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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第三章 にゃん娘と始める文明開化
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土器作り3 鍋と土鍋

 僕が土器を作り始めると、海岸でのヤシの殻を使った器作りから戻って来た夕焼けが興味津々と言った感じで僕の作業を覗き込んでくる。

 

「ねえねえ王様、何作ってるの?」

「これは鍋と言う物を作ってるんだ」

「鍋? それ美味しいのかにゃ?」

「鍋自体は食べれないけど、これが出来れば魚とか野菜を一緒に煮て鍋と言う食べ物が作れるんだぞ」

「鍋? それ美味しいのかにゃ?」

「美味しいよ」

「食べたいにゃ!」


 夕焼けは毎度の如くよだれを垂らし始めた。

 新しい食べ物を聞くと大抵このパターンである。


「鍋が出来たらお腹一杯になるまで食べさせてあげるからな」

「わーい、やったー! 王様、早く鍋作るにゃ! なんか手伝おうかにゃ?」

「まだ考えながら作ってるから、手伝って貰えるようになるのはまだ先だな」

「わかったにゃ。じゃあ、ここで見てるにゃ」


 そう言うと夕焼けは僕の横にちょこんと座って作業を見始めた。

 今度は夕焼けが僕の横に座っているのに気がついた天色がやって来た。

 

「王様、何やってるんだ?」

 

 僕が答えるよりも前に、夕焼けが答えた。

 夕焼けは少し胸を張り、今聞いたばかりの事をさも前から知ってるかの事のように得意気に説明し始めた。

 その態度は少し偉そうにも見える。


「これは鍋と言う物にゃ」

「鍋か。それは何なんだ?」

「とってもおいしい物にゃ」

「食べられるのか? この泥んこが」

「そうにゃ。おいしいにゃ」

「王様すげー! 泥んこをねてるだけで、食べられる様にするのかー! すげー!!!」

「食べれない。食べれない」

「えー! 食べられないのかにゃ!? さっき鍋は美味しいって言ったのに!」

「あー、ごめん。今作ってるこれは鍋で、さっき言ったのも食べられる鍋で……ちょっとややこしいな。ごめん」

「なんだか良くわからないけど食べられるんだな。それなら問題ない」


 そう言うと天色は僕の横にドカッと座った。

 土器作りの野次馬が二人に増えた。


 *


 少し硬めにねあげた泥の塊で、鍋を作る。

 鍋と言っても素人が作る物だから土鍋の様なきちんとした鍋ではなく、植木鉢やバケツに近い形状をイメージして貰えば解ると思う。

 直径二〇センチメートル、高さ二〇センチメートルの鍋厚み二センチメートル。

 そんな鍋を作り上げた。

 いきなり縄文式土器のような大きなものを作るのは難易度が高すぎるので、まずはラーメン鍋サイズから挑戦だ。


「よし、ひとまずはこれで完成だよ」

「わーい!!」

「やったな!!」


 僕の作り上げた鍋を見て大喜びの夕焼けと天色。

 

「これを食えるのか? こんな泥で作ったものを食べられるのか?」

「お、美味しいのかにゃ!」

「いや、この鍋は食べれないよ」

「食べられないのかにゃ!」

「それに、このままじゃ食べれないんだ」

「ダメなのかにゃ?」

「だめだ。このまま鍋に水を入れたらすぐに泥んこに戻ってしまう。だから泥に戻らないようにこれを火で焼いて固めるんだ」

「これを焼くのかにゃ?」

「焼いて燃えないのか?」

「泥だから燃えないさ」

「ふーん。じゃあ王様すぐに焼いてよ」

「よし焼こう。とは言っても、僕はこの鍋をいくつか作りたいから、天色と夕焼けに頼みたい事が有るんだ。ちょっと手伝ってくれるかな?」

「いいにゃ!」

「じゃあ、お願い。この鍋を焼くための木の枝集めてきて欲しいんだ」

「解ったにゃ」

「どこに行けば木の枝が取れるんだ?」

「前に小屋を作る時に上流の河原に行ったの覚えてるかな? あの広場で枝を集めて来て欲しいんだ。鍋を焼くには結構量が要ると思うから多めに取って来て欲しい」

「わかったにゃ。いってくるにゃ」

「俺達に任せろ」


 そう言うと二人は意気揚々と川の上流へと向かっていった。


 *


 僕が鍋を更に二個ほど作り上げていると二人が戻ってきた。

 日は既に落ちかけ空は赤みを帯びていた。

 

「木の枝を取って来たぞ」

「ありがとう……て、うわ! なにその量! 小屋と同じぐらい、いや小屋六軒分ぐらい有るじゃないか!」

「たくさんたくさん鍋が作れるように、たくさんたくさん木の枝を取って来たにゃ!」

「沢山て……ちょっと多過ぎじゃないか?」

「ダメにゃ?」

「ダメじゃないけど……まあ、鍋で何か煮る時にも使えるから、いいか。ありがとう」

「どういたしましてにゃ」


 小屋の横に山の様な木の枝の山が積みあがった。

 時々ニュースで見た、家の横に突然建設残土の山が出来る事件みたいな感じだよ。


「じゃ、枝を取って来てもらった事だし、鍋を焼いてみるかな」

「頑張るにゃ! 王様」

「ああ、まかしとけ!」


 そう言ったものの、焼きがまが無いのにどうやって鍋を焼けばいいんだろう?

 普通はオーブンみたいなのに入れて焼くんだよな?

 でも、そんな物を作るにはレンガが要るから今は無理だな。

 じゃあ、どうしよ?

 とりあえず鍋が焼ければいいんだから多少焦げても構わないか。

 直接火の中に放り込んでみるかな?

 よし!

 枝の小山を積んで、その中に土器を入れて直接焼いてみよう。

 

「よし、小屋の四分の一ぐらいの高さの枝の小山を作ってくれないかな? あ、小屋と枝の大山に火が移るとかなりまずい事になるから、河原に運んで作って」

「任せろ」

「わかったにゃ」

 

 天色は枝の大山から片手で軽々と枝を取った。

 片手で取っただけなのに、ゴミ出しに使うポリ袋六袋分ぐらいの結構な量だ。

 

「こんなもんでいいかな?」

「それで十分。それを河原に積み上げて欲しいんだ」

「わかった」


 胸を叩きながら言うと、天色は河原へと降りる坂を下りて行った。


「夕焼けは僕と一緒に鍋を運ぶのを手伝って欲しいんだ」

「わかったにゃ」

「まだ出来たてで柔らかいから気を付けて運んでくれな」

「まかせるにゃ」


 夕焼けと鍋を運んで河原に降りると、木の枝で小山が積みあがっていた。

 胸の高さぐらいまである小枝の山だ。

 思ったよりも枝の量が多い感じだ。

 

「これをどうするんだ?」

「この枝の山の中にこの鍋を入れる」

「入れるのか!」

「入れるんだ」

「それからそれから?」

「この枝に火をつける」

「鍋が燃えちゃうにゃ」


 夕焼けが鍋の心配をしていると、天色が胸を張り答える。


「何言ってるんだよ。夕焼け。魚と一緒で鍋も焼いた方が美味しくなるんだぞ」

「なるほど! あったまいいにゃー」

「どうだい夕焼け? 俺の事を見直したか? 俺は力だけじゃないぞ」

「天色姉さん、さすがだにゃ」


 色々とツッコミどころ満載の天色の答えだったけど、わざわざ突っ込む必要もないので僕は触らず流しておいた。

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