動き出す者達④
投稿ミスしてすみませんでした。
今後はミスの無いように心がけます。
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帝国の首都、クロイツ。
帝国は王国、聖教国と並ぶ三大国の一つだ。
住民の多くは獣人で、大陸にいる九割の獣人が帝国に住んでいる。
また、その中でも最も栄えている街であるクロイツ、は皇族の住む王城があると言うこともあり、高い壁に囲まれていた。その石で出来た壁は高く、かなりの分厚さがある。
これでは、門以外からの侵入は難しいだろう。
そんなクロイツのとある晩。
クロイツに設けられた、たった一つの大きな門の前に一人のフードを被った男がやって来た。
男はフードを深々と被っており、まるで身を隠すかのような格好をしている。
明らかに不審な人物だ。
その男に気づいた門番の一人が男へと近づいていく。
「おい、貴様! こんな時間に何処へいくつもりだ!」
門番が男に尋ねる。
現在、第二王女が行方不明と言うこともあって、クロイツの警備は今まで以上に厳重なものとなっていた。
流石に第二王女誘拐の件は伝わっていないだろうがここの門番達は、帝国の上層部からかなり厳しく言われているのだろう。
門番からはピリピリとした雰囲気が伝わってくる。
しかし、男は門番を無視し、足を進めようとした。
まるで、門番が見えていないかのように。
「こいつ……」
忠告を聞かない男に苛立ちを覚えた門番が掴みかかる。
「おい貴様、帰れと言っているのが聞こえ……」
「邪魔だ……退け」
男はそう言うと門番の手を振り払った。
それにより、門番の男の怒りが頂点に達してしまう。
「貴様……こんなことしてただで済むと思っているのか! その顔をよく見せろ! 規則違反で牢へぶちこんでやる!」
門番が怒声を浴びせながら男のフードをとった。
だがフードをとられて尚、男は慌てる様子はなく、ただ門番を睨み続けていた。
動じない男とは逆に、フードをとった門番が驚愕の表情へと変わる。
「あああ、あなた様は!? もしかして……帝国軍五隊長の一人、リウァイブ様ですか!?」
門番の驚き様を面白く感じたのだろう。
それを見た男がフッと笑う。
「あぁ、そうだ。外に急ぎの用があるんだが……出ても問題はないよな?」
男は門番を睨み付け、そう尋ねる。
いや、尋ねると言うよりは「通せ」と命令しているようだった。
男からは、とてつもない威圧感が放たれている。
「は、はい! リウァイブ様ならば、何の問題もございません! その、どうか上への報告だけは……」
帝国軍の五隊長とは、帝国の保有する最強の軍隊に、五人しかいない隊長のことだ。
一人一人がかなりの実力者で、その強さは一騎当千ともいわれる。また、皇帝との謁見が許される数少ない者でもある。
そんな人に門番があんな態度をとったと知られれば、それなりの罰が下るだろう。リウァイブがこのことを告げ口すれば、門番をやめさせられることだってありうるのだ。
門番の男がそれを避けようと必死なのが、言動から分かる。
「はぁ……まぁいい。今日は機嫌がいいからな。特別に許してやる」
「あ、ありがとうございます!」
門番はそう言うと頭を深々と下げ、リウァイブと言う男を街の外へと通した。
◆
リウァイブは門をくぐり、そのまま森の奥へと足を進めた。そして少し離れた場所で足を止め、周囲に人がいないことを確認する。
「よし、近くには誰もいないな……」
そう呟くと同時にリウァイブの身体が獣人の姿から、魔族の姿へと変わった。
獣人に変化する魔法を解いたのだろう。
つまり、この魔族の姿がリウァイブの本当の姿である。
「もう大丈夫だ……そこにいるんだろ?」
リウァイブが何もないはずの場所へと語りかける。
すると突如、黒い衣服に包まれた男が空中から現れた。
「はい。お待ちしておりました……」
真っ黒な衣服に包まれた男は、どこか後ろめたそうな顔をしながらリウァイブの前に膝まづいた。
「どうかしたのか?」
疑問に思ったリウァイブが男に尋ねる。
「い、いえ。その……グリスト様が計画していた勇者殺害の件ですが……」
グリストとは、リウァイブのもう一つの、いや、本当の名前だ。
魔王軍四天王の一人、グリスト。
魔族の中では、知らない者はいないと言われるほどの人物である。
「あぁ、それについて聞くために呼んだんだ。で、どうだ? 上手くやったんだろうな?」
グリストが機嫌良さそうに、笑いながら尋ねる。
しかし、それを聞いた男はビクビクと小刻みに震えていた。
男は怯えた目をしており、何度かパクパクと口を開いた後で、やっと話始めた。
「た、大変申し上げにくいのですが、グリスト様の立てた計画は……失敗に終わりました……」
「……ん?」
男の言葉を聞いた瞬間、グリストの口元がぴくりと動く。
「おい、俺の聞き間違いだよな? 今、失敗したって聞こえたんだが……」
グリストの握りしめた拳に力が込められる。
ギリギリ冷静さを保っているような感じだ。
「もう一度聞く……計画は失敗したのか?」
「は、はい……」
「そうか……失敗か」
それを聞いたグリストは笑いだした。
意外と怒っていないのだろうか。
そう思い、男がほっと胸を撫で下ろす……
次の瞬間、グリストの表情が急変し、右腕で男の胸を貫いた。
男の口と貫かれた胸から、大量の鮮血が吹き出る。
「リ、グリスト様……どう、して……」
グリストが男の胸から右腕を抜く。それにより、支えを失った男は地面へと倒れこんだ。男の胸からは未だ大量の血が流れ出ている。
「……っち、どいつもこいつも……」
右足を上げ、それを倒れた男の頭の上まで持ってくる。
「な、何を……」
男が何かを言おうとするが、グリストはその言葉を聞くつもりもなかったらしい。
そのまま右足を力強く男の頭へと振り下ろす。
「くそ! 俺がどれだけ苦労したと思ってる! 毎日毎日、見た目も心も獣人になりすまし……信頼を得るために皇帝に尽くし……やっと連れ出したんだぞ!」
何度も何度も、繰り返し男の頭を踏みつける。
その度に、ぐちゃっと言う音をたてながら血が周囲に飛び散る。
「くそ……これで手柄を上げれば他の四天王よりも、上の位を貰えたと言うのに!」
その後もグリストは、「くそ!くそ!」と連呼しながら、男の頭を踏みつけ続けた。
グリストの計画は途中まで順調に進んでいた。
勇者パーティーの実力も予想以下のものだったし、特殊な石に第二王女の魔法を付与し、モンスターを操ることにも成功した。
依頼でSランク冒険者のパーティーをイシュタルの外へと誘き出し、排除することも出来た。
ここまではよかった。
後はイシュタルの住人と勇者が、モンスターの群れに蹂躙されさえすれば、計画は成功するはずだった。
勇者と言う存在に対する評価を落とし、勇者に対する支援を少しでも減らすことにより、他の勇者の戦力を少しずつ弱体化させていく。
そして魔王軍にとって戦い易い状況を作る。
計画に誤算はなかった。
それなのに、グリストの考えた計画は失敗した。
「くそ……どうなってるんだ?」
理解出来ない。
重要な場所には、それなりの実力を持つ配下を配置した。
ミスをするとは思えない。
「……まぁいい」
しばらく考えたが、グリストは考えるのを止めた。
いくら考えても、失敗という結果は変わらない。
そう思ったからだ。
それに、今のグリストからすれば失敗したことなんてどうでもよかった。
「俺の計画を狂わせた奴がいるはずだ。それが誰だかは知らない。だが必ず見つけて……この手で殺してやる」
そう言うグリストの目は、溢れんばかりの怒りと狂気で満ちていた。
一章完結まであと一話、
内容は勇者パーティーについてです。
明日、登場人物一覧と共に投稿するので、よろしくお願いいたします。




