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悪役令嬢が天使過ぎて攻略対象が目に入らない!  作者: 宵宮祀花
一章◆チュートリアルなんてなかった。

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柴犬かなにかと思われている可能性

「ニーナ、やはりまだ具合が悪いのではなくて……?」

「う……ううん、大丈夫。ちょっと、あの、ええと……そう。いきなり走ったから、軽く目眩がしただけで、ほんとに大丈夫だから」


 寮への道すがら、泣きそうなくらい心配された私は、必死になって言い訳をしていた。だって、エリシアちゃんが可愛すぎて膝から崩れそうになったなんて言えないし。

 倒れないようになのか、繋いだ手を離してもらえないまま寮に着いた。その瞬間、寮にいた人の視線が一斉に集まって、そして絵に描いた効果音のように周りがざわっとした。


「ほら、あの平民が……」

「エリシア様のお顔になんてことを……!」

「どういうつもりでエリシア様のお手に触れているのかしら」


 辺りからヒソヒソというのはあまりにも聞こえよがしな声が飛んできて、うんざりしてくる。エリシアちゃんが顔に土を付けたときは私も驚いたけど、私が泥を投げたみたいに言われるとすました顔面に泥団子を喰らわせたくなる。面倒だからやらないけど。

 廊下を進むのに合わせて、周りの視線や囁き声も絡みつくようにして付き纏う。でも、私が言い返したところで負け犬の遠吠えにしかならないってわかってるから、せめて早く人目のないところに行きたくて、周りを無視して歩き続けた。


「……? エリシアちゃん、どうかした?」


 ……でも、寮に入ってから突然黙ったエリシアちゃんが気になって、ちょっとだけ足を止めつつ声をかけると、エリシアちゃんはにっこり微笑んでこう言った。


「そうだわ。このあとわたくしのお部屋にいらして。ニーナにお礼がしたいの」

「はぇ?? えっ……なにかあったっけ?」

「ええ」


 私の両手をエリシアちゃんの両手が包んで、輝く笑顔を向けられて、いりませんなんて言える度胸は私には備わってない。

 なにが何だかわからないまま頷くと、エリシアちゃんはうれしそうに破顔した。


「では、参りましょう。とっておきのお茶菓子をお出ししますわ。ニーナにも気に入って頂けるとうれしいのですけれど」


 弾んだ声で言いながら私の手を握って、エリシアちゃんは歩き出した。エレベーターに乗り込んだところで、私はやっと気付いた。エリシアちゃんが部屋に来てと言った瞬間、周りでヒソヒソ言ってた声が嘘みたいに止んでたことに。

 エリシアちゃんは、私を守ってくれた。突き刺さる悪意の視線と声から。馬術場でも、寮でも、私は助けられてばっかりだ。


「……エリシアちゃん」

「なにかしら?」

「ありがとう」

「ふふ。お友達、ですもの」


 エレベーターが最上階に着いた。そこは貴族の中でも特に身分が高い生徒しか入れない特別な階層。当たり前だけど、平民である私が易々と入れるようなところじゃない。でもエリシアちゃんに手を繋がれたままな私は、やわらかな力が向くまま奥に進むしかない。


「どうぞ、入っていらして」

「う、うん……お邪魔します」


 見たところ、扉自体は他の部屋と変わりない。でも扉と扉の感覚が尋常じゃなく広い。廊下も広い。その理由は、中に入ってすぐ、一目でわかった。


「ひっっろい……!」


 一言で言うなら、お城にあるお姫様のお部屋。下の階層にある部屋も相当だったけど、比べものにならない。私が元々住んでた実家が犬小屋に見えてきちゃうくらい凄い。

 絶句状態の私を、エリシアちゃんは不思議そうな顔で見ている。


「他のお部屋は違いますの?」

「そっ、それはそうだよ。この広さを人数分って相当広い敷地が必要だし」


 横の敷地もそうだし、縦にも階層が必要になると思う。石油王のホテルみたいな。


「そうですわね……わたくしは自分のお部屋しか知らなかったものですから……」

「私も、エリシアちゃんのお部屋がこんなに凄いって知らなかったから、同じだね」


 エリシアちゃんの手を握り返しながら笑いかけると、エリシアちゃんも笑ってくれた。うん、美少女はどんな表情でも美少女だけど、やっぱり笑ってる顔が一番可愛い。


「エリシアちゃん、そろそろ顔の土、落としたほうがいいよ。せっかく綺麗なのに、お肌荒れちゃうよ」

「……そうですわね。少し名残惜しいですけれど、ニーナのお陰で楽しみはまだありますものね」


 そう言って、エリシアちゃんは私の手を握ったまま別室へと向かう。どうやら基本的な作りは私の寮室と同じみたいで、入ってすぐに寝室、右手奥に洗面所とお風呂って感じ。ただ、広さが別格なんだけど。


「えっ……! うわあ……私もの凄く汚れてない?」


 洗面所の鏡の前に立って自分の顔を見ると、想像以上に土にまみれていて思わず二度見してしまった。これじゃ、嫌味なお嬢様じゃなくても「これだから平民は」ってなるよ。


「一度自分の部屋でお風呂入ってから来たほうが良かったんじゃ……」


 今更だけどエリシアちゃんのお部屋を泥まみれにしてしまう気がしてそう言うと、鏡に映るエリシアちゃんがにっこり笑ってとんでもないことを言った。


「でしたら、いまからご一緒しましょう」

「はぇ……??」


 待って。いま、なんて言ったの?

 ご一緒? ご一緒って、エリシアちゃんと、一緒に、お風呂?

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