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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第三章 にゃん娘と始める文明開化
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縄文料理6:畑

 火打石を手に入れた事で食べられるものが増え食糧事情は大幅に改善した。

 以前であれば雨が降れば主食である魚が取れずに何も食べずに数日過ごさなければならなかったが、今は山の幸を中心にした食事で飢えをしのぐことが出来る。

 飢えを克服できたことは大進歩である。

 だがまだ食糧事情は完璧だとは言えない。

 なぜならば今は自然の恵みを採取しているだけ。

 川の恵み、山の恵み、海の恵みを食べ尽くした時、限界が訪れる。

 今は消費しているだけなので、いつかは資源が底をつく。

 資源を食い尽くしてからではもう遅い。

 やはり資源採取中心の縄文時代の生活から、資源を自ら育てる育成中心の弥生時代の生活へと進化させたい。

 そうなると、する事は一つだ。


『栽培』


 畑を作り野菜、果物、穀物を育て増やす事が今の僕達には必要だ。

 幸い僕らの住むこの丘の上には平地が広がっている。

 ここを大きな畑に変えてしまおう。

 畑に必要なものと言えば水だ。

 水がなければ満足に植物は育たない。

 どこからか水を引いてこないと畑を作ることは無理である。

 だが幸運にもこの地には川が流れている。

 その川から水を汲み、畑に散布すれば十分に作物は育つ。

 僕はにゃん娘たちを集め畑を作ることにした。


「みんな悪い。ちょっと手伝ってくれ」

「今日は何をするにゃ?」

「今日から畑を作る」

「畑? なにそれおいしいのかにゃ?」

「うまいなら俺も食うぞっ!」


 新食糧と勘違いした二人はぐいぐいと顔を寄せてくる。

 ちょっと怖い。


「食べれない食べれない。畑は食い物じゃないぞ」

「なーんだ、つまんないな」

「つまんないにゃ」

「畑は食べれないけど、野菜とか芋とか作って食べれるんだぞ」

「野菜とか芋なら林で採ってくればいいにゃ」

「今はな。今はたくさん採れるから林で採ってくればいい。でも全部採って食べちゃったらどうなる?」

「どうなるって、無くなるにゃ」

「そう、無くなるんだよ。そうなったらもう食べれなくなるだろ? キャベツを入れた鍋も二度と作れなくなるんだぞ」

 鍋が食べれなくなることに気が付いた夕焼けは突然泣き出した。


「いやにゃ! そんなのいやにゃ! キャベツの入った鍋が食べたいにゃ!」

「僕も鍋を食べれなくなるのは嫌だ。だから僕は畑を作ってたべものを増やしたいんだ」

「ふやせるにゃか!?」

「そうだぞ。畑を作って野菜や果物、芋を増やして食べるんだ。増やした分を食べるなら食べ物は全然減らないから好きなだけ食べれる」

「ふやすにゃ! ふやすにゃ! 畑を作るにゃ」

「王様、俺も畑を作るぞっ!」

「そうか手伝ってくれるか! ありがとう」


 こうして僕たちは畑づくりを始めた。


 *


「王様、畑ってどうやって作るんだ?」

「草原に生えてる草をむしって、引っこ抜いて、石も拾って、クワで土を耕してふっかふかの土にするんだ」

「草をむしるのと石を集めるのは解るんだけど、クワってなんだ?」

「クワって言うのは……あっ!」

「どうした? 王様」

「クワは無いや。うーん。どうしよ」


 クワなんて便利な物はここにはない。

 確かにクワが有れば土を耕やすのは楽だ。

 でもクワを作ろうとすると大変だぞ。

 クワの先端の金属で先端部分はモロ刃物だ。

 金属刃を作るとなると鉄から生成しなければならない。

 ナイフや片手剣を作れるレベルの生産技術が無いと作れない。

 そんな物を今すぐ作れるわけがない。

 ここはとりあえず先延ばしにして出来る事からやる事にしよう。


「悪いけど、さっき言った草むしりと石拾いから始めててくれ。クワはその間に何とかする」

「おう! 石拾いは俺に任せろ!」

「草むしりはまかせるにゃ!」

「あと、拾った石とか抜いた草は後で何かに使うかもしてないから纏めて置いてくれな」

「わかったにゃ」


 二人は小屋の近くから作業を始めた。

 さてと、二人の作業が終わるまでにクワをどうにかしないと。

 時間がないので月夜に聞いてみた。


「クワなんだけど、どうやって作れ…」

「またですか!」

「ひっ!」


 もの凄い形相と剣幕で言い返してくる月夜に思わずたじろいでしまった。


「なんで自分で物を考えずにすぐに私を頼ってくるんです!」

「いや考えたよ。でもさ時間がなかったから……」

「時間がないなら尚更自分で考えないとダメでしょ。ダメなんです。もう残された時間は少ないんです! このまま何もしないでいたら私たち……」

「なんだよ? 残された時間て?」

「なっなんでもないです! 今回も時間の無駄だから教えますよ! で、今回は何を教えればいいんです!?」

「な、なんでそんなに怒ってるんだよ?」

「怒ってなんかいません! で、何を聞きたいんです?」

「クワの事を聞きに来たんだ。これから畑を作くろうと思うんだけど、畑を耕すのにクワが必要なんだ。でもクワの先端て鉄の刃だろ? 今の僕らには鉄の刃物を作る技術は無い。そこでいいアイデアが無いかと思って聞きに来たんだ」

「クワって何をするための物か解ります?」

「畑を耕すんだろ?」

「その畑を耕すってどういう意味か解りますか?」

「作物の根が張りやすくなるように土をひっくり返して土に空気を含ませるんだろ?」

「解ってるじゃないですか。なら土が掘れれば何でもいいんですよ。別にクワの形をする必要は無いんです。杭みたいなのでも構いませんし、石を手に持って掘ってもいいんです」

「石を手に持って屈みこんで畑を耕したら腰が痛くなるだろ」

「それならば、屈みこまなくても済むように棒に石をくくり付ければいいじゃないですか」

「なるほど」


 僕は木の棒に鋭い切り口の石をツタで括り付けて簡易クワを作った。

 見た目はなんて言うかなー、よく高尾山の麓とかで売ってるT字型の杖有るだろ?

 ピッケルって言うんだっけ?

 そんなのに似てる杖、そのT字になった持ち手の部分が石になったのが今回作った杖。

 そんな感じな簡易クワを作った。


 振りかぶって振り下ろしてみるとサクッと地面に刺さる。

 そして引き起こすと地面が持ち上がり地面が崩れた。

 上手くいったぞ。

 さすがに横に広い刃じゃないので作業効率は悪いが素手よりはマシなはず。

 これなら、クワの代わりになりそうだ。

 僕は簡易クワを三本作るとにゃん娘の所に持って行く。

 

「草と石取れたか?」

「うん、とれたにゃ」


 僕が簡易クワを作っている間に夕焼けと天色は学校の校庭位の広さを整地していた。

 夕焼けの横には人の背丈ほどの石の山と、人の背丈二つ分の雑草の山が出来ていた。

 まさかあの短時間でこんなに整地を進めてるとは。

 正直僕は驚いた。


「凄いな。あの時間でここまでやってたのか」

「夕焼けとどっちが早く終わるか勝負してたからな」

「勝負は夕焼けちゃんの勝ちだったにゃ」

「俺の勝ちだろ!?」

「にゃにー!」

「なんだとー! よし! もう一回勝負だ! 今度はここから歩いて一〇〇〇歩までの距離の勝負なっ!」

「いいにゃ! 今度も夕焼けちゃんが圧勝するにゃ!」

「おいおい……勝負なんてするなよ。もう石拾いと草取りはいいから、これ使って石を取ったところを耕してくれ」

「これなに?」

「これはな、クワだ」

「クワ?」

「どうやって使うんだ?」


 僕は実演して見せる。

 クワなんて使ったことないけど、まあなんとかなるだろう。


「こうさ、こうやって振り上げてストンと地面に叩きつけるとサクッと地面に刺さるだろ?」

「うんうん!」

「そうしたら刺さったままグイッと引っ張ると、ほら、堅くなった地面がひっくる返るんだ」

「すごいにゃ!」

「おうう! すげー!」

「こうやって土を何度もひっくり返すとどんどん土が柔らかくなって植物が育ちやすくなるんだ」

「やらせてやらせてやらせてにゃー」

「いいよ。ただ、危ないから他の人に当たらない様に周りに気を付けるんだぞ」

「わかったにゃ!」


 簡易クワを手に入れた夕焼けは新しいおもちゃを手にした子供の様に嬉々として畑を耕し始めた。

 それを見た天色も同じように耕し始める。


「今度はこれで勝負だなっ!」

「いいにゃ! こんどもわたしが勝つにゃ!」

「おいおい……」


 またしても競争を始めるにゃん娘達を横目に僕も畑を耕し始めた。

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