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魔法剣士ガイア  作者: ふぉるて
第3章「胡蝶の決意」
46/156

3─III

Q:アスナのAPPは幾つですか?


A:16です。




─受注クエスト情報─


◎「ゴブリンの群れを倒せ」

依頼主:冒険者ギルドマスター・アドル

ランク:F+

優先度:優先

場所:アインハルト王国領/湧水の森・エリアC

達成条件:ゴブリンの群れの討伐

特記事項:格上遭遇の危険性有り。受注者のランクと人数次第では、傭兵ギルドより三名同行。


○依頼文

商業ギルドの方から、街道でゴブリンの群れに襲われたとの知らせが入った。

襲われた場所は、南の方向に伸びる街道を一日ほど歩いたところにある「湧水の森」のエリアC付近の道とのことだ。

冬がやってくる前のこの時期とあって、再び被害が出る確率が非常に高いため、これを討伐して欲しい。

湧水の森には討伐対象より格上の魔物も徘徊しているが、幸いにも傭兵ギルドの方から、(くだん)の商人の護衛を担当していた本人達が同行を申し出てくれている。

格上と遭遇した場合は彼らに任せて、受注者はゴブリンの群れの討伐に注力するようにしてくれ。



▼メンバー

アスナ(F/★)

ガイア(F)

ダン(C/傭兵)

ヒューズ(C/傭兵)

ロビン(C/傭兵)

 ガイアがアスナの申し出を承諾した日から一夜明け、12月24日。

 アインハルト王国から南へと続く街道を走る、一台の馬車があった。

 馬車を牽引する二頭の馬の手綱を握るのは、今回の依頼に同行する事になった傭兵三人組のリーダー格であり、豹のビーストであるダン。

 その馬車に乗って揺られているのは、ガイアとアスナ。それに加えて、ダンのチームメンバーである二人──マーマンの男性であるヒューズと、クーリアの女性であるロビンの計四名である。


 そして、そんな五人の間では、ガイアが後学の為にと色々尋ねている事もあって、和気藹々(わきあいあい)と会話が交わされていた。

 そんな中、ふと話題はアスナの師匠──"英雄"ジーノの話になる。


「アスナちゃん、英雄殿から教わった事、俺達に聞かせてくれないか?」


 ダンのその言葉に、アスナは驚いたような顔をする。


「え……、師匠から教わった事ですか?」


「ああ、それは確かに気になるな」


 と、ヒューズ。

 そして、紅一点のロビンもそれに頷き、驚くアスナにこう言った。


「弟子であるアスナちゃんに、英雄の二つ名を賜った男はどんな事を教えたのかって、気になってるのよ。勿論、私もね」


 手綱を握っているダンを除いた二人の傭兵の視線が、静かにアスナへと注がれる。

 アスナは今までこんな風に注目される機会が無かったからか、顔を赤くさせて俯く。

 そして、それから少しの間を置いて、アスナはこう言った。


「……"死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。

運が良ければ不意を突いて一気に仕留めろ。

生きることから逃げ出さず、最後まで諦めずに足掻き続けろ"……」


 その口から紡ぎ出されたのは、ガイアも聞いた、ジーノの最後の言葉であった。


「……師匠が、最後に教えてくれたんです」


「"絶対に生き延びろ"って事か……。成る程、それは俺達にも言える事だな」


 ヒューズは腕組みをして、うんうんと頷きながらそう言った。


「確かに、冒険者も傭兵も、根底にある心得は変わらないわね。絶対に生き延びろっていうその教えも、そうだと思うわよ」


 すると、ロビンのその言葉を聞いたダンは何か思うところがあったのか、ふとこんな事を言い出した。


「ガイ坊。冒険者と傭兵の"一番違うところ"は何だと思う?」


「えっ、違うところですか?」


 ガイアのその質問に、ダンはこう言葉を返す。


「ああ。今アスナちゃんが言った事は、冒険者にも傭兵にも通じるところがある。

だから、今度は違うところだ。アスナちゃんは学校で習ってるはずだから、黙っといてくれよ?

そんじゃガイ坊、"そうじゃないかな"って思う所を言ってみな。

わからないなら、直感で答えても良いぞ」


 それからガイアは、揺れる馬車の席でうーんと唸りながら考える。

 しかし、三十秒ほど経過しても答えが出ない様子を見かねたからか、ヒューズが笑いながらこう言った。


「……お前達冒険者が振るうのは、"勝つための力"。

そして、俺達傭兵が振るうのは、"負けないための力"って事さ」


「おい、ヒューズ……」


「悪いな、ダン。俺は若い奴が悩んでる所を見ていられないもんでね」


 困ったような声のダンに、そう返すヒューズ。

 しかし、どうやらそれも慣れた事のようで、ダンはとやかく言うような事はしなかった。

 ヒューズは隣に座っているガイアへと顔を向け、こう言った。


「お前達冒険者は、人様からの依頼を受けて、驚異を取り除く為に戦うだろ?

俺達傭兵は、商人や依頼主を守り、目的地まで無傷で送り届けるために戦うんだ。

……まぁ、冒険者と傭兵の違いってのは、そういうことさ」


 ヒューズが笑いながら語ったその言葉に、ガイアは成る程と感心していた。

 そして、そこにアスナがこう続けた。


「"依頼主の要求に応える"っていう根っこの部分は同じだけど、私達冒険者が主にこなしている"自由討伐"と、傭兵さん達が請け負う"護衛"じゃ、自由度がかなり違ってくるのよ」


「……成る程」


 ガイアはこの時、何故"冒険者"と"傭兵"でギルドが別れているのか、その理由を悟った。

 この一ヶ月を異世界で過ごしてきたガイアは、「何故同じように報酬を支払うのに、わざわざ名前もギルドも別れているのか」という疑問が浮かんできていた。

 しかし、図書館で魔物の図鑑を頭に叩き込む内に、その疑問を尋ねることをすっかり忘れてしまっていたのだ。

 そして、「必要とされる技能が異なるから」という答えが、偶然にもこの場で見つかることとなったのである。


「……お前ら、そろそろ下りる準備しとけ。もうすぐ目的地に着くぞ」


 そんな会話をしていた四人に、手綱を握っていたダンの声が届く。

 一行は気を引き締め、前方に見えてきた目的地──「湧水の森」の姿を、その目に捉えたのだった。

APP:「見た目の良さ」を現すステータス値。16~17は「一線級のモデルやアイドル並」である。

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