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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石の山1 ついに到着

 川を渡ると、僕らは再び歩き出す。

 もちろん、火打石の山に向かってだ。

 道なんてものは無く、ただひたすら山を目指して直進するのみ。

 すぐにまた森の中に入る事になったが、今まで歩いていた森と違い生えている木々がかなり疎らで木々の葉の間から青空も見える。

 森っていうよりも林といった感じだ。

 生えている木の種類も先端の見えない程の高さの有る針葉樹ではなく、枝葉を茂らせた広葉樹に変わっている。

 この林なら食料になる果物が手に入るかもしれない。

 一安心する僕。

 当然、目的地の山も見える。

 視界の遥か上方に山の頂上がそびえ立っていた。

 目的地である山が見えるせいか、皆の歩くペースが明らかに早くなっていた。

 ホームストレッチってやつなのかな?

 今向かっているのは目的地であって家じゃないけどね。

 夕焼けが目的地の山を見るとはしゃぎ始めた。

 

「おうさま、おうさま! あの山が目的地なんだよね?」

「そうだな」

「ついに到着にゃ! すごく頑張ったにゃ!」

「ああ、夕焼けはよく頑張ったよ」

「うん、頑張ったにゃ」

「俺も頑張ったぞ」

「ああ、勿論みんな頑張ったさ!」


 念願の火打石の山にもうすぐ到着だ。

 そして二〇分ほど歩くと火打石の山へ辿り着いた。

 僕の目頭がなぜかうるむ。

 困難な長旅をやり遂げた事でうれしくて泣いてしまった。

 こんな感動は前世では無かったことだ。

 僕は思わず独り言のようにつぶやいた。


「やっと、辿り着いたな」


 するとにゃん娘達が言葉を返した。


「やったにゃー!」

「やったぞー!」


 僕と夕焼けと天色は抱き合って喜んだ。

 それを見た月夜が微笑んでいた。

 月夜が笑っているのを見るのは初めてかもしれない。

 どうにか昼前に火打石の山に辿り着く事が出来た。

 高さ五〇〇メートル位の山だ。

 今はまだ昼前、まだ日が高い。

 今日中に火打石を手に入れ、明日の夜明けから帰路に着けば水も食料もギリギリ間に合う。

 やれる!

 絶対にやれる!

 僕は不安を振り払う様に自分に喝を入れ、自分にその言葉を言い聞かる様に心の中で繰り返し叫んだ。


 *


 僕たちはどうにか目的の山に辿り着いたものの、山自体が火打石で出来ている訳ではなかった。

 見た目は木の生えている多少岩肌が多めの山だ。

 どう見ても普通の山である。

 当然、この山から火打石を探す事となる。


「火打石はどう言う所に有るものなんだ?」

「地面の中ですよ」

「地面の中って……地中って事か?」

「はい。そうなります」

「おいおい、いまさら地面を掘れなんて言うのか?……言うの遅すぎるよ! 何の道具も用意してないのに今更かよ」

「私がいつ、山の上に火打石が転がっていると言いました? 私がいつ、岩肌に鉱脈が露出してるなんて言いました?」

「確かに一言も言ってないな」

「言ってないですよね?」

「でも、何にも言われなければ山の斜面にでも転がってると思うじゃないか」

「探せば何箇所かはそんな場所も有るかもしれませんが、鉱脈が露出している部分はたぶん崖でしょうね。そんな所は危なくて行けません」

「掘るしかないってことなんだな」

「そうなります」

「でも土を掘り返す道具なんて無いぞ」

「どうしても地面を掘りたくないなら洞窟を探すしかないですね。運良く洞窟の中で火打石の鉱脈に当たれば火打石が露出しているはずです」


 洞窟か!

 洞窟なら穴を掘る必要もないな!

 月夜はヒントでは無く答えそのものを言ってくれた。

 月夜にしては随分と珍しい事だ。

 いつものまどろっこしい禅問答の様なやり取りをしないで済んだ。

 月夜的にも今回の旅は時間的に厳しい物と解ってるから協力してくれたんだろうな。

 ここは素直に感謝して月夜の方針でやる事にしよう。

 僕が素直にありがとうと感謝の言葉を述べると、僅かに月夜がほほ笑んだ。


「洞窟を見つければ確実に鉱脈に当たるんだな?」

「一〇〇パーセントとは言いませんが、わざわざ三日も掛けて歩いて来た山です。それなりの長さのある洞窟ならば、かなりの高確率で火打石を見つける事が出来るはずです」

「解った。洞窟を見つければいいんだな」

「はい」


 僕は横で二人の話をボーっと見世物を見るように座って聞いていた天色と夕焼けに話しかけるように言った。

 

「おい、皆んな! 今の月夜の話を聞いたか? 全員で手分けして洞窟を探すぞ!」

「おー!」

「わかったにゃ」

「見つけたら、ここに戻って来てくれ。見つからなくても誰かが見つけてるかもしれないから、定期的にここに戻って来るんだぞ」

「わかったにゃー」

「おうよ!」

「わかりました」


 皆でバラけて洞窟を探す。

 僕も必死になって探してみた。

 だが日本の山に洞窟が殆ど無いように、この山で洞窟なんて物はそう簡単には見つからない。

 僕は洞窟が見つからない事でかなり焦っていた。

 既に食糧は尽きかけだ。

 今すぐ火打石が見つかったとしても、明らかに帰りの分の食糧が足りない。

 探索のタイムリミットは今日、長く見ても明日の午前中の早い時間迄だ。

 明日の夕方だったら確実に食料が足りなくなり時間切れになる。

 今日中に火打石を見つけないと帰路で食糧が尽きてかなりヤバい事になる!

 僕は必死に洞窟を探し回った……だが見つからない。

 気が付くと日が傾き始める時間だ。

 三時間ぐらい探し続けて何も見つからなかった。

 天空に鎮座していた太陽がかなり低い位置まで落ちて来て、陽の光がやや黄色みがかってきた。

 もうすぐ、真っ赤な夕焼けになる……。

 もう残り時間は少ない!

 今日見つけないとすべてが終わる!

 僕は泣きそうになりながら、いや本当に涙ぐみながら必死で探し回った。

 へとへとになりつつ……。

 すると僕の背後から巨大な影が襲い掛かって来た!

 そいつが僕の背中に襲い掛かる!

 熊だ!

 熊が襲って来た!

 気がついた時には手遅れだった。

 抜かった!

 僕の背に衝撃がはしる!

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