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第69話 魔界編4


「息子?」


「あぁ、息子だ。・・・そいつだ、間違いねぇ」


「お、俺?」


王が指さしたのは他の誰でもない、刹那だった。


いきなりお前は俺の息子だ、と言われても、刹那には両親がいる。実は血が繋がっていないなどということなんて聞かされたことなんてないし、へその尾だってちゃんと見せられた。近所の人に、父親に似てきた、ということも言われたし、性格がお母さんそっくり、と言われたこともある。


つまり、だ。刹那は両親と血が繋がっている、ということだ。それなのに、この王は自分の息子だと言う。・・・・・さっぱりだ。


「まぁ、いきなり言われても困るわな。マリアが来たら説明する」


「マリアって、やっぱり・・・・?」


「あぁ。俺の妻。んで、お前の母さん」


・・・・・だめだ。説明がないとさっぱり理解できない。どういうことだ? 意味がわからない。


「お連れいたしました!!」


頭を抱えている刹那をよそに、先ほど女王を迎えに向かった兵士が戻ってきた。後ろには、やはり髪と目が普通の魔族よりも黒い、上品そうな女性がいる。王族は一般の魔族よりも髪と目の色が濃いから、その女性が女王だということは一発でわかった。


だが、不機嫌なのか、顔が物凄く歪んでいる。眉の間にしわが寄っていて、美しい顔も台無しになっていた。


「・・・・・何でしょうか? 今すっごく機嫌が悪いんです。用件ならさっさと済ませてください」


「そう言うな。こいつを見てみろ。お前なら、わかるはずだ」


「? 同じ魔族の・・・おと、この・・・・!?」


「・・・わかったか? 俺たちの息子だ」


女王は頷くと、たたた、と刹那のもとに走り寄って・・・・・刹那を抱きしめた。


「え?! は?! え?!」


「ぅ・・・・・ふぇぇぇええん・・・・・・」


と思ったら、いきなり泣き出してしまった。子供のように泣き声をだして、思い切り。

刹那はもうわけがわからなかった。魔界を統べる王にいきなり息子だ、と言われ、加えて女王には抱きしめられてこうやって泣かれている。・・・もうわけがわからなすぎて頭がおかしくなりそうだった。


「・・・あんた、そろそろ刹那に説明してやってくれないか。混乱してるし、俺たちとしても事情が知りたい」


「おぉそうだな。嬉しくて嬉しくてすっかり忘れてたぜ。あ〜、刹那? でいいのか? ちょっとマリアはそのままにしてやってくれ。動揺しててな、落ち着くまで頼む」


「それはいいけど・・・・・」


刹那だって年頃の男、女性に抱きつかれるのはちょっと抵抗があった。本当だったら離れて欲しかったが、こう泣かれてしまっては言い出すことなんてできなかった。・・・仕方ないが、このまま聞くしかない。


「んじゃ、説明た〜いむといくか。まず最初に聞いておくか。人は死んだらどこへ行くと思う?」


「? えっと、・・・・・」


「冥界だ。そこで死の神による魂の裁判を受けて、生前犯した罪を償う。そしてその後転生、だろ」


刹那がまごまごしている間に、レオがすんなりと答えてしまった。・・・そういえば前にオリアスから話を聞いたことがある。


「その通りだ。人は死んで魂になり、冥界へと飛んでいく。そしてまた転生。その永遠の繰り返し、ってわけだ。同じ魂が繰り返し繰り返し死んで転生してるから、異世界中の魂の数は増えもしないし減りもしない。あらかじめ数が決められてるんだ。だがな、それには例外があるんだ」


「例外?」


「あぁ。この世界はな、魂が冥界に飛んでいかないんだ。どういうことかさっぱりわかんねぇんだけどな」


「どういうことだ?」


「つまりな、この世界で死んだ者はこの世界に転生してるってわけだ。冥界に飛んで他の世界に転生しないで、この世界に留まり続ける。そうやってこの世界で魂のサイクルをやってるってわけだ」


「・・・・・それはわかったけどぉ、それと刹那君がどう関係あるんですかぁ?」


「刹那はな、本当は俺たちの子供として生まれてくる予定の魂だったんだ。魂は母親の中に赤ん坊が出来たと同時に肉体に入るからな。マリアが妊娠したって言ったときは嬉しくて大臣たちと朝まで飲んだもんだ」


・・・そこでようやく合点がいった。生まれてくる予定だった魂だから、息子と言われるのも筋が通る。だが、1つだけ気になる点がある。


「何で、俺はこの世界に生まれてこなかったんだ?」


「戦争がな、始まったんだ。天界とな。なんかよく知らねぇが、仲良くやってたのにいきなり攻め込んできてな。・・・・・それで、だ。普通に殺してくるんだったらまだマシだったんだが、ちょっと洒落にならない攻撃をやってきたんだ」


「? それは?」


「魂そのものを壊す、って武器だ。うちの兵士の何人かはそれにやられてる。魂が壊れたら、魔界には転生できない。壊れた魂は粒子になって冥界に運ばれて、結果的に魔界の人口が1人減っちまうことになる。そうやって、天界の連中は魔族を根絶やしにするつもりらしい。ふざけてるだろ? そのときは天界との接触を断っていなかったからここまで攻め込まれる可能性があってな。俺たちは泣く泣く魂を異世界へと逃がしたってわけだ。・・・もちろん、マリアの腹の中の子供は死んだがな」


「・・・・・1つ、いいか?」


「どうした銀髪の。わからねぇとこでもあったか?」


「刹那の魂は・・・・・ちょっと特別なものでな。色んな世界に転生している。だから、この世界だけに何度も転生しているはずがないんだが」


「さっき言ったろ。『この世界で』死んだものは『この世界に』転生される。お前たちみたいに、異世界から来るやつもいれば、この世界から出て行くやつも行く。・・・まぁ滅多にないがな。ごく稀にそんなやつもいるんだ」


と、いうことは、刹那以前に神の魂を保持していた者はどういう経緯かゲートをくぐり、そしてこの世界で死んだ。生まれ変わった神の魂は魔界で何度も何度も転生し、そして異世界へと再び旅立った、ということになる。


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