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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石の山10 ホームストレッチ

 ここまでは夕焼けに木の上に登ってもらって草原を目指して来たんだけど、この先は南方に一面に草原が広がっている上に木なんて物は生えてない。

 目標となる村の小屋も小さくて当然見えない。

 このまま夕焼けの案内で進んでも大丈夫なのか夕焼けに聞いてみた。


「このまま進んで村に帰れるのか?」

「臭いを嗅いで進んでるから大丈夫にゃ」

「臭いって、こんな土砂降りの後でも解るのか?」

「わたしにまかせるにゃ!」


 この草原は水はけが悪いと言うか水が流れる先が無いので、歩くと足のくるぶしの辺りまで水が溜まってる。

 こんな湿地というか池の様な所で匂いが残っているのかが甚だ疑問だ。


「こんなびしょ濡れの沼みたいな所で匂いが残ってるものなのか?」

「注意深く臭いを嗅ぐと、地面に臭いが残っているにゃ」

「そうなのか!?」


 僕は試しに臭いを嗅いでみるが、青臭い草と土臭い臭いしかしない。


「本当に臭いが残ってるのか?」

「大丈夫にゃ、任せるにゃ!」


 いくら鼻のいい夕焼けでも臭いを辿って村に帰るのは無理そうな気がしたが、かといって他の方法も思いつかないので夕焼けの嗅覚に賭けてみる事にした。

 僕らは濡れて湿地の様になった草原を歩き村を目指す。

 最初は胸の辺りまで有った草は徐々に背が低くなり芝の様な物に変わった。

 芝は全て水の中に沈み一面水たまりの水面が広がる。

 水たまりには青空が映りこんで上も下も真っ青の空の中を歩いてるように錯覚を起こす。

 とても幻想的な雰囲気だ。

 そんな草原の中を進んでるとゴマ粒の様な黒い物が見えた。


「小屋にゃ! 帰って来たにゃ!」


 夕焼けは四つん這いになって村に向かって水しぶきを上げながら物凄いスピードで走り去って行った。

 僕らも早歩きで村を目指す。

 もうすぐ村だ!

 火打石を手に入れて戻って来たぞ!

 僕も夕焼けを追いかけるように走り出す。

 全然追いつけなかったけどな。


 *


 村に戻るとしょぼくれた夕焼けが待っていた。


「小屋が壊れているにゃ」


 見ると、小屋の入り口が崩れて枝で塞がれていた。

 きっと昨日の豪雨と風で崩れたんだろう。


「まいったな……こりゃ、修理しないと。疲れて帰って来たのに、修理が待ってるとは……」

「入り口がめちゃくちゃに壊れてるな。こりゃ中に入れない」

「昨日の雨と風のせいだけですかね?」


 すると鼻をひくつかせた夕焼けが言った。


「なんか変な臭いがするにゃ」

「変な臭い?」

「うん。小屋の中から誰か知らない人の臭いがする」

「いや、さすがにそれは無いだろう。ここは動物や鳥さえ住んでないんだから気のせいだよ」

「でも、来て! こっち! こっちからも臭いがするにゃ!」


 夕焼けは犬の様に四つん這いになって匂いを慎重に追い始める。

 夕焼けは階段を降りて河原に降り立ち河原へと向かった。

 そして河原の中に数歩進んだ時点で足を止めた。


「ダメにゃ……ここまでは辿れたんだけど、昨日の大雨で川底の土がすべて流されてるから解らなくなったにゃ」


 夕焼けが言う知らない人の匂いは川の中で消えていた。

 対岸に渡ってみるがどこも臭いは残っていない。


「知らない人って言うのは少し気になるが、本当に人ならまた来るだろうから先にやる事をやっておこう」

「そうですね」

「天色と夕焼けは小屋の修理用の枝を取りに川上の灌木の草原に行って枝を集めて来てくれ。火を起すのにも使うから少し多めに頼むな」

「俺たちにまかせとけ」

「僕と月夜は食べ物を集めておく」


 僕と月夜はカゴを背負い食べ物を集めに出掛けた。

 果樹の林に入ると、有りえない光景を見た。


 ──バサバサバサ!


 激しい鳥の羽根音!

 鳥が羽ばたき逃げた。


「む!?」

「鳥ですね」

「俺たち以外の動物はこの辺りには居なかったんじゃないのか?」

「だったはずですが……」


 この地で何かが変わりつつあった。

これにて火打石入手の旅は終わります。

これからは火を使った文明開化が始まります。


最初書き始めの時にすぐに火を起こすか悩んだんですが、展開は物凄くスローになり感想でも散々怒られましたがこれで良かったんじゃないかと思っています。

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