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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第三章 にゃん娘と始める文明開化
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土器作り8 粘土取り

 崖にはすぐに着いた。


「よし! ここだ」

「ここかにゃー。なにすればいいかにゃ?」

「ここで掘り出した土を村に持って帰ってもらいたい」

「このヤシの実の殻に土を詰めればいいんだな?」

「そう。それに掘り出した土を詰めて欲しい」

「わかったにゃ。で、どれをもってかえるにゃ?」

「それは……んー……これから」

「これからかにゃ」


 僕は崖を見つめる。

 この崖の地層のどれを掘ればいいんだろうか?

 幸いなことに崖は様々な地層が露出していた。

 崖の上の部分を除き草で覆われてないので地層の判別は容易たやすい。

 崖の根元を見ると大小様々な石や岩が転がっていた。

 これは定期的に崩落が起こっている証拠だ。

 そのせいで草が生えても崩落で寝こそき取り払われている内に草が生えなくなったんだろう。

 この層のどこを掘ればいいんだろうか?

 僕が崖を見つめながら暫く考え込んでいると、月夜が声を掛けてきた。


「どの層が粘土の層か解りますか?」


 僕は改めて粘土の層を見つめる。

 地層と言うだけ有って、層(ごと)の土の内容が違っていた。

 石の層、砂の層、土の層など層ごとに違う。


「地層って今まで意識してみた事無いんだけど、層毎に結構と違う物なんだな」

「ですね」

「石の層、砂利の層、そして土の層が有るね」

「地層は長年の堆積物の集大成ですからね。その時々にこの地の環境は変わり火山岩が降り注ぐ場所で有ったり、河原で有ったり、川の底で有ったり、海の底であったのかもしれません」


「それで層毎に違うんだな。僕が昔読んだ本でそんな事を書いてあったのを思い出したよ」

「そうですよ。王様は思い出さないだけで結構色々な事を知ってるはずなんです」

「これは堆積岩の層だな。これなんか化石が出て来てもおかしくなさそうだ。ちょっと掘って……」

「今は何をすべきですか? 化石掘りじゃないですよ」

「粘土取りだったな。ごめん」

「今日取りに来た粘土はどの層から取れるか解りますか?」

「この頭より少し上にある石の混じっていない土の層でいいんだよな?」

「そうです。それで正解です」

「でも、この土はこの層の上にある地層の重さで押し固められてしまって一枚岩みたいになってるんだけど、本当にこれでいいの? 粘土って言うとネバネバしたものしかイメージ出来ないんだけど?」

「今は水分が抜けてしまって固まっていますが、細かく砕いて水を含ませれば良質の粘土になるはずです。大丈夫ですよ」

「そうか。よし! 作業始めるぞ! 夕焼け、天色、手伝って欲しい。この崖のこの色の部分だけを小石か何かで掘り出して持ってきたヤシの実の殻に詰めて欲しいんだ」

「わかったにゃ」

「まかせろ」

「この色の層以外からは掘ってはダメだからね。いいね?」


 二人は物凄い勢いで地層を掘り始めた。

 二人が頑張ってくれたおかげで持ってきたヤシの実の殻はあっという間に粘土で満たされて一杯になった。


 *


 村に粘土を持ち帰った僕は早速鍋を作る作業に取り掛かる事にした。


「この粘土を水に漬ければいいの?」

「まずはその前に粘土の精製ですね」

「精製?」

「要するに粘土をザルでふるいに掛ける事です。その粘土の塊を石で砕いて細かくして、粉状にして、それをふるいに掛け大きな塊を取り去る作業です」

「なるほど。でもここにザルなんてないよ?」

「なら、何をするべきか解りますよね?」

「また作るところからか」

「はい」

「ザルってツタで作ればいいのかな?」

「本来なら目の細かいふるいを作れる竹とかの方がいいでしょうけど、粘土から大きな塊を除くぐらいでしたらツタで作っていいと思います」

「じゃあ、ザルを作るのを手伝ってくれないかな?」

「私はこれから別の作業をします」

「じゃあ夕焼けと天色に手伝って貰うかな。夕焼け、天色ちょっと手伝ってくれー」

「はいにゃ」

「おう!」

「悪いんだがこれからザルを作るから手伝ってくれないか?」

「あ、王様。夕焼けさんと天色さんには別の作業をして貰おうと思っています。よろしいですか?」

「と……いう事だ。ザル作りの作業は僕一人でするから二人は月夜の手伝いをしてくれ」

「王様と仕事が出来ないのは残念にゃ」


 朝の漁をして焼き魚を食べると、月夜たちはどこかへと出掛けて行った。

 僕も一人で作業を始める。

 一人寂しく孤独な作業。

 そう言えばここの村に来て一人になったのは初めてかもしれないな。

 いつもそばには騒がしい夕焼けが居て、頼れる天色が居て、博識な月夜がそばにいる生活だった。

 日本に居たころのアパートの四畳半で孤独に生活する僕とはかなり違う。

 ボッチでは無い分、この生活もそんなに悪いものじゃないな。

 そんな事を思いながら作業を始めていた。

 ツタで物を作る作業は何度もやったから慣れたものだ。

 サクサクと作業は進む。


「ツタの編み物は結構やって慣れてきたな。もう目をつぶってても作れるな」


 嘘だけど。

 ちょっと見栄張りました。

 そこまでは作るのに慣れてないけど最初の頃と比べるとかなり手慣れた感じになって来たのは嘘じゃないよ。

 ツタを編んでザルを作る。

 ザルは前に作った背負い籠とほぼ同じ作りだから考える事も無い。

 あえて違いを言うならば、網の目の細かさ位。

 今回のは粘土をふるいに掛けるのが目的だから、出来る限り目を細かくしてみた。

 それでも市販品の園芸用のふるいと比べればまだまだ荒いが、小石を取り除くぐらいなら十分使える物が出来上がった。

 制作所要時間三〇分。

 もちろん材料集めも含めての時間だ。

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