白魔導師、駆け抜ける(中)
昨日投稿した「白魔導師は駆け抜ける」の②を①と合わせました。
「はぁ、はぁ……ロイドさん、出来ましたよ」
クレハが息を切らせながら言う。
かなりの魔力をつかったのだろう。
それを聞いた俺は、隠蔽魔法を発動した。
一旦、クレハを休ませるためだ。
トロールの攻撃を避けながら休憩なんてしたくないだろうしな。
「ほら、これを飲んで回復してくれ」
収納魔法でマナポーションを取り出し、クレハに渡す。
「ありがとうございます」
「気にするな」
どうせ、盗んだものだし。
空を見ると多くのモンスター達が森の奥へと飛び去っていっていった。
どういう魔法なのかは詳しく教えてもらえなかったが、不思議な魔法だ。
モンスターと会話が出来るのもそうだが、話し合いでモンスターとの争いを解決できるなんて……
「本当に凄い魔法だな……」
古代魔法の類いだろうか。
それならば、この凄さにも納得は出来るのだが……
「いや、まさかな」
ありえない。
古代魔法とは、遺伝や特殊な方法でのみ習得できる魔法だ。
しかし、古代魔法は数百年前に滅びたと聞いている。
滅びた古代の魔法……ゆえに、古代魔法と呼ばれているのだ。
師匠も古代魔法についてはあまり知らないと言っていた。
なら、クレハの魔法はいったい……
「あの、ロイドさん……どうかしましたか?」
クレハが顔を覗きこみながら尋ねる。
「いや、なんでもない。凄い魔法だなと思っただけだ」
「そうですか……でも、ロイドさんも凄かったと思いますよ」
凄かった?
それはどういう意味だろうか。
俺は特に、何かをした覚えはないのだが……
「そんなことはないと思うんだが……」
「いえ、ロイドさんの支援魔法と言い、その身体能力と言い、どれもかなりのものでした。私も様々な方を見てきましたが、こんなに凄い支援職の方は初めてです」
お世辞だろうか?
クレハもユイ達と似たようなことを言うんだな。
だが、
「いや、俺より凄い奴なんていくらでもいるさ」
事実、白魔導師が得意とするはずの支援魔法でも師匠にすら勝てたことはないし、実力不足で勇者パーティーも追放されてしまった。
それにいくら身体を鍛えていたとしても、トロールのようなモンスターからは逃げ回ることしか出来ない。
白魔導師である俺には、ユイやアレンのような鋭い一撃を与えることも、シリカやミイヤのような威力の高い魔法を放つことも、ダッガスのように攻撃を受け止めることも出来ない。
まぁ、地道に削れば倒せるかもしれないが……
「本当に、まだまだだよな」
「あの、そんなことはないと思うんですけど……なんなら私の……」
クレハが小声でぶつぶつと呟く。
声が小さすぎて最後の方は何を言ったのか、聞き取ることが出来なかった。
まぁ、別にいいけど。
それより……
「大分減ったな」
空を見上げながら呟く。
明らかに空を飛ぶモンスターの数が減少している。
かなりの数のモンスターを森へ帰せたのではないだろうか。
とは言え、対処できた数は、空を飛ぶモンスターの全体の半分に過ぎない。
地上も合わせればモンスターはまだまだいる。
探知魔法でイシュタル周辺を確認したところ、今はなんとか冒険者や騎士達が持ちこたえているのが分かった。
とは言え、突破されるのは時間の問題だろう。
急がなければならないな。
「クレハ、大丈夫か?」
背中に掴まっているクレハに尋ねる。
「はい、大丈夫です……もう、魔力も回復しました」
「そうか……」
クレハの残りの魔力を確認してみる。
クレハの言う通り、全快とはいかないが、魔力はほとんど回復していた。
だが、やはり疲れているのだろう。
長い間、監禁されていたのだからな……
あまり負荷をかけさせるわけにはいかない。
「クレハ、次からは俺の魔力も使っていこうと思う」
「えっ……でも、そんなことをしたら」
それを聞いたクレハが心配そうな顔で俺を見つめた。
確かに俺は、複数人に強化魔法をかけているため、つねに魔力を消費し続けている。
残りの魔力量だって多いわけではない。
クレハはそれを心配しているのだろう。
しかし、
「時間がない。それにクレハに倒れられたら困るからな」
俺はそう言い、杖を構えた。
また、俺の言葉を聞いたクレハは静かに頷く。
「よし……それじゃ、次行くぞ」
「はい、分かりました」
俺はクレハの返事と同時に隠蔽魔法を解き、今いる木から別の木へと素早く飛び移った。
読んでくださり、ありがとうございました。




