火打石の山7 火打石集め
食事後、洞窟の再探索をする事になった。
目的はもちろん火打石を取る為だ。
「みんな、食事が終わったばかりで悪いんだけど火打石を取りに洞窟に入るから手伝ってくれないか」
「おう!」
「わかったにゃ!」
「はい」
「これからたき火の火を明かりにして洞窟に戻るから、木の枝を集めてほしいんだ」
「枝なら何でもいいのかにゃ?」
「長さは身長ぐらいの長さの物でもいいし、人差し指ぐらいの短い枝でもいい。何でもいいから両手一杯ぐらいになるまで集めて欲しい」
「俺に任せろ」
「まかせるにゃ」
枝を集めるのは、洞窟奥でたき火をする為だ。
僕は移動中の照明の代わりになる木を集めた。
松明代わりする為だ。
程々の長さの有る太めの棒をかき集める。
五分程で一メートル位の長さのちょっと太めの枝一〇本が集まった。
そしてその木の棒にたき火から火を点けた。
本格的な松明と違い、木の棒だけで先端に油を染み込ませた布を巻いてなかったのであまり明るくは無かったが、とりあえず洞窟の奥にまで燃え尽きない位の松明の代わりの照明になるだろう。
僕が木の棒に火を点けているとにゃん娘たちが戻ってきた。
夕焼けは五〇センチメートル位の長さも有れば一〇センチメートル位の長さもある、バラバラなサイズの小枝。
月夜は三〇センチメートル位の整った長さの枝。
天色は長さこそ天色の身長と同じぐらいだったが、太さが尋常じゃない木を持ってきた。
両腕一杯に抱えた大木だ。
どう見てもそこら辺に生えてる木をぶち折って来た感じだ。
「ちょっと待て! 天色、それは少しデカすぎるぞ!」
「大きい方がいいと思ったんだけど、ダメなのか?」
「さすがにその大きさだと火が点かないよ。夕焼けや月夜の持ってきた位の細い枝が欲しかったんだ」
「そうか……」
天色的には頑張ったつもりなんだろうけど、ちょっと頑張り過ぎ。
僕に期待に添えなかった事を天色は悔しがってるのか、その大木を叩きつける様に地面に置く。
そして、思いっきり体重を乗せた拳を大木に振り下ろした。
すると大木は砕け、バラバラの木片となった。
天色はその木片を手に取り、僕に向かって得意気に言った。
「どうだ? こんなもんでいいか? 王様」
「そ、そう……そんな感じ」
天色の力は、いつ見ても凄い力だな。
性格が大人しい天色だけど、怒らせて殴られた時のことを考えると少し怖い。
「よし、洞窟の中に入るぞ!」
僕らは松明を手に持ち、カゴに枝を詰めて洞窟奥に進む。
今回は照明が有るので、真っ暗闇を進むのが怖くない。
もう闇に恐れる事は無い。
「火が有ると良く見えるにゃ」
簡易松明だったので煙が出る上にあまり明るくない照明だったが、かなり高い天井まで照らす位の明るさは有った。
僕らは枝を落とさない様に、慎重に洞窟の奥へと進む。
すると、すぐに火打石の鉱脈に辿り着いた。
採掘現場は洞窟のかなり奥と思っていたが、入り口からの距離が一五〇メートルぐらいと言った所だった。
松明の光に照らされて洞窟の壁面がキラキラと光る。
まるで天の川が洞窟の壁に現れた様だ。
「綺麗……」
この光景を見た月夜はこの洞窟の美しさに飲まれたのかつぶやく様に一言だけそう言った。
「綺麗だな」
「きれいにゃ」
僕もその美しさに吸い込まれるかと思うほど息を飲んだ。
だが、無駄な時間は無い。
やる事をやってしまわないと。
「じゃあ、カゴから枝を出して、山のように積み上げておいて」
枝をカゴから出して積み上げ、ちょっとしたサイズの枝の山が出来た。
僕は小さな枝の山を一つ作ると松明から火を点ける。
すると枝の山が燃え上がり洞窟がさらに明るく照らされる。
簡易的な照明のようなもので、この枝の量なら三〇分ぐらいは洞窟を照らせるな。
「さ、枝が燃え尽きる前に火打石を集めるぞ」
「はい」
「天色はひたすら火打石を壁から引き剥がしてくれ。木の棒を使ってもいいぞ」
「おう!」
「月夜と夕焼けは壁から引き剥がされた火打石をカゴに詰めていってくれ」
「わかったにゃ」
「はい」
「僕はたき火の様子を見ている」
僕は手元が暗くならない様に、それでいて激しく燃え上がらない様に量を調整しながらたき火に枝をくべる。
天色は古くなった壁のペンキを剥がし落とすように岩壁にめり込んだ火打石をバラバラと落とす。
月夜と夕焼けはそれを拾い上げてカゴに詰め込む。
結構いいペースで火打石が集めれられている。
僕がたき火の枝を半分ぐらい燃やしたところで、カゴが一杯になった。
二〇分ぐらいで一つのカゴ一杯の火打石が取れたのだ。
「よし、こんな物でいいだろう。これだけ有れば数年間は火打石に困らないはずだ」
僕らはカゴ一杯の火打石を手に入れ採掘現場を後にする。
僕らは今回の旅の目的を達成する事が出来た。
これからは、加速度的に村造りが早まる。
そう、僕は確信していた。




