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魔法剣士ガイア  作者: ふぉるて
第1章「真言」
19/156

1─X

 二人は先程よりも奥へと進み、今尚もホルト鉱山での採掘に(いそ)しんでいる。

 だが、そんな二人の耳に、坑道の奥からこちらに近付いてくる翼の音が届く。


「……来るわ」


「了解」


 二人は武器の柄を握り、戦闘態勢に移行する。

 やがて、地面に置かれた照明の光が届く場所に、その音の主達が姿を現す。

 それは、真っ白い体毛に真っ赤な目を宿したコウモリ──「シロバット」の群れであった。


──その内、体毛が黒色に変化したりしないだろうか。


 そんな不安を抱きつつも、ガイアは魔法「疾脚ブースター」を発動し、自身とアスナの素早さを底上げする。

 別に、シロバットは特別倒せない相手では無い。

 しかし今、二人の頭部にはライトが巻かれているため、ガイアの鉢金は外されている。

 故に、ガイアは念のための保険として、魔法で素早さを底上げしたのだ。


 そして──ガイアは抜刀し、その勢いを乗せたまま、縦に一閃。

 一体目のシロバットは鮮血を撒き散らし、あっけなく地面へと落下する。

 幅の狭い坑道の中、武器の振り方を縦方向のみに絞り、バッサバッサと斬り捨てる。

 一方、アスナも槍を穿ち、シロバットの口から全身を貫通させては遠心力を使って抜き出し、死体を地面に放り投げる。

 ガイアと同様の理由から攻撃手段を突き一本に絞り、一匹、また一匹と風穴を開ける。

 二人の一方的な攻勢が続き、シロバットの死体の山だけがいたずらに積み上がって行く。


 そして──、最後の一匹がガイアの剣で斬り伏せられ、潰れるような声と共に絶命した。


「ふう……、お疲れ」


「そっちもね」


 二人はそれだけ交わすと、武器に付着した血を拭い、魔物の死体を埋めるための穴を掘る。

 そして、二人が最後の死体を穴に入れ終えて土を被せ、採掘を再開しようとしたその時。


「待って」


 そう言われ、ガイアは振り上げたピッケルを止め、口の前に人差し指を立てて「静かに」と言っている明日菜に従い、静かに耳を澄ませる。

 そして──坑道の()の方から、風の唸る音が聞こえて来ることに気付く。


「風……?」


「多分、この辺りじゃ目的の物は採れないと思うし、奥の方とか思わぬ所にあるかも知れないわ」


「ああ……、そうだな、行ってみよう」


 アスナの指摘も最もだと考え、ガイアはその提案を受け入れる。

 そして、奥へと歩みを進めた二人の前に現れたのは、壁に入った大きな亀裂であった。

 風はそこから吹き出しており、そのすき間からは向こうの空間を(・・・・・・・)捉えることが出来た(・・・・・・・・・)


「……この亀裂、向こうに空間があるな。しかも、妙に明るい……」


「そうなの? 光源は分かる?」


「いや、それは分からない……。けど、凄く綺麗な水色の光だ」


「え、それって……!」


「ああ……。多分、目的の鉱石だと思う」


 ガイアのその言葉に、アスナは驚きを隠せずにはいられなかった。

 ガイアもその顔に笑みを浮かべると、早速亀裂を開通させるため、アスナと共に安全圏であろう場所まで距離を取る。

 そして、地属性の中級攻撃魔法「土杭(ピック)」を発動し、亀裂の反対側の壁から土の杭が生成される。

 生成された杭は、まるで丸太で門をどつくように亀裂に衝撃を加え、それを何度も何度も繰り返す。


 そして──、遂に凄まじい轟音と共に壁が崩れ落ち、二人は慎重にその穴を覗き込む。

 更に、その穴から十メートル程下方。

 その空間にある地面の中央には、青空のような深い水色の結晶が、静かに光を(たた)えていた。


 ガイアはすぐさまその結晶に対してステータス確認を発動し、そこに「アズライト鉱石」の名前が冠されているかどうか確認する。


「……やったよアスナ、当たりだ!」


 ガイアはそれだけ言うと、支給品の袋からロープと固定金具とハンマーを取り出し、「サバイバー」の加護で得た知識を頼りにロープを地面に固定する。

 そして、しっかりとロープが結ばれたことを確認すると、今度は反対側の先端を穴の方へと滑らせて行く。

 ロープは穴の向こうに広がる急斜面の壁をするすると下り、あっと言う間に十メートル下の地面に到達した。


「よし、降りよう」


「ちょっと待って、二人一緒じゃまずいわ」


 ガイアが降りる準備をしようとしたところで、アスナから制止がかかる。

 そう言われ、ガイアも確かに、と納得する。

 このロープに、魔物が何もしないとも限らない。

 そんな時に二人一緒に降りていれば、手遅れになる可能性が十分考えられる。

 そして、今立っているこの坑道は、ガイア一人ならば思う存分武器を振るえるだけの広さがある。

 しかし、アスナの槍ではそう言うわけには行かない。

 だが、アズライト鉱石がある向こうの空間は開けており、仮に魔物が現れてもアスナの槍を存分に振るうことが出来るのだ。


「じゃあ、切り出しは頼んだ」


「ええ、任せて」


 こうして両者は互いに納得し、ガイアはロープと固定金具の防衛に。道具を担いだアスナはロープを握り、壁に足を立ててゆっくりと下って行ったのだった。

─魔法データ─


疾脚ブースター

風属性の中級支援魔法。

術者と、その人物の半径二メートル以内に存在する仲間一人の素早さを強化する。



土杭ピック

地属性の中級攻撃魔法。

指定した地点から円筒状の土の杭を生やし、そのまま対象をどついて攻撃する。

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