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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第三章 にゃん娘と始める文明開化
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新しい住居2 小屋の再建

 天色がよろけただけで簡単に潰れてしまった僕らの小屋。

 鍋をひっくり返した僕が止めを刺したみたいな物だけど。

 燃えてしまった物は仕方ない。

 過ぎた事を言っても始まらない。

 早速新しい小屋の建設だ。


 今迄と同じ小屋を再建しつつ、もう一軒ちゃんとした住居を作ってみる事にした。

 なんで新しい小屋を作るかって?

 それは今の小屋ではたき火をするのが厳しいと分かったからさ。

 天井が低いのでたき火の火力を上げるのが怖かった。

 それに湯気が籠って逃げなかったって事は、煙の通り抜ける道も無いみたいだしな。

 この河原で冬場を乗り越える事を考えると、小屋の中でたき火をする事は必須だ。

 たき火無しで冬を乗り越える事は困難を極めるだろう。

 ならば早めにちゃんとした小屋の建設に取り掛かっておいた方が冬場に慌てる事も無い。

 それに天色がよろけて壁に寄りかかっただけで壊れる様な小屋は危なくて住める代物じゃない。


 新たな住居を作るのは大変な作業だ。

 ネット小説の世界みたいに土魔法を使って石造りの小屋がポンポン立てられればいいんだけど世の中そんなに甘くない。

 木工スキルを極めて一夜で小屋を新築するような事も無理だ。

 僕が神様に送られたこの世界では魔法やスキルなんて言う便利な物は使えない。

 僕らが加工できるのはいまだに木材だけだ。

 しかも切断する事以外はほぼ無理と言う条件が付く。

 木材を石斧で叩き切って長さを変える事は出来ても、のこぎりが無いので板に加工する事が出来ないのだ。

 銅の大工道具が有れば木から板への加工は何とかなると思うんだけど、いまだに銅のインゴットさえ生成できない様な僕には銅の大工道具を作る事はとてつもなく高いハードルだ。

 製鉄するには耐熱煉瓦で作った石造りの溶鉱炉が必要だ。

 燃料となる石炭も必要。

 火を手に入れたら鉄なんて簡単に作れると思ってたけど考えが甘かった。

 まあ、それを悩むのは今やる事では無い。

 今はたき火が出来る家を作る事が先決だ。


 さてと、作業を始めるか、

 まずは燃えてしまった小屋を片付ける。

 燃えカスの灰のみ回収して畑の肥料として撒いた、

 そう言えば畑を耕しただけで種を撒いていなかったな。

 とりあえず簡単そうな大豆の種とジャガイモの種芋でも撒いておくか。

 たしか枝豆の生えていたとこに大豆が残っている筈だ。

 ちょっと前まで大豆は食べられなかったけど、今なら鍋と火が有るので間違いなく主食となるだろう。

 冬場の保存食として、とてもいいと思う。


 畑にはジャガイモ以外にもサツマイモも植えたいな。

 サツマイモを栽培できれば冬ごもりの間の甘味として楽しめる。

 後でサツマイモも探してみよう。


 今は忙しいから畑作りなんてやってる暇は無いから小屋作りに専念だ。


 *


 いつもの川上の灌木地帯に行って枝を集める。

 そしていつも通りのビーバー風枝の小屋を作った。

 さすがに3回目ともなると枝の小屋を作るのに慣れて来たので、完成まで4時間位の作業だ。

 枝の隙間を草でふさぎ、雨が吹き込まない様に入り口を作り、雨水で床が濡れない様に床部分に盛り土をして、小屋の周りに排水溝も作った。

 すっかり元通りになった小屋。


「草と木のいい匂いがするにゃ」


 夕焼けは新しくなった小屋に大喜びだ。


「新しい小屋は気に入ったか?」

「うん! すごく気持ちいいにゃ。これからも時々壊して新しくするにゃ」

「おいおい、小屋は壊さなくてももう一つ、全く新しい作りの小屋を作るからそんな事するなよ」

「あたらしい小屋? それはどんな小屋になるにゃ?」

「まだ作ってないけど、たぶんすごい」

「すごいにゃか! 王様凄いにゃ!」


 僕が作ろうとしているのは縄文時代の竪穴式住居だ。

 これなら間違いなく小屋の中で安全にたき火をしてご飯を食べれる。

 昼ご飯を食べた後、月夜に竪穴式住居の作り方を確認する。


「えーっと、竪穴式住居の作り方なんだけどまずは穴を掘って、その穴に雨水が入らない様に盛り土をして、その盛り土の周りに排水溝を掘る。これが基礎工事。これであってるかな?」

「そうですね、それであってると思います。一つだけ言うのならば盛り土をしっかりしていれば排水溝は要らないですね。むしろ排水溝を作ると排水溝に貯まった水がちゃんと流れないと土を通して浸みて竪穴に水が入って来る原因になるので無い方がいいかもしれません」

「ほほう、そんな事も有るんだ」

「王様、竪穴式住居で穴を掘る意味を知っていますか?」

「竪穴を掘る意味か? うーん、なんでなんだろうな? よくよく考えてみると穴を掘ると部屋の中に湿気が溜まるし、いい事はこれ一つと言って無い様な気がするんだけど、なんでなんだろう? …………って、あっ! わかった! 天井までの高さを高くして、小屋の中でたき火をした時に火の粉が飛び移らないようにする為だろ?」

「確かにそれも有るんですが、建築学的な意味合いではどうでしょうか? この言い方だと質問が漠然とし過ぎますね。普通の家はどんな要素で出来てるか解りますか?」

「普通の家って現代日本の家の事か?」

「はい。物凄く大ざっぱでいいんですが、家を簡単に建築パーツとして分類するとどう分けられると思います?」

「柱の骨組みがあって、屋根が有って、壁が有って、入り口と窓がある感じかな?」

「はい。そんな感じですね。それでですね、壁ってどうやって作ればいいと思いますか?」

「壁か? 普通は板と柱で作るよな? 柱で家の骨組みを作って、そこに板を打ち付ける様な感じかな?」

「そうですね」

「でも板って僕達には作れないからな。あれは石のナイフじゃ作れない」

「板を作るのはのこぎりが普及するまでは、木にくさびを打ち込んで割ったものを刃物で綺麗に削る感じで作っていたから非常に難易度の高い作業でしたね。当然出来た板もかなりの高級品として取引されていました」

「言われてみると今の僕たちも、のこぎりが無いから確かに板が作れないでいるな。木を切断するのは石斧で出来ても、板に加工するのはのこぎりが無いからかなり面倒だな」

「のこぎりは高価な物でした。当然板も高価でした。そこで板を使わないで壁を作る工法の選択肢が出てきます。一つは屋根と同じく藁葺(わらぶき)、つまり(わら)の束で壁を作る工法。これは隙間風が完全に防げないので風にはあまり強くありません」

「藁だからな。逆に藁で壁が作れることにビックリだよ」

「しっかりとした骨組みを作り、そこに屋根に藁を(ふく)のと同じ様に藁を固定して壁を作るのです」

「確かに風に弱そうな壁だな」

「風に弱い事は弱いのですが骨組みにしっかりと括り付ければ、台風クラスの強い風でない限り飛ばされる事は有りません」

「そんなに丈夫な物なのかな? 草で壁とか信じられないんだけど?」

「藁葺屋根が藁で大丈夫なんだから、壁が藁でも問題無いですよ」

「そう言われるとそうかも知れないな」

「藁葺の代わりに土を使って壁を作る方法が有ります。塗り壁工法ですね。雨には弱いですが風には強いです」

「それがさっき言っていたもう一つの選択肢か?」

「いいえ。それはあくまで藁の壁の代わりに土の壁も使えると言う話で、もう一つの選択肢は壁自体を作らない工法です」

「壁を作らないで家を建てる工法だと! そんな物が有るのか?」

「王様も知ってる『竪穴式住居』ですよ。竪穴式住居は穴を掘って穴の土の壁を家の壁として利用する工法です。土なので風を通す事も無く、地面なので風に飛ばされる事も無い非常に丈夫な壁となります」

「それで竪穴式住居は穴を掘るのか! やっと竪穴の意味がわかったぞ!」

「ただ一つ欠点を上げるとなると、半地下構造となるので窓が作れなかったり、家の中が多少湿気って不快な感じになります」

「俺は是非とも竪穴式住居を作ってみたくなった」

「湿気で不快なのに……ですか? わたしが散々説明したのに、王様は頭がおかしいのですか?」


 いつもの月夜の罵りがきた!

 今日の月夜は優しすぎてなんか様子がおかしかったよな?

 頭でも打ったんじゃないかと思ったよ。

 いつも通りの月夜で安心した。

 俺は月夜になんで竪穴式住居を作りたいかを説明する。


「理由か? 聞いて怒るなよ?」

「理由によりますね」

「確かに竪穴式住居は不快かもしれない。板張りの床と壁のある家と比べたらあんまりいい物じゃないかもしれない。でもさ将来的に板張りの普通の木の家を作れるようになったとするだろ? そうなったら竪穴式住居を作ったり、住んだりする気が起こるか? ならないよな? 今だからこそ竪穴式住居に住めるんじゃないか? 今しか住めないと思うんだ。完全に僕の趣味なんだけど、月夜も作るのを手伝ってくれないか?」

「クリエーターの王様らしい考えですね」

「そうかな?」

「少しでも多くの物を作りたい、使いたい、そんな意思が感じ取れます」

「ふふふ、そうかそうか」


 今日は珍しく月夜に手放しで褒めて貰えて気分が良かった。

 こんな月夜なら好きになれるんだがなー。

 竪穴式住居に関しては調べる時間が無かったので間違えてたらごめんなさい。

 江戸時代の農家の家の作りを調べるのが手一杯で、竪穴式まで詳しく調べてる時間が有りませんでした。

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