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魔法剣士ガイア  作者: ふぉるて
第3章「胡蝶の決意」
51/156

3─VIII

 ガイア達が無事に依頼を終えてから数日が経過し、12月28日。

 この日もガイアは図書館へと(おもむ)き、『冒険者/傭兵座学 職業編』と題された本を読み進めていた──。




◇ ◇ ◇




『まず初めに"職業"とは、故・ヴィオール氏が編み出した"転職の奇跡"によって体内の魔脈(まみゃく)に細工を施し、その人間の伸びやすい能力に"傾向"を持たせた状態の事である。

そして、それらの最も基礎となる"基本職"には、近接武器のスキルに長けた戦士系の四種類と、各種分類別の魔脈の成長率に長けた術式使い系の四種類が存在している。

そして、それらの基本職の能力を融合・昇華させ、更なる力を得られる状態になったのが"上位職"である。

また、職業に応じてその人間自身の基礎身体能力も強化される。

そして勿論のことだが、上位職の伸び幅は、当然基本職の比では無い』




『しかし、この転職の奇跡も、決して良い事ずくめという訳ではない。

後の大魔法時代に発見された"相反属性"の概念と同じように、職業にもまた、相反の概念が存在している。

先程、転職の奇跡では"魔脈"というものに細工を施すと説明したが、それこそがこの相反の概念に深く関わっているのだ。

それでは、職業の相反概念について解説する前に、魔脈について説明しておこう』




『まず、世の中には四種類の魔法が存在している。

それは、攻撃魔法、治癒魔法、支援魔法、他分類魔法である。

また、人間にも全身を巡る四種類の魔力の管が存在しており、それらが"魔脈"と呼ばれている物である。

人間は魔法を発動する際、その発動する魔法の種類に応じて、魔力の源泉から魔力を流す魔脈が異なっている。

そして、四本の魔脈はそれぞれ攻撃、治癒、支援、他分類の種類に応じて使い分けられている』




『転職の儀式を行う際に、転職先の職業に応じて魔脈が弄られる。

しかし、それが戦士系なのか術式使い系なのかで、弄り方が変わるのだ。

まず術式使い系の場合は、魔術士なら攻撃魔法の魔脈、治癒士なら治癒魔法の魔脈が成長しやすくなるように改良する。

その改良を加えた魔脈で魔法を使えば使うほど、魔法の発動に必要な詠唱が次第に省略できるようになって行くのだ。

一方、それが戦士系の場合、四つの内の三つの魔脈は流れが悪くなり、せいぜい初級魔法がやっと、という状態で固定されてしまう。

そして、残りの一つの魔脈──例えばそれが剣士だった場合、攻撃魔法の魔脈は、一切魔力を流せなくなるレベルで文字通り"潰れて"しまうのだ。

魔法はスキルや魔力体術と異なり、発動に魔脈を介する必要がある。

つまり、これこそが"職業の相反の概念"なのである。

剣士ならば、攻撃魔法の魔術士。

猟士ならば、治癒魔法の治癒士。

射手ならば、支援魔法の援術士。

騎士ならば、他分類魔法の調合士。

それらの相反する職業は、決して両立することなど出来ない、水と油のような存在なのだ』




◇ ◇ ◇




(……成る程、だから"実現のしようがない"のか)


 そこまで読み終えたところで、ガイアはアスナが出会った当初に言っていた「魔法剣士は実現のしようがない」という言葉の意味を理解した。

 そして、ガイアはそこから各職業の解説を読み始める。



 剣士──片手剣と両手剣を操り、敵の性質に応じてスキルを使い分けることで大きなダメージを稼げる前衛役。


 猟士──中衛ポジションからの短剣による追撃や弱点特攻、投擲による中距離戦闘を担う撹乱(かくらん)役。


 射手──弓矢による遠距離からの援護に長けた後衛役。


 騎士──衝撃で部位破壊やスタミナ奪取に長けた戦槌と、一点集中や範囲攻撃等、多種多様な攻撃を繰り出す槍を操る前衛役。



 魔術士──攻撃魔法による属性ダメージの稼ぎ役。得物に属性が宿っていなくとも的確な弱点属性を突くことが出来るため、乱入する魔物が現れても臨機応変に攻められるのが最大の特徴。

しかし、その分魔物の恨みを買いやすいので、立ち回りには細心の注意を払う必要がある。


 治癒士──治癒魔法を操る、パーティの要。回復すべき味方を瞬時に見極める判断能力と、味方の位置に常に気を配り、安全地帯を見つけ出す空間把握能力が最も必要になる職業。

また、医療系の仕事に携わる者は、この職業に就いて試験に合格しておく必要がある。


 援術士──敵や味方の能力を増減させたり、足止めや状態異常等による後方支援を行う。


 調合士──この職業はバリエーション豊かな他分類魔法の中でも、戦闘においては特定の素材を融合してアイテムを作り出す「調合」という魔法を主体に、現場でアイテムを調達しつつ戦闘を支援する。

薬屋等の仕事に携わる者は、この職業に就いて試験に合格しておく必要がある。



 要約すると、以上のような内容が、その本には書かれていた。

 スキルの解説や、魔法の魔術式等も書かれていたが、それらを頭に入れる必要が無いガイアは、必要な箇所だけを抜粋して読み進めたのだ。

 そうやって読み進めたこともあって、昨日の午後から改めて読み始めたその本は、昼に差し掛かる頃には既に読み終わってしまっていたのだ。

 そして、ガイアは読書の最中に、一つ気付いたことがあった。


(そろそろ切らないとな……)


 読書の最中、髪の毛がチラチラと視界の邪魔をする割合が増えていた事を思い出したガイアは自習室を後にし、元の棚に本を戻して理髪店へと向かうのだった。

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