「そんな事を?」

「あげた?」


 反応は様々でしたが、やっぱり危ない事だったのは何となく分かっています。

 みるみる皆さんの顔の色が変わるのは、ちょっとスライムの時に似ているような気はしますが、それを今言うと危なさそうなので黙っておくことに。


「スライムが魔石を食べると綺麗なのは知っています?」

「魔石を食べるというか、吸収するぐらいは」


 なら話は早いと、矢継ぎ早に説明することに。


「精霊が、ダンジョンの掃除をするって聞きまして」

「聞きまして?」

「丁度倒したばかりの魔石を食べているのが見えまして」

「見えまして?」

「それがとっても綺麗だったので」

「だったので?」

「持っていた凄く小さい魔石を何個かあげてみたら」

「あげてみたら?」

「凄く綺麗だったのですが」

「ですが?」

「赤いスライムになりまして、ちょっとヤバそうだったので倒しました」


 皆さんそれを聞いて、大きく肩で息をするような感じ。というか、肩を落として深い溜息をついたように見えます。


「えーと、やっぱりまずかったですかね?」

「まぁ、どうだろう。無事なようだから咎めるほどの事は無いかと僕は思うけど?」


 がーさんは一口レモネードを飲んで言いましたが、


「赤いスライムって、レッドスライムよね?四十階位まで下がって出て来るモンスターよ?それが低層で出ただけでも危ないのに、綺麗だったとか倒したとか……」


 四十階?って、一ケタでやっぱり出てきてもいいモンスターじゃなかった様子。

 魔法もしっかり効いたのでまた倒したいなーと思っていたぐらいですが、危ないようですね。


「そりゃぁ、宝箱も出るわけだな」

「そうね。ある程度の強さのモンスターからじゃないと出ないとは思ったけど、レッドスライムならまぁ」

「レッドスライムで良かったよ、というか精霊も一緒に居たんだよね?」


 宝箱も弱いモンスターからは出ない様子。

 落ちているアイテムでも結構小銭稼ぎは出来そうなので、個人的にはソロダンジョンをもっと楽しめそうかなと思っていましたが、ちょっと今日の旗色は悪そう。


「あのぉ、宝箱ってすぐに開けないといけないとかあります?」


 話題を変える様に聞いてみると、


「いや、宝箱は開けるまでは魔法でロックがかかっているから中身が悪くなる事も無いだろうから問題ないよ。まあ、出る物はランダムだからそこばかりは運試しだけどね」

「じゃあ、今度開けてみます」


 急がないでいい事が分かったので一安心。

 と、個人的には思ったのですが視線は結構痛い感じ。


「あのぉ、今後もダンジョンは入っていいですよね?」

「ダメと言うつもりはないけど、あまり変な事はしないように。綺麗だからといって魔石を与えるなんて、危ない事はしないように」

「はい、注意します」

「無茶はしないでね」

「美味しいご飯が無くなると困る」


 一人、精霊みたいな事を言う人が居ましたが、まあ心配されていると思う事に。

 もう少し叱られるかと思いましたが、意外と優しい感じに食後の会話は終わりました。





今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、雅は強いんだねぇ! 精霊の存在が意味深だね。
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