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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第二章 火打石入手への旅路
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火打石への旅路5 他の生物

 僕はそれとなく月夜に声を掛けてみる。


「なあ、月夜」

「何です?」


 歩き疲れているのか、少しぞんざいな感じのする声が返って来た。


「この辺りの様子がおかしいんだが……動物や鳥、それどころか虫も全くいないんだけど。もしかして火山噴火の前兆でみんな逃げたとか、そんな事無いよな?」

「ああ、その事ですか。それなら大丈夫ですよ」


 またまた月夜はぞんざいな感じで言う。

 めんどくさくなったのか、根拠も無くそう言ってるのかもしれないぞ?

 大惨事に巻き込まれてからじゃ遅い。

 ここはハッキリと確認しなければ!


「何で理由も無しにそんな事を言えるんだよ?」

「有りますよ」

「じゃあ、どんな理由だよ?」

「ここに来るまで動物や鳥と会いました?」

「いや」

「村で動物と遭った事は有りました?」

「無かったけど」

「虫も居なかったですよね?」

「そう言われるとそうだな……干物を作ってもハエが魚に集まらなかったもんな」

「じゃあ、ここにも動物や鳥が居ないのも当然ですよ。この辺りには私たち以外の動物は居ないんですから」

「なんだって!」

「今頃気が付いたんですか?」

「うん」

「注意力散漫ですね」

「ぐぬぬぬ」


 確かに、言われてみる迄全く気が付かなかった。

 村の周辺で動物や鳥が居ない事には気がついていた。

 動物たちは村ににゃん娘たちが住んでいるのを知って、捕食されるのが嫌で避けていると思っていた。

 心優しい天色だが、外から見たらあのガタイの持ち主では明らかに野獣だからな。

 それで避けていると思っていた。


 だけど、この辺り全体に動物が居ないとは思ってもいなかった。

 ここは通常の生態系から独立したかなり特殊なエリアなんだろうか?

 そうかもしれない。

 僕はこの地に神様によって転生されたんだった。

 ここは大陸から大きく離れた絶海の孤島みたいな所で、渡り鳥も渡って来ずになにも動物が居ないのかもしれない。


 ある程度、生活出来るようになって余力が生まれたら島全体の調査もしてみないとな。

 そんな事を考えながら僕らは森の中を進む。

 森といっても歩くのが困難な程木々が密集した森といった感じじゃなく、割と疎らな間隔で立ち木の生える林に近い森だ。

 日差しが殆ど射さないせいか潅木が生えてないのでとても歩きやすい。

 歩きやすい反面、木々の葉で空が覆い尽くされて、太陽の位置が全く認識できなくなった。

 道も無い上に目的地である山が見えなくなったので、ちゃんと目的地の山を目指した方向で歩いているのか非常に不安だ。

 山を目指してるつもりが同じ場所をグルグルと大きな円を描いて歩いてたなんて事が有ったら非常にまずい。

 方向を知るには太陽を目印に進むのが方法としては有るけど、この太陽の光の差し込まない森の中ではそれも難しい。

 富士の樹海に入ると方向感覚が解らなくなるというがそれに近い感じなんだろうか?


 うーん。

 困ったな。


「進むのはこの方向であってるのかな?」

「どうでしょう? 目的地の山が見えませんからね」

「太陽が見えないうえに目的地の山が見えないからな。既にとんでもない方向に歩いているとかじゃ無ければいいんだけど……」

「私に任せるにゃ。山を見てくるにゃ」


 夕焼けはそういうと背負っているカゴを地面に降ろすと、猿の様に器用に両の手足を使って木を登る。

 あっという間に見えなくなったかと思ったら、スルスルと棒を滑り降りるように降りて来た。


「見て来たにゃ。山はこっちの方向だからこのままで大丈夫にゃ」


 夕焼けはそう言うと山の有る方向を指し示した。

 それは僕らの進行方法で間違いなかった。

 三〇分毎ぐらいに夕焼けに木に登って方向確認をしてもらったお陰で大きく道を外れる事無く進めた。

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