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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石への旅路6 闇の中の野営

 僕らは夕焼けの指示通りの方向に道なき道を進んだ。

 幸いな事に、森の中は大木の幹が有るだけで、背の低い木の類は一切生えてなかったので歩きやすい。

 既に陽は殆ど落ちた時間。

 薄暗くなり歩くのが困難になって来たので今日の移動はここで終了して森の中で寝ることとなった。

 針葉樹の落ち葉を集めて寝床を作り、食事を摂り、夕焼けのカゴがほぼ空になる頃には辺りが真っ暗になる。

 村に居る時と違って木々の枝葉に遮られて、月明かりも射さないので本当に漆黒の闇の中だ。


 不気味。


 そういう言葉が似合う暗闇だ。

 僕ら以外に動物が居ないのだけが救いだ。

 僕らは離れないように手を繋ぎ合って輪になって寝る。

 寝かける前に、夕焼けがポツリと言った。


「そう言えば今朝神様と出会ったにゃ」

「夢の中の話だろ?」

「そうにゃ。夢の中の話」

「そういえば、今朝夕焼けを起こそうとしたら寝ぼけながら神様がどうのこうの言ってたな」

「夢の中に神様が出て来て何か言ってたにゃ」

「どんな事を? 何て言ってたんだ?」

「急に起こされたから忘れたにゃ」

「なんだそりゃ……」

「忘れるぐらいの事だから大したこと無いにゃ」

「次はちゃんと覚えておけよ」

「はいにゃ」


 一日中歩き続けた疲れが噴き出したのか、僕らはすぐに真っ暗闇の中で眠りに落ちた。

 その時、村で異変が起きていることを僕らは知らなかった。


 *


 寒さで目が覚めると既に朝日が昇りつつあったのか辺りは霧で白んでいた。

 ここは村では無い。

 僕らは火打石を取りに行く旅の中、この鬱蒼とした森の中で野宿をしていた。

 にゃん娘たちを見ると既に月夜は起きていた。


「おはよう。随分と早いな」

「寒くて目が覚めてしまいました」

「月夜もか。僕も寒くて目が覚めたんだ」


 僕らの話し声が聞こえたのか天色が起きる。


「ふぁ~っ! もう起きていたのか。お前たち早いな。おはよう!」


 天色の元気な挨拶の声で夕焼けがバネが弾けるように飛び起きた。


「な、何にゃ!?」


 夕焼けは四つん這いになって毛を逆立てて辺りを警戒している。


「おはよう」

「おっおはようにゃ。な、何かあったのかにゃ!?」

「何にも無いよ」

「すまんな。俺の声が大きくて夕焼けを飛び起こしてしまったか」

「そうにゃのか、びっくりしたにゃ」


 状況が飲み込めた夕焼けがいつもの笑顔でそう言った。


「では、おやすみにゃ」

「おい! 二度寝すんな! 朝のご飯だぞ」


 僕は月夜のカゴから夏みかんを取り出し、皆に配る。

 夏みかんを受け取った夕焼けが満面の笑みで喜んでいる。


「王様。こんな朝早くからご飯にゃのか?」

「そうだぞ。旅の間は体力を使ってお腹が減るからな。朝昼晩と一日三回食べるんだ」

「ま、毎日三食も食べられるのか???」

「そうだよ」


 すると、その言葉を聞いた夕焼けの頬が緩み、さらに笑顔になった。


「毎日旅に出たいにゃ!」

「お前、ご飯食べたいだけだろ?」

「そうかも……にゃ」

「ご飯なんて、これからは毎日三食食べられる様になるんだぞ」

「本当にゃのか!?」


 その言葉を聞いた天色までが驚いたような真剣な顔をして僕の顔前まで来て大声を出す。


「そ、それは本当なのか?」

「本当だよ。すぐにって訳じゃないけど、火を手に入れて道具を作れるようになれば今まで食べられなかったものまで食べられる様になっるからな」

「食べられるものが増えるのか?」

「そうだぞ。色々な物が食べられる様になる」

「それは凄いな!」

「すごいにゃ! 王様はほんと凄いにゃ!」

「でも王様。今まで一日一食だったのにそんなに食べられるほど食べ物なんて有るのか? 俺には信じられないことなんだが?」

「元々、毎日一食しか食べなかったのは魚を取り過ぎると居なくなっちゃうから獲るのを控えていたのが原因だったろ?」

「そう言えばそうだな」


 限られた魚資源が枯渇しないように有効活用していたのが原因だ。


「食べ物が魚以外にも増えたなら、そう言う制限も無くなるんだ。だから毎日何度も食べられる様になる」

「ま、毎日何回も食べられるんだな!」

「そうだ。お腹いっぱいになるまで食べられるぞ」


 それを聞いた、天色と夕焼けのテンションは朝から上がりっぱなしだ。


「スゲーぞ! 王様スゲーぞ!」

「王様凄いにゃ!」


 でも、僕は釘を刺す様に言った。


「ただ、毎日食べるには、毎日働かないとダメなんだ。魚を毎日沢山獲ったらいなくなるだろ? それと同じく、他の食べ物も育てて増やさないとダメだから、寝てるばっかりじゃ無くて毎日働かないとダメなんだ」


 それを聞いたにゃん娘が不思議そうな顔をしてしばらく考えたのち僕に聞いてきた。


「働くってどう言う意味にゃ?」

「どういう事なんだ?」


 そうか。

 この娘たちは、今まで食っちゃ寝だけしてたから働くっていう概念が解らないんだな。

 でも、この娘たちは既に結構働いてるんだぞ。

 働くという言葉を知らないだけなんだ。


「既に、結構働いてるんだけどな」

「そうにゃのか?」

「そうだぞ。今まで小屋を作ったり、カゴを作ったり、芋を掘りに行ったり、ヤシの実取りに行ったりしたよな? それに丘の上と河原を繋ぐ坂道を作ったりと、色々しただろ? あれが働くって言う事なんだ」

「なんだ。そんな簡単な事で毎日食べられるのか! する! するぞ! 俺、毎日働くぞ!」

「わたしも毎日働くにゃ! 働くのは凄く楽しいにゃ!」

「そうか、楽しいのか。お前達には期待しているからな」


 僕はいい村人を持ったと二人に心の中で感謝をした。

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