幸せを覗く者
お風呂でイチャイチャする2人を、遠くから覗く人物がいた
「はぁ………。本当に、彼女達がドラゴンロード?信じられないわね……。」
覗く人物は、女性だった
女性と言うにはまだ幼く、女の子と言うには年を重ねた、日本の女性なら中学3年生くらいの年頃の女性だ
彼女本人にレズの精神は無い
だからと言って、男性が好きかと言えば答えはNOだ
寧ろ、不潔とすら思っている
これ程までに清々しい嫌悪感を持った理由は簡単
回りが本当に屑の集まりだったからだ
今まで出会った男性の殆んどが彼女を蔑みの目で見た
彼女の生は、ひとつの旧家の武家の家に生まれた
目先の楽よりも、仁義を重んじ行動し、時には敵を救い、また有るときは上官を叩ききったりする、それなりに名の有る家に生まれた
上には一人の兄と、下に一人の弟がいた
生まれて立てるようになった時から、彼女の運命は既に決まっていた
なにもしなくて良い、っと
武家の家に生まれた彼女だが、上の兄が家を継ぐため、何かしらの功績をつくる必要は無い
何かしらの緊急の際の予備はある……っと、
子供である自分に決定権は無く、将来は何も無い…はずだった
相次ぐ兄と弟の戦死
兄は大規模討伐の際、孤立した民家を逃すために殿として、死亡
弟はまだ小さかったが、訓練は受けたいた為、戦死した兄に変わって指揮を取り、…………仲間の流れ弾に当たって死亡
残ったのは、宙ぶらりんになった家の長と、自分のみ
なし崩し的に、無理矢理、押し付けらて、決められた
兄と弟の戦死を良いことに家の長の地位へ上り詰めた女
それが回りの見方だ
何も、別に無能ではない…っと自分で思う
魔法は風魔法は高等まで極め、他の魔法も中級までは出来る
大抵の人間は初級が2、3個出来れば御の字なのに対して、本当に魔術のカミに愛されている…
実際は、父に、母に、家族に認められたくて、懸命に努力したにも関わらず、
『魔法など、武家の家に相応しくない。』
それが回りの家族と、名前も知らない親戚の反応だった
なし崩し的に騎士の一人になった彼女の役職は
特別部隊長の肩書きのみ、
部下は一人もいない
上司は山ほど居るのに対して、本当に無力
今日も今日で、上から言われた仕事はこんな覗き紛いの仕事だ
「本当に……………、何やってんだろ…………。」
彼女はぼそりと、誰も聞かない独り言を呟き、もう一度魔法を行使する
「『風の道を曲げよ』」
空間の風を意図的に曲げ、風のレンズを作り出す
彼女の編み出した、オリジナル魔法のひとつ
望遠鏡だ
もっとも、家族には鼻で笑われたが
「……………………。」
様々な感情を、いつも通り圧し殺して、彼女はまた幸せそうな2人を黙って遠くから見つめるのであった




