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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第三章 にゃん娘と始める文明開化
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縄文料理10:イノシシの解体

 結局イノシシ肉は食べられるだけ焼肉で食べて、それでも食べられない物は肉汁にする事にした。

 肉と塩水とキャベツだけを入れたシンプルな肉汁。

 本当は長ネギや玉ねぎを入れた方が美味しいんだけど、僕らは猫の血を引いてるみたいなので中毒を起こしたら命に係わるので入れなかった。

 ここのところ肉ばっかり食べていた僕は正直肉を食べ飽きていたけど、夕焼けと天色は物凄く美味しそうに食べていた。

 

「はむっ! はむっ! この肉汁というのもおいしいにゃ!」

「うまっ! あちっ! 魚汁や焼肉とは違った味だよな。焼肉と違ってガッツリ来る味じゃないがうまい!」

「お肉柔らかくておいしいにゃね」

「おう! 肉が柔らかい上に、野菜と一緒に煮込んだせいか味が混じって優しい美味しさだな」


 天色と夕焼けはグルメリポーターみたいに食べた感想を熱く語りながら鍋を空にした。

 肉が柔らかかったのは手に入れたナイフで肉を薄切りにしたからだ。

 スーパーの豚肉のスライスって程までは薄切りに出来なかったが、生姜焼き肉ぐらいの厚み迄薄く切ったので煮込む事でかなり柔らかくなった。

 たぶん石のナイフではここまでの薄切りは出来なかったはずだ。

 鉄のナイフのありがたみを感じる。

 満腹になった夕焼けと天色はパンパンに膨れ上がったお腹を見せながら仰向けに転がってる。

 月夜も夕焼けほどじゃないが肉汁は物珍しさからか結構食べてたみたいだ。

 僕が川原でイノシシに襲われてから一日。

 さすがに冷蔵庫の無い状態でこれ以上イノシシ肉を食べるのは危険だろう。

 結構な数のハエがイノシシだった物に集ってる。

 さすがに食用に出来る時期は超えてると思う。


 僕は食用を諦め加工素材とする為に鉄のナイフを使いイノシシの解体を始めた。

 まずは皮を剥ぐ。

 これは毛皮にする予定。

 夕焼けたちに以前聞いた話によると、この川原は冬になると雪が降るらしい。

 冬に裸みたいな格好で過ごすのは無理だ。

 そこで防寒対策として冬用の服を何とか作りたい。

 最低限木綿の貫頭衣と毛皮の服さえ有れば、火と小屋を手に入れた僕等なら雪の降る中でも生き延びる事は出来るだろう。

 イノシシの毛皮とはいかなくとも、ウサギの毛皮みたいなものを手に入れれば毛皮の服を作るのはどうにかなると思う。

 そして毛皮に次いで骨を回収だ。

 使い道は考えていないが何かの素材になるはずだ。

 鍋で茹でて肉を除去し骨だけにする予定。

 釣り針とか作れるかな?

 そうしたら海の魚なんかも食べれるようになるかもな。

 僕は鉄のナイフの刃がこぼれないように慎重に骨から肉をこそぎ落す。

 さすが大イノシシだけあって大小問わずかなりの数の骨が取れた。

 まだ骨に肉がかなり残っているが、綺麗に仕上げるのは今度にしよう。

 それよりも先にやらないといけない事がある。

 

 この村の造成プランの再検討だ。

 今までは外敵が居ない事を前提に村づくりをして来た。

 具体的に言ってしまえば小屋と畑と排水溝だけのノーガード戦法。

 敵が来たら確実にヤバい。

 イノシシがまた来たら確実に畑を荒らされる。

 収穫前の時期だったら目も当てられない。


 イノシシが居るなら当然野犬や狼もいるだろうし、襲ってくるかもしれない。

 それに物凄く気掛かりな点もある。

 イノシシに刺さっていたナイフだ。

 イノシシの脇腹に深くナイフが突き刺さっていたというた事実。


 間違いなく『人 間 と 戦 闘 が 行 わ れ た』証拠。

 つまりは『僕 ら 以 外 に 人 間 が い る』。


 それが言葉が通じる人間なのか、言葉の通じない限りなく動物に近いゴリラみたいな獣人なのかはわからない。

 どちらにしてもナイフを持った人間だ。

 この土地を奪う為に、僕らを殺しに来るかもしれない。

 警戒するに越した事は無い。

 外敵の攻撃から安心して住む為に村の周りを柵で囲む事にしよう。

 とりあえず村と畑を取り囲む防御柵だけでも早めに作りたい。

 ただ柵で囲んでも僕が作る物だ。

 かなり荒い目の粗い柵で、柵の隙間から犬や狼が抜けてくる未来しか見えない。

 そこは何とか対策をしないといけないな。

 対策と言っても柵の目が荒くならないように作るしか無いんだけど。


 問題は人間だ。

 人間の場合は柵を壊して入って来るだろうからどんなに柵を細かく作ってもどうにもならないな。

 使う素材は木しか無いので柵に火を着けられたらお終いだ。

 人間から村を守るには堀や石垣みたいなものが絶対に必要だと思う。

 でもそんな物を作るには時間がかかり過ぎる。

 とりあえず今は人間の事を考えずにイノシシや野犬が入って来ないようにする事だけを考えよう。

 僕はみんなを連れて丘の上を歩き、柵を作る場所を頭の中に入れる。

 

「とりあえず、今ある畑が囲めるような柵が作れればいいかな?」


 ちなみに畑は小学校のグランド1面分ぐらいの大きさだ。

 すると月夜が途端に渋い顔をする。


「王様、村はそんなに小さくていいんですか?」

「僕ら四人が住むだけの村だからこんなもんでいいんじゃないかな?」

「そんなに狭い土地ですと将来的に人数が増えたら小屋や畑が足りなくなってまた柵を作り直すことになりますよ? 土地は有り余るほどあるんですからもっと広い村にした方がいいんじゃないですか?」

「将来的には人数が増えるかもしれないけど、まずは柵を早急に作り上げて僕らが安心して住めるようになるのが先だからな。確かに最初から村の発展を考えて広い土地を囲む柵を作った方が効率はいいと思う。でも先ずは効率よりもこの時点の安全を取らないと」

「なるほど、確かにそれも一理ありますね」

「それにさ、人数が増えるって事は外から新しい人でもやって来ない限り僕たちが子供を産むって事だろ? 前にも話したけど今の不安定な状態じゃ子供なんて育てられる訳も無いから、今現在は子供を作りたくない。それにさ、これも前に言った気がするけどこの村で男は僕だけだろ? 月夜はこんな僕が旦那でも構わないのか?」


 自分が言った言葉の意味がわかり、途端に顔を真っ赤にする月夜。

 月夜が自分で言った言葉がかなり遠回しなプロポーズと気づいたようだ。

 それで恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしたのだった。


「わたしは王様のお嫁さんになりたいにゃ」

「俺も旦那は王様がいいぞ」


 二人の言葉を聞いて更に顔を赤くする月夜。

 真っ白な顔が真っ赤になったので夕焼けが不思議そうにしてる。


「どうしたんにゃ? なんで月夜の顔が真っ赤にゃの?」


 それを聞いて唇をわなわなと震わせる月夜。


「ばっ! バカ! 王様のバカ!」


 僕に向かって強烈なビンタ!

 なんで僕が殴られるんだ?……って、僕が余計な事言ったからか。

 月夜は涙目になり川原の方へと逃げるように走っていった。

 余計な事言っちゃったよ。

 黙っとけばよかった。

 反省。

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