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悪役令嬢が天使過ぎて攻略対象が目に入らない!  作者: 宵宮祀花
二章◆没落ルートだけは回避したい

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殿下のお気に召すまま?

 事態が飲み込めなくても、時間は待ってはくれない。私たちは一先ず謎の解明はあとにして、手を繋いで本校舎に向かった。

 ダンスパーティの翌日なこともあって、校舎内外でどの先輩が素敵だっただとか、あの家は落ち目だからやめておいたほうがいいだとかいった話題で持ちきりだ。貴族の世界も楽じゃなさそうで、卒業までにめぼしい相手を見つけないと危ないのは、他の子息令嬢も同じなのだと感じた。


 昇降口で靴の土を軽く落としてから中に入ると、周りが急にざわついた。ひそひそ陰口叩かれるのは慣れたから何ともないんだけど、いつものそれと雰囲気が違う。


「……あ」


 何事かと思えば、王子が取り巻きを引き連れて登校してきていた。さながら大名行列の風情で、人の波が左右に割れていく。私もわざわざド正面に向かっていく理由もないのでその場で眺めていると、王子のほうが進路変更してこっちにきた。


「ご機嫌よう、殿下」


 エリシアちゃんがスカートをちょこんと摘まんでお辞儀をしながら王子に挨拶をする。それを見てから、ぎこちなく真似をして王子を見上げ、「ご機嫌よう?」と言ってみた。


「ぶはっ! ちょっ……!」


 すると、王子の横でロザリオ先輩がいきなり噴き出した。

 王子の肩をバシバシ叩きながら暫く笑い続け、やっと落ち着いた頃には目尻にうっすら涙が滲んでいた。不細工な挨拶だった自覚はあるけど、なにもそこまで笑わなくても。


「はー、笑った。エリシアお嬢様の雛みたいだね、ひよこちゃん」

「!?」


 ひよこちゃん呼び早くない!?


 ロザリオ先輩は調子のいい性格で、他の令嬢たちもまとめて子猫ちゃんと呼んでいる。ヒロインだけは好感度が高くなると特別なあだ名、ひよこちゃん呼びになるんだけど……私はいま会ったので二回目で、一回目は会話すらしてないんだから、そんなあだ名呼びをされるほどの好感度を稼いだ記憶はない。

 なにがどうしてそんなに気に入ったのかと思っていると、腰にずきりとした甘い疼きが走った。


 この感覚を、私は知っている。

 だって、さっきもエリシアちゃんの部屋で感じたから。


「……どうした、ニーナ」

「はぇ!? えっ、い、いえ、何でもないです! いきなり爆笑されて驚いただけで」


 王子が軽く屈んで、端正な顔がキス寸前くらいの距離に来ていたことに驚き、じりっと身を引きながら答えた。それに少しムッとされたけど、私の顔があからさまに赤いからかポジティブに脳内変換してくれたらしく、すぐに表情がいつもの不遜な笑みに戻った。


「あはは、ごめんね。ひよこちゃんがあまりに可愛かったからさ」

「ふん、まあいい。今日は魔術の実習があっただろう。中庭は校舎からよく見える。精々この俺の目に触れるに相応しい成果を見せることだ」

「えと……はい、がんばります…………??」


 わけもわからず、頭の中が疑問符塗れになりながら王子の激励に応えると、王子は隣のエリシアちゃんの手の甲にサラッと口づけをして、颯爽と立ち去って行った。ついでに、ロザリオ先輩も「がんばってね」とウィンクをして王子の追って行って、私はただ呆然と二人を見送るしかなかった。


「はぁ……濃い一日だった……」

「ニーナ、まだ終わっていませんわ」

「うぅ……」


 席についた瞬間自然と溜息が漏れ、まだ朝なのに謎の疲れが体を染めていくのを感じて机にとけた。


「それにしても、なんで王子は一年の授業内容把握してたんだろ……」

「それだけニーナに期待しているのだと思いますわ」

「私……?」


 机にとけたまま頭だけ横に向けてエリシアちゃんを見ると、エリシアちゃんは私の頭を撫でて微笑んだ。私の天使が今日も可愛い。


「殿下は、自らの益になる者にしか気をかけない方ですもの。そんな殿下が声をかけて、激励までしたのですから。きっと間違いありませんわ」

「わかりやすい……でも上に立つなら、そこまで素直過ぎるのもどうかと思うけど」

「ふふっ。ニーナのそういうところが、お気に召したのかも知れませんわね」


 なんで??……って思ったけど、ゲームでもわりとそんな感じの選択肢が好感度上がりやすかったような気がする。王子の単独ルートは一回しか行ってないからあんまり記憶にないけど、ゲームのパーティイベントでも「面白い」って言われた気がしなくもない。


 HRのあとは、王子が言ってた通り中庭で魔術実習だ。

 実習を含む魔術の授業は、イベントで暴発事件が起きて以来になる。あれはヒロインが暴発させちゃうはずだったのが、なぜかエリシアちゃんが暴発させていて、あのときから私は色々とゲームとの齟齬を感じている。

 王子たちの好感度の上がり方も、爆速でついていけないくらいだし。


「取り敢えず、授業がんばろう……」

「はい。参りましょう、ニーナ」


 エリシアちゃんの手を取って、しんなりしつつもドレッシングルームに向かう。実習の前に、専用のローブを羽織っていく必要があるからだ。

 私たちもそれぞれのロッカーの前に立ち、扉を開けた。そのときだった。


「あら……困りましたわ」


 エリシアちゃんが、扉を開けた格好で中を見つめたまま、そう声を上げた。周りからの視線を浴びながら隣に立ち、同じく中を覗く。


「うわあ……ひっどい。いくら私が気に入らないからって、エリシアちゃんにまでこんなことするなんて……」

「えっ……!?」


 私がエリシアちゃんのロッカーからローブを取り出して掲げてみせると、思った通りの反応を見せた人がいた。


「あなた、まさか……」

「ち、違うわ! そんなはずは……だって私が切ったのは……っ!」


 周りの令嬢が信じられないと言いたげに呟くと、犯人自ら白状した。

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