夜明けの門7 天界の門
王様です。
いよいよ天界の門に向けて出発しました。
今度こそは渦潮を乗り越えて天国に行ってきます。
僕が朝一番に出発したのには理由がある。
それは陸風だ。
海と陸の温度差によって昼間は海から陸に向かって吹く風が、夜は陸から海に向かって吹く。
早朝だとまだ夜の影響を受けているのか陸からの陸風が吹いている。
本当は夜に浜出るのが陸風が強くていいのだが、さすがに真っ暗な夜中にうず潮を超える勇気は無い。
という事で朝の出発となった。
帆に風を受け離岸流にも乗った事で船は速度を増す。
向かってくる波を切り裂くように船は突き進んだ。
そして離岸流を抜け、うず潮が現れる海域の直前で船の進行を阻むかの様に大きな波が襲って来た。
その高さ5メートル。
目の前に突如2階建ての一軒家が現れたほどの高さ。
だがこの船なら乗り越えられるはず!
村の皆が一生懸命作った船だ。
壊れる訳が無い!
凄まじい勢いで真正面から波にぶつかる!
「い っ け ぇ ぇ ぇ い !」
勢いの乗った船は大波を乗り越え、宙を飛び跳ね、うず潮をも乗り越えた。
「やった! うず潮を乗り越えられたぞ!」
後は天界へと昇る門へと辿り着くだけだ。
二〇分後、光の差し込む場所に辿り着いた。
だが天界に昇る事も無く、ただ眩しい光が上空から射し込んでいるだけだった。
当たりを調べても何もない。
船を一ヶ月も掛けて作ってやって来たのに何も起こらないってどうなってるんだよ?
海中を覗いてみても海底さえ見えず何もない。
このままここにいても仕方ないので村に戻った方がいいのか悩み始めた所、突如「ガチャリ」鍵の開くような音がした。
そして今まで何も無かった海上の空間に亀裂が走る。
亀裂から眩い光が漏れると、まるでドアが開くかのように開き真っ暗な異界へと繋がっていた。
そしてそのドアから猫娘が現れた。
見た事の有る猫娘だ。
その猫娘は僕をこの世界に送った神様だ。
ただ、あの時とは明らかに様子が違う。
猫娘のコスプレはせずに作業着っぽい服を着ている。
まるで別人みたいな違和感。
「わざわざこんなとこまで呼び出してすまないね。その船で来たんだ。筏とカヌーの組み合わせか。随分と面白い形の船を作って来たんだね。キミの生きていた世界の船かな? その帆の素材はなんだろう? ゴムじゃ無いよな? この帆も見た事無いな。筏とカヌーの組み合わせで重量バランスが取れて転覆しない様になってるのか。面白い作りだね。この船なら海上のバリケードも余裕で乗り越えられた訳だ。うんうん」
一人ごとを言って頷いている神様に声を掛ける。
「神様ですよね?」
「そうだよ」
「喋り方が前と全然違うし、服も猫娘のコスプレ衣装じゃなくて普通の服みたいなのを着てるんですね」
「その辺りも話さないとね。君には色々と話したい事と謝りたい事が有ったから呼んだんだ」
猫の神様は僕に向かいすまなさそうな顔を向けた。




