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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石の山5 初めての火

「よし、これで火を点けるぞ」


 僕は辺りを探し回って木の枝をかき集める。

 そして、火打石で火花を放つ!

 だが何度火花を放っても火の粉は一瞬で消えてしまい枝に火が移る事は無く、結局火が点く事は無かった。


「だめだ。点かない」

「点かないのかにゃ」


 じっと横で見ていた夕焼けがガックリと肩を落として残念がっている。


「やっぱりいきなり枯れ枝じゃダメか。やっぱりたき火は枯れ葉からだよな。漫画なんかでも枯れ葉を集めてたき火をして焼き芋を焼いてるもんな」


 僕は辺りから枯れ葉を集める。

 そして枝の上に載せた。

 そして火打石で火の粉を降らせる。

 だが、火の粉は枯れ葉の上に落ちはするものの、焦げもしないでそのまま消えてしまった。


「いったいどうなってるんだ? なんで枯れ葉の上にこれだけ火の粉を降らせても火がつかないんだ?」

「王様、今までたき火をした事あります?」

「ないよ」

「でしょうね」


 あからさまに蔑んだ顔で僕を見る月夜。

 僕、なんか変な事してるか?


「いきなり火の粉で枯れ葉や枯れ枝に火を点けようとしても火力の有るライターやマッチじゃ無いんですから、そう簡単には火が点きませんよ」

「え? そう言う物なのか?」

「もっと、火の点き易い物で火を点けてから枝に火を移すんですよ」

「燃え易い物って、ガソリンとか灯油なんて無いぞ?」


 僕が頭を抱えて悩んでいると月夜は見かねたのか僕の手の平に白い物を載せた。


「もうそろそろ日が完全に落ちて真っ暗になってしまうから、今回だけの特別ですからね」


 月夜の渡してくれたそれは草の綿毛だ。

 白い綿の様な綿毛だった。

 僕はそれに火打石で火の粉を飛ばしてみた。

 確かに火の粉が燃え移る。

 だが、極僅かに燻って塩粒大の焦げを残して消えてしまう。

 僕はムキになり火打石を擦りまくるが火が付く事は無かった。


「確かにさっきと違って焦げはしたんだけど何で消えちゃうんだ? 本当にこれで火が点くのか?」

「失礼ですね。ちゃんと点きますよ」

「じゃあ何で燃えてくれないんだよ?」

「王様、火の点く三つの条件は覚えています?」

「なんだっけ……あれだろ? 燃える物と温度と酸素だっけ?」

「そうですね。燃える物は綿毛、温度は火花、なら足りないものは?」

「酸素か!」

「正解です。私が酸素以外の物を全て答えていたのでこれで答えられなかったら、王様の頭の出来を疑いますけどね」

「ぐぬぬぬ。でも酸素って言っても酸素ボンベなんて無いぞ?」

「有るじゃないですか。酸素ならここに」


 そう言って月夜は僕と月夜の間の何もない空間を指さした。


「空気か……」

「空気の中には酸素が含まれていますからね。それを火の粉の温度が落ちない程度に大量に送り込めばいいのです」

「どうやって?」

「それも解らないのですか? こうですよ。こう。ふ~っ!」


 月夜は唇を尖らせながら、僕の顔に息を吹きかけた。


「そんな事でいいのか?」

「ですよ」

「でも、それは間違いだろ?」

「なんでです?」

「僕は知ってるぞ。人間の呼気の中には二酸化炭素が含まれてるからそんな物吹きかけたら火が消えるぞ」

「王様……。呼気には酸素が大量に含まれているんですよ」

「でも、二酸化炭素が……」

「二酸化炭素なら、この空気にも含まれています。植物の光合成の原料として空気中の二酸化炭素を原料に使っていると学校の授業で習いませんでしたか?」

「そ、そうだな。そんな事を習った気がしなくもない」

「もうすぐ日没ですから細かい事を考えてる暇は有りません。道具はすべて用意してあげたんです。早く火を点けてみてください」


 僕は綿毛にそっと息を掛けながら火打石で火花を飛ばすと綿毛に飛び移った火花が一気に燃えあがった。

 ついに僕らは火を手に入れたのだ!

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