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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石の山8 酸欠

 たき火で煙った洞窟から外に出た僕らは新鮮な空気を存分に吸い込む。

 空気がこんなに美味しいなんて知らなかった。

 僕は横にいた月夜と労をねぎらう。

 

「ふー、やっと火打石が取れたな」

「やっと取れましたね」

「ありがとうな」

「いえいえ」

「これでやっと色々な事が出来るな。鉄を作って釘やのこぎりを作ってログハウスみたいな家を建てたいし、レンガを焼いてレンガの家でもいいな」

「それ以外にも色々出来ますよ。火が有ればご飯が炊ける様になりますし、今まで食べられなかった物も食べられるようになりますしね」

「とりあえず、衣食住を充実して安心して暮らせる村にしたいな」

「ですねー」


 横で夕焼けと天色がハイテンションで話しているのが耳に入った。


「外の空気はおいしいにゃー」

「ほんと美味い空気だ。洞窟の中は煙臭かったな」

「それに息苦しかったにゃ」

「俺も苦しくて倒れそうだったぞ」

「わたしもあの煙で頭がクラクラしてたにゃ」


 その話を僕と聞いていた月夜がボソッと言った。


「あとちょっとで死ぬとこでしたね」

「えっ?」


 何言ってるのこの人?


「あえて言わなかったのですが、あと五分もあの場所で作業を続けていたら全員死んでいたと思います」

「なんだってー! マジか?」

「本当ですよ。空気の停滞している洞窟の中であのままたき火を焚きながら作業を続けていたら、酸素が足りなくなって一酸化炭素中毒で倒れてたはずです」


 あとすこし作業していたら死んでたのかよ!

 月夜は時々怖いこと言うな。

 そう言う怖い事は胸の中だけにしまっておいて欲しかった。


「何でそんな大事なこと言ってくれなかったんだよ!」

「そうなる前に作業が終わるのが解ってましたから」

「なるほどね」


 僕らは命を天秤に掛け火打石を手に入れたのであった。


 *


 僕らは十分に休憩を取った後、帰り道の支度を始めた。


「さてと、明日の帰り道の支度を始めるかな」

「もう帰るのかにゃ?」

「ここに居たら川が無いから魚が手に入らないし、果物の木も無いから食べ物にありつけないからな」

「そういえばこの辺りには食べ物は無さそうだよな。俺が洞窟を探しにこの山を歩き回っていた時も川は見当たらなかったし果物の木とかも一本も生えてるのを見掛けなかったな」


 天色の話だとやはりこの辺りに生えてる木は針葉樹ばかりで果実を実らせる広葉樹は見当たらなかったらしい。

 きっと村の辺りとは標高が違い標高の差によって気温や気候が違うのが関係しているんだろう。

 食糧の現地調達は残念ながら無理な様だ。

 食糧問題はスケジュール通りに火打石を手に入れた事でとりあえずの危機は回避出来たものの、帰り道でトラブルが起きて足止めされる事が有れば問題が再燃しかねない危うい状況のままだ。

 食糧が尽きる前に何としても帰らないと飢えて死んでしまう。


 何の為に苦労してこの旅で火打石を手に入れたのかが解らない事になってしまう。

 早く確実に食べ物にありつけるあの村に早く帰らないとな。

 僕はそんなことを考えつつ、帰り支度の準備の指示を皆に出した。


「天色、悪いんだがお前は力が有るので今回採った火打石を全て持ってくれないか?」

「このぐらいの重さならへっちゃらだぜ。任せてくれ!」

「すまないな。次に重いヤシの実だけどこれは僕が持つ」

「よろしくお願いします」

「夕焼けと月夜は僕の籠に入りきらないヤシの実を二個づつと残りの夏みかんを半分ずつ持ってくれ」

「わかったにゃ」

「解りました」

「そうそう、夕焼けと月夜の肩ひもをどうにかしないとな……」

「荷物がこれだけなら今のままでもいけますよ」

「そうか。月夜と夕焼けのカゴのヤシの実から使うから、重いかとは思うけどそれまで我慢してくれな」

「わかったにゃ」

「じゃ、明日も早い事だし寝るか」


 僕は横になると疲れが一気に噴き出して、あっという間に眠りに落ちた。

 疲れていたせいか朝まで目の覚める事は無かった。

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