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Parasite flower   作者: 須谷
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アザレア

 私は植物が好きだ。

 そして植物もきっと私を愛してくれている。

 だから、多分。今のような状況になったんだろうと思う。

 私の足には、薔薇のように美しい寄生植物が絡みついていた。

 

 物心がついた時にはもうすでに、植物は私にとなりにいて、私を支えてくれていた。

 そんな私を気持ち悪がった両親は私が10になるころ、私を置いて二人でどこかに行ってしまった。

 そんな私の生活を、ずっと支えてくれたのが植物なのである。

 森の中にある私の家の近くには、食べることができる植物や動物が結構いるわけでそれを頂いて生活していた。

 ろくに歩くことができない私を気遣ってか、窓から入ってくる植物さえいた。

 そして、私には13歳の時に大きな出会いがあった。

 ハイアとの出会いだ。

 私のことを他人事のように言わなかった初めての人は、私の世話をしてくれた。

 本人に世話という感覚はなかったのかもしれないけど、食料を持ってきて料理をし、話して帰っていく彼はどう考えても私の世話がかりだ。

 私はそれにより、心も体もかなり支えられていたんだと思う。


 ある日彼は、私に結婚しようといった。

 私ももう18を過ぎ、彼もまた20を超していたから、私の村では結婚していてもおかしくないような年齢だった。

 私も彼が大好きだったから、すぐにOKしたかった。

 でも私には一つ、問題があった。

 足に生える寄生植物だ。

 この植物がある限り、私の寿命は決して長くないだろう。

 もし彼と結婚するならば、やはり長く彼と一緒にいるべきだし、私自身も長く一緒に入れたらいいなと思う。

 でも、植物も大事なのだ。私をずっと支えてくれた植物は、ほかの人にとってはどうでもいいかもしれないけれど少なくとも私にとってはとても大事な存在。

 だから私は悩むのだ。

 

 私は悩みに悩んだ。

 毎日ずっと悩み続けていたせいで、私は笑顔を忘れていた。

 そんな私に、彼は愛想を尽かせてしまったのかもしれない。

 ハイアは私に冷たく言い放った。

「しばらく距離を置こう。」

 そんな言葉は、私の心に容赦なく突き刺さった。

 私は、どうしたらいいのかわからなかった。

 だから。うまく返答することもできず、私の部屋から去っていく彼の背中を眺めた。


 次の日、けろりとした顔をして彼はやってくると思った。

 でも、午後三時。私は部屋に一人だった。

 寂しくて泣きそうになった。

 この想いをどこにぶつけたらいいかもわからなかった。

 だから、ただただ天井と窓から見える空を眺めていた。


 考えは巡る。

 私の頭は、日に日に彼でいっぱいになった。

 あんなにどちらを選ぶかで悩んでいたはずなのに、そんなのはすっかりなくなってとにかく彼と話したかった。

 彼を見たかった。

 

 自分のそんな気持ちに気付いた瞬間、私は動き出した。

 もともと力は弱い方だけど、ずっと頼ってきた腕には結構な力がある。細い腕だけど、私を支えてくれたもの。

 私は、当てもなく彼を探しに外へ飛び出した。

 

 やはり当てなんかないし、そもそも外に出たことがほとんどなかったせいで道が全く持ってわからない。

 街に出てみたけど、始めてみた町は私にとってはキラキラし過ぎていた。

 人は私をじっと見た。

 足はもう、引きずりすぎてずたずた。

 それなのに誰も助けてくれない。世の中は非情だった。

 でも、私はお構いなしだ。

 とにかくハイアに会えればそれでいい。

 ハイアはどこ?


 気づけばもう、日はてっぺんにはなくて、視界の端の方まで落ちていた。

 もうすぐ日が暮れる。

 もう帰らなくてはいけない。

 暗くなったら余計どこがどこかわからなくなってしまう。

 もうほとんど諦めていた。 

 その時。

 声がかかった。

 聞きなれたその声は、ハイアのもの。わ

 私はゆっくりと顔をあげる。

「アザレア…。」

「ハイア、私は貴方を取るわ。花じゃなくてあなたを取るわ。」

 私がいいたかったのはそれだけ。

 彼は、私の言葉を聞くなり申し訳なさそうに笑った。

 そんな顔はしてほしくなかった。

 決断した時ぐらい、もっときれいに笑ってほしい。


 私はそのあと、彼の手によって家に運ばれた。

 私は疲れ果てていて、もう道を進めるような状態ではなかったからだ。

 家のベッドに横たえられた後、私は思い切り寄生植物を引きちぎった。

 彼は何も言わず、私の行動を見守っていた。

 植物が抜けた後、足に刺さっていた棘の痕はすぐに消えてしまった。

 とても不思議な光景だった。

 どこまでも変な植物だった。

 裏切るような形になって、ごめんね?


 花を抜いても、私は動くことはできない。

 もう二度と、動くことはないけれど私は大丈夫。

 ハイアがいるからね。


 移動雑貨屋をしているハイアは、私に広い世界を見に行こうと言って私と一緒にいろんなところにものを売りに行くことにした。

 自分の村だけにとどまらずいろんなところに行く。

 一人じゃないから、旅は楽しい。

 勢いだけど、これでいい。これぐらいが私たちみたいな、世界の狭い人間にはちょうどいいのかもしれない。

 小さな世界で生きてちゃ、つまらないだろう?


 今日も少しずつ、いろんな場所を巡っていく。

 まだまだ、この広い世界の少ししか見ることはできていないから。

 どんどん前に進む。


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