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白魔導師と金髪魔族①


 魔族の狙いは何なのか……。

 思考を巡らせつつ、次にとるべき行動を、最善策を考える。

 まず、真っ先に考えなくてはならないのはクレアを保護すること。

 これは間違いなく、最優先事項だろう。

 クレアだけはなんとしても捕られてはならない。

 もし、クレアを連れ去られることがあれば、それこそ終わりだ。

 王国も、そして俺たちも。イシュタルで実行されかけた大惨事が、今度こそ形になってしまえば、どれほど多くの人命が失われるか。想像もしたくはない。


「くそっ、どうすりゃいいんだ……」


 クロスが微かな声で呟く。

 いくら攻撃に応用を効かせているとて、基本視覚に頼るクロスにとってはより辛い状況だろう。

 勘を頼りに少し広範囲に魔法攻撃をするなど、霧の中でもそれなりに攻撃の可能な魔法職のシリカ。

 即座にその優れた反射神経を頼りに、モンスターの攻撃に対応することが可能な近接攻撃のユイやダッガス。

 それに対し、本来であれば遠距離、中距離の攻撃を主にするクロス……。

 弓矢で攻撃する以上、モンスターに狙いを定める必要がある。

 急所を狙うのなら尚更。

 この中で誰よりも苦戦を強いられているはずだ。

 とは言え、俺も探知魔法を封じられている以上、以前、農園でのハイウルフ戦でしたような協力は出来ない。


「っ……」


 自分の実力の無さが悔やまれる。

 もっと自分に実力があれば……。

 そう悔やみながらも、どうにかならないものかと、唇を噛みながら必死に考える。


「探知魔法……なんとか使えないのか?」


 特にこれと言って、よい打開案が有るわけでもないが、再度、探知魔法を発動してみる。

 何か解決の糸口になるものはないかと。

 さっきは唐突のことに驚き、動揺していた。

 今、改めて探知してみれば、何かに気がつけるかもしれない。


 そう思いながら少し範囲を広めに、探知魔法を発動した。


 その時だ。遠く、数百メートル……いや、それより遥かに遠から。

 何か、途轍とてつもない気配が、物凄い速度で霧を裂きながら、こちらへと迫ってきているのが分かった。

 霧が裂けていくため、魔族とその通ったであろう道のみ、探知が可能となっている。

 不幸中の幸い、とでもいうべきか。

 この状況も異質だか、それを遥かに上回る異質な何かが、有り得ない速度でこちらへと来る。


「たまたま……じゃなさそうだな」


 この感じ、魔族の気配だ。

 間違いない。

 この状況で、クレアを護りながらの戦闘。霧のせいで、方向感覚も失っている。

 王都の近づけているかさえ怪しいため、助けもあまり期待は出来ないと考えていいだろう。

 これは非常に不味いな。


「ユイ、ダッガス、シリカ、クロス! クレアが狙われている! かなり遠くからだが、何かが、とんでもない速度でこっちへと迫って来ている!」


「えっ!? それって……」


「間違いない、魔族だ! 数は一人だが、かなりの手練れだ」


 いや……そんなもんじゃない。

 近づくにつれ分かる。

 手練れ……なんてレベルじゃないことが。

 おそらく、俺の出会った中で、個としては最も強力な敵と言えるだろう気配。

 近づくにつれ大きく、強くなる……探知魔法を使えない俺以外の人たちでさえ感じられるほどの巨大な魔力の気配。

 それと同時に、木々をバキバキと薙ぎ倒す音が森に響き渡る。

 音と気配が次第に大きく、迫ってくるのが分かる。

 そして、


「……来るぞ!」


 そう叫ぶと同時に、その魔族は木々を薙ぎ倒し、俺たちの前へと姿を表した。

 魔族の急ブレーキにより、舞い上がる大量の砂埃。

 また、それにより生じた暴風により、周囲の魔力の霧が晴れる。


「いやー、反応があるっていうから来てみたが、そうか……。あの村の近くにいるとはな。場所が分かってたお陰で、ここまで一直線で来れた」


 砂埃の中から聞こえてくる声。


「ゴホッ!……だ、誰だ!?」


 俺は恐怖を堪えながら、その魔族がいるであろう場所へと目を向けた。

 そこには金髪の巨漢の魔族が立っていた。

 

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