表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が天使過ぎて攻略対象が目に入らない!  作者: 宵宮祀花
三章◆予測可能回避不可能

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/48

刻まれていく証

 暫くぼうっとしてから、ハッとして王子を、そしてエリシアちゃんを見た。


「……あのあと、エリシアに諭された。民あっての貴族であり、貴族あっての民である。貴族は民を導き、民は貴族を支える。そうして国を作っているのだと。身分の違いは魂の優劣などでは決してないと、そう言われたのだ」


 俺様王子様相手にそこまで言えるなんて……って、エリシアちゃんを見つめていたら、エリシアちゃんはふわりと微笑んで枕元まで歩み寄ってきた。


「ニーナのお陰ですわ」

「私……?」

「ええ。言わなければ伝わらないと教えてくださったお陰で、わたくしは言葉にする前に諦めてしまうことをやめることが出来ましたの」


 エリシアちゃんのやわらかな手が、私の頬に触れる。いつもは温かい指先が冷えていて痛々しい。


「俯いて言いなりだった頃とは別人になったが、以前はつまらない人形同然だった。そうさせていたのは俺だが、そのことに思い至りもしなかった」


 そう言うと、王子は目を細めて過去最高に柔和な表情を見せた。

 普段からそうしていれば、威圧感も軽減されるだろうに。


「例の子爵の喚く声は、本校舎まで響いていた。エリシアに、俺がしていることもあれと同じだと言われたとき、完全に目が覚めた」

「……そう、ですね。みっともなく喚くか、上から宣うかの違いでしかないかと」

「貴様も言うではないか」


 結構無礼なことを言ったのに、王子はフッと笑うだけで私を咎めたりしなかった。


「……だが、その通りだ。勅命は、相応の重さで以て齎されなければならん。軽々に民を振り回すものであってはならんと、改めて認識した」


 そう語る王子の顔はいつになく真剣で、ベッドに寝そべったままで聞いていいものかと過ぎる。でも起きようにも体に力が入らないし、少し動くだけで頭が痛むから、誰も私を咎めないのをいいことに、ベッドの上でその話を聞いた。


「貴様は、此度も身を挺してエリシアを庇ったそうだな」

「えっと……はい」


 一瞬しらばっくれようかと思ったけど、エリシアちゃんには思い切り見られていたし、誤魔化しようもないので頷いた。


「その……下敷きにしちゃうと思ったら、体が勝手に……」

「それは、相手が公爵令嬢だからか」

「いえ」


 試すような、私の答えをわかって聞いてるような王子の問いに、今度は一秒も迷わずに言い切った。


「あのとき下にいたのがムカつくどっかの令嬢でも、地元のパン屋の娘さんでも、近所の牧場主のおじさんでも、私は同じことをしました」

「だろうな」


 王子は「わかっていた」とでも言いたげな顔で笑うと、私の前髪を指先で優しく退けて頬を撫でた。歓迎会のときは、まるで好きに扱っていい物でも扱うみたいな乱暴な手つきだったのに。鳥の雛にも触れられそうなふわりとした指がくすぐったい。

 以前は凄く心配だったけど、これならきっと、エリシアちゃんと結婚してもいい夫婦になれそう。どっちかが言いなりの関係なんて、たとえ権力者だとしても不健全だし。


「……っ」


 なんて暢気なことを思っていたら、手の甲がいきなり熱くなった。

 何だろうって思いながら布団から手を出してみる。するとそこには、胸にあるのと似ているようで違う形の紋様が浮かび上がっていた。正確には、手の甲から指先にかけて。


「ニーナ、その紋様は……」


 エリシアちゃんが目を瞠って私を見つめている。私を……というか、私の手の辺りを。そして王子も、彼自身の指先を通して同じところを見つめている。


「赤い、聖女の印……思った通りでしたわね」

「えっ」


 エリシアちゃんが私の髪を撫でる。慈しむような手つきで、何度も、何度も。


「やはりニーナは、あの聖女様と同じ……いえ、それ以上に多くの人を惹きつける魅力の持ち主なのですわ」

「……エリシア。説明しろ」


 私は前にエリシアちゃんから「もしかしたら」って聞いていたから、なにが起きたのか察しているけれど、王子はついてこられていないみたいで、珍しく困惑している。

 エリシアちゃんは、私が嘗て複数の騎士と契約をして、国を大きく発展させた聖女様と同じかそれ以上の魔力の持ち主で、彼女と同様複数の騎士と契約出来る魂も持っていると説明した。王子は最初こそ信じられないって様子で聞いていたけど、目の前で聖女の印が浮かび上がって、しかもそれがあからさまに王子の契約印ですって形をしている――って私はあとから知ったんだけど――ことから、納得したようだった。


「元々の印もあったはずだろう。それはどうなっている」

「それは……」


 エリシアちゃんは一瞬迷ってから、覚悟したように掠れた息と共に吐き出した。


「……わたくしの色に染まっていますわ」

「そうか」


 あまりにもあっさりと答えた王子に、私もだけどエリシアちゃんも驚いている。


「驚かれないのですね」

「何となくそうだろうと思っていた」


 そう答える王子の顔は、凄く優しい。

 いままでは立場を最優先に考えすぎていただけで、根は愛情深い人なんだって表情から滲み出ている。

 でも、王子ってここまで軟化した態度を見せたことってあったかな……?

 自分の記憶にある王子の態度とあまりにも違いすぎて、私は王子ルートのストーリーを思い返してみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ