表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法剣士ガイア  作者: ふぉるて
第3章「胡蝶の決意」
49/156

3─VI(☆)

 ダン達の上ミノタウラスの討伐成功からほんの僅かに時は(さかのぼ)り、湧水の森・エリアCの辺境──そこには、ゴブリン達の集落が存在していた。

 しかし、集落と言っても周囲が背丈の高い草木に囲まれているくらいで建物などは無く、その広さはテニスコート四つ分と言ったところだろうか。

 その空間の中では、自身の身の丈よりも大きな葉を何重にも重ねて寝床にしたものを三体が奪い合っていたり、食べ終えた食料の食べ残しが散乱して居たりして、その様はお世辞にも知性や文化があるものとは到底言い難かった。


 その空間には二十体ほどのゴブリンがおり、思い思いに本能の赴くままに生活していた。

 そして──そのゴブリンの中に、特徴的なピンク色の塗料が付着している個体が、数体。

 それは、これらのゴブリンの群れが、今回の依頼の討伐対象であるということを示していた。


 そんな、いつもと変わらぬ様相を成していた集落に、一つの影が集落の外周にある草むらから姿を現す。

 ガサリと大きな音を立て、瞬く間に最も近くに居たゴブリンへと肉薄した人の影は、その槍で一息にゴブリンの胸を貫いていた。


挿絵(By みてみん)


 そして、その出来事へとゴブリン達の注意が向いた隙を突き、集落の反対側から姿を現したもう一つの影が飛び出す。

 その影は迷うことなく剣を横に一閃、二体の首を一気に撥ね飛ばした。


「ギイィィ!!」


 ゴブリン達が口々に敵襲だと悟り、手に持った棍棒で二人の侵入者──アスナとガイアを捉え、集落は一気に戦場へと変貌する。

 そして、およそ半数ずつに分かれたゴブリン達は、それぞれ交戦を開始する。


「せっ! やっ!」


 アスナは掛け声と共に絶命したゴブリンから槍を抜き、左側からの棍棒を柄の底──石突(いしづき)で弾くと、即座に右側のゴブリンを貫く。

 そして、アスナは左斜め後方から向かってきたゴブリンに対して振り向きながら槍を大きく振りかぶり、地面に対して弧を描くように振り抜く。

 すると、穂先に貫かれていたゴブリンの死体が遠心力によって槍から抜け、その死体は見事な放物線を描きながら目標のゴブリン目掛けて飛んで行く。

 アスナの右斜め後方から迫っていたゴブリンはそれをまともに受けてしまい、その衝撃で吹っ飛ばされる。


「「「ギィッ!!」」」


 すると、先程槍の柄で攻撃を弾かれた個体を含む三体のゴブリンが、一斉にアスナへと飛び掛かる。

 アスナは即座に槍の石突と脚部の二箇所へと魔力を注ぎ、柄を地面へと突き立てて両手で得物をしっかりと握った。

 そして──


「"旋脚(センキ)"!!」


アスナはスキル名の宣言と同時に、地面に突き立てた柄を軸にして思いっ切り大地を蹴る。

 すると、アスナの身体は柄を軸にして独楽(コマ)のように回転し、魔力を宿して強化されたその脚の一撃が、三体のゴブリンを弾き飛ばす。

 そして、アスナが大地に着地するため、回転速度を落としたそのタイミングを見計らい、別の二体のゴブリンがアスナへと飛び掛かる。

 しかし、その隙を狙われることを想定していないアスナではない。

 アスナは回転の残りの勢いを使い、一瞬大地を蹴って空中へ軽く飛び上がる。

 そして、勢いを利用して回転しつつ、両手でその槍を振りかぶると、着地と同時に二体のゴブリンを薙ぎ払った。


 しかし、今度はアスナの左右に居た二体のゴブリンが、着地後の隙を逃すまいと一斉に飛び掛かる。

 だが、アスナも後方をちらと一瞥しながら、次の一手へと移る。


「"後方宙転(バックフリップ)"!!」


 アスナはタイミングを見計らい、槍を掴む両手と脚部へと魔力を集中させて即座にその場から飛び退くと、空中で一回転しながら着地地点へと視線を移す。

 そこには、先程の「旋脚」で弾き飛ばしたゴブリンの内の一体が、丁度着地地点で起き上がろうとしていた。

 アスナは、そのゴブリンの頭を落下の勢いを利用し、思いっきりその背中を踏みつけながら着地する。

 そして、即座に槍の石突で後頭部をどついて地面に額を叩きつけて気絶させ、穂先の根本に持ち手を移したアスナはそのまま首をかっ捌くと、先程躱した二体へと視線を移す。

 そこには、突然目の前で回避されたせいでブレーキが間に合わず、顔面から正面衝突してしまった二体の姿があった。

 そして、そんな膨大な隙を晒した討伐対象を、みすみす逃すような真似はしない。

 アスナはスキル"後方宙転"の「次に使用する攻撃スキルの威力を強化する」追加効果が切れない内にと、即座に持ち手を元の位置に移してその二体へと肉薄する。

 そして、アスナは一気に距離を詰めながら、身体をねじりながら跳び上がる。


「"薙払(カルラ)"!!」


 魔力を纏わせる事によって切れ味が増した槍の刃が横一線に薙ぎ払われ、二体のゴブリンの首が胴体から切り離される。


 今回の一人辺りのノルマは、十体。

 そしてこの時、アスナは既に七体を撃破しており、残り三体の内の一体は、投げつけられた死体をどけてようやく起き上がった所であった。


 そして、アスナはその個体とは異なる、自分に対して怯えている個体へと殺気を向けながら、大地を蹴って一気に肉薄した──。

─スキルデータ─


旋脚(センキ)

騎士で習得できる槍専用スキル。

槍の石突を地面に突き立て、それを軸にして独楽(コマ)のように回転し、周囲の敵に蹴りを浴びせる。



薙払(カルラ)

騎士で習得できる槍専用スキル。

威力を増した薙ぎ払い。



後方宙転(バックフリップ)

魔力体術による汎用スキル。

後方へと大きくバク宙する。

また、発動してから10秒の間に攻撃スキルを使用すると、そのスキルの威力が一度だけ強化される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ