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白魔導師、思い出にふける


 ◇


 宿へとたどり着いた俺は、まっすぐ自室へと向かった。

 依頼を受けてから、ずっと来ていなかったせいか、凄く懐かしく思えてしまう。

 一応ここと、周辺の四部屋は、ユイ達のパーティーが長期滞在するために貸しきっているらしい。

 ユイちも今はたまたまイシュタルに長期滞在しているそうだが、いつもは転々としているみたいだからな。


「ふぅ……疲れた」


 このままベッドで横になりたい気分だ。

 だが、先に風呂に入らなければベッドが汚れてしまう。

 重い身体をお風呂場へと運ぶ。


「あっ……」


 そう言えば、似たようなことを師匠に注意したことがあった気がする。

 懐かしい。

 師匠は元気にしているのだろうか……。


 あんな人でも俺の育ての親である。

 いくら師匠が嫌いとはいえ、一年も会っていないと、やはり心配になってしまう。

 いや、あんな自堕落な師匠だからこそ、心配になるのだろうな。

 まぁ、師匠にはリリィさんやトールさんもついているし、たまに来てくれているはずだから、きっと大丈夫だろうが。


 二人に怒られながら、部屋を掃除している師匠の姿が思い浮かぶ。

 うん、きっとこんな感じだ。

 そんなことを考えながら、お湯を沸かし、風呂に入る準備をした。


「よし……あとは待つだけだな」


 お風呂が沸くまで時間がある。

 俺はポケットに手を突っ込み、赤い魔石を取り出した。

 シルビィーの傷があったであろう場所から出てきたあの魔石である。

 この魔石を運ぶ際に収納魔法を使わなかったのは、根拠はないが少し危険な予感がしたからだ。

 シルビィーを見ていて、ひょっとすると魔力に触れさせることが危険なのではないだろうかと、そんな風に感じた。

 試しに、魔力譲渡で微少の魔力を魔石へと流し込んでみる。

 すると魔石が赤く、強い光を放ち始めた。

 予想通りの反応だ。


「やっぱりそうか……」


 眩しいというまでではないものの、その光は強く、どこか美しい。

 また、赤く光る魔石の周囲には、シルビィーの時と似たような魔力が漂っていた。


「うーん……なんなんだろうな」


 考えてみるが、まったく見当がつかない。

 天然の魔石とも考えにくい。

 とは言え、人工のものとも思えない。

 そもそも、人工の魔石なんて見たことないし、師匠も生成は不可能だと言っていた。

 もっとも、師匠の言うことを鵜呑みにしているわけではないが。たまに適当を言うというか、理解できないことを口走るもの決して珍しくはない。

 そして、俺自身も魔石の生成は無理だと思っている。

 そもそもの話、魔力が時間をかけ固まり生み出された高濃度な個体が魔石なだけで、それに暴走を引き起こす作用があるとも思えない。そうなるとこれが、本当に魔石というジャンルに括っていいのかさえ疑わしい。

 

「いったい、なんなんだろうな」


 使い方さえ気を付ければ、ライトの代わりにもなりそうだが……

 ライトの魔法よりも、全然効率もよさそうだ。

 念のため、持ち歩くとしよう。

 そう思った俺は、明日着る予定の服のポケットに魔石を突っ込んだ。


「さてと……そろそろ沸いたみたいだし、入るとするか」


 この赤い魔石は気になることばかりだが、これ以上気にしても仕方がない。

 下手に調べるのも危険だ。

 それに、今日は早く寝ないといけない。

 俺は収納魔法を仕様し、寝巻とタオルを取り出してから、お風呂へと向かった。




 ◇


 翌朝。

 目を覚ました俺をひんやりとした風が頬をなでた。


「ん……もう朝か……」


 俺はベットから体をお越し、寝巻きからいつもの服へと着替え、宿の外でユイ達を待っていた。

 一番早かったのは、いうまでもない。

 ちなみに、服装はいつものもののまだだ。

 貴族の家に行くなんて昨日まで聞いていなかったし、そういった時に着るような服は持っていない。

 そして、そんな服を買えるほど財布に余裕があるわけでもない。そんなわけで今日もいつもの服で行くつもりだ。

 不安もあるが、仕方あるまい。

 大丈夫だろうか……


「ロイド……お前は相変わらず早いな」


 服装のことを不安に思っていると、後ろからダッガスに話しかけられた。

 振り返るとそこには、依頼の時と似たような服を着たダッガスの姿があった。

 それを見た俺は安堵し、ほっとため息をつく。

 そうだよな……

 少し考え過ぎていたのかもしれない。


「まだ、待ち合わせの時間まで十分以上もあるぞ」


「それを言うならダッガスもだろ?」


「まぁ、そうだな……あいつらが寝坊したら、俺が起こさないといけないからな」


「へぇー、誰が起こさないといけないって?」


 話していると、ダッガスの後ろからユイが現れた。

 それを見たダッガスが、驚き目を見開く。


「おっ、ユイにしては珍しく早いな……いつもならシリカが先なのに」


「貴族様に会いに行くのよ? 遅刻するわけないじゃない」


 ユイが「当たり前でしょ」と言わんばかりの顔でダッガスを見る。

 しかし、ダッガスはそんなユイの姿を疑いの目でまじまじと見つめていた。


「な、何よ!?」

 

「本当か? たまたま早く起きただけとか……」


「そ、そんなことは……ないわよ」


「図星だな……」


 ダッガスの言葉を聞いた、ユイが慌てた様子を見せる。

 反応から察するに、本当にたまたま早く起きただけなんだろう。

 その後、シリカ、クロスの順番でやって来た。


「よし、それじゃ皆そろったわね!」


 ユイが全員揃ったことを確認し、声をかける。


「それじゃ行きましょう。貴族様のいるところへ!」

 

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