白魔導師、と紫の魔石
「それは……本当か?」
目を見開き、こちらを見つめるクルム。
その表情から、かなり驚いていることが分かった。同時にその嬉しそうな期待の眼差しが、俺の放った言葉の重さを痛感させる。
「たぶんだがな……妹のいる部屋まで連れてってくれないか?」
魔力の暴走……。
シルビィーの容態を見てみるまで確証は持てない。
だが、俺の想像通りならば何とかすることが出来るかもしれない。
「わ、分かった……こっちだ」
そう言うとクルムは立ち上がり、その妹がいる部屋へと案内してくれた。
まぁ、変な魔力を感じるため、どの部屋かはすぐに分かっているのだが……。
クルムがその、変な魔力を感じる部屋の前で足を止めた。
扉をトントンと、軽くノックする。
「シルビィー……部屋入るぞ」
返事が返ってくる様子はない。
返事をすることが出来ないほどに衰弱しているということだろう。
返事が帰ってこないのは珍しいことではないらしく、クルムは返事を待つことなく、ゆっくりと部屋の扉を開けた。
その瞬間、嫌な空気が俺を襲う。
部屋に閉じ込められていた魔力が、扉を開けたのと同時に、外へと逃げたのだろう。
なんというか、吸うだけで気分が悪くなるような感じの空気だ。
隣のクルムも少しだが、気分の悪そうな顔をしている。
もしこれが魔法を使う機会が少なく、あまり魔力に触れることのない街の人などならば、気分が悪くなるだけじゃすまないかもしれないな……。
「……あそこにいるのが妹のシルビィーだ」
クルムが部屋の窓際に置かれたベッドを指差す。
そこには銀髪の、痩せ細った少女が横になっていた。
あれが妹のシルビィーだろう。
クルムと共に、シルビィーのもとへと足を進める。
「シルビィー、布団をめくるぞ」
クルムがそう言うがやはり、返事は返ってこない。
クルムもそれが分かった上で尋ねているんだろうな。
シルビィーにかけられている布団を、クルムが優しく捲った。
「これが魔石化か……」
シルビィーの腕や足が魔石となり、紫色の不気味な光を放っていた。
魔石にも様々な色があるが、これは色々な濃度の魔力が凝縮した時に出来る魔石の色だな。
本来、一般的な魔石は綺麗な青色をしている。
「魔石化しているのは、手足だけか……」
「あぁ……手や足の指先から少しずつ魔石化していったんだ。一応、高位の回復魔法使いにも見せたんだが、分からないと言われてな……」
回復魔法の使い手か。
白魔導師よりも、回復魔法に長けた職業と言うことは『僧侶』あたりだろう。
白魔導師は回復も使えるが、どちらかと言えば支援魔法の方が得意だ。
回復系の専門職ではないからな。
回復ならば、僧侶の方が高度な魔法が使える。
だが……。
「だろうな」
「えっ?」
それを聞いたクルムがポカンと口を開ける。
そんなクルムを余所に、俺はシルビィーへと手を伸ばした。
「ロイド……何をするつもりだ?」
クルムがその鋭い目で、俺を見る。
凄腕の回復魔法の使い手が何も出来なかったのに、白魔導師のお前に何が出来るのかと。
そう言いたいのだろう。
もしくは、妹に変なことをすると思っているのだろうか?
「本当に可能なのか?」
疑いの目を向けながら尋ねる。
「まぁ、俺に任せてくれ……あっ、離れておいた方がいいかもしれないぞ」
俺はそれだけ言うと、眠っているシルビィーの額に手を当て、魔力譲渡を発動した。




