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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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丘探索1 果物

「みんなありがとう。これで溝は完成だ! さ、ご飯食べようか!」

「ごはん、ごはん、ごはんにゃー!」

「働いた後のごはんはおいしいぞ」


 ご飯を大喜びする夕焼けを前に、漁で取れた魚は一人三匹づつだった。

 

「今日もお魚少ないにゃー」

「じゃあ、午後から僕が上の丘から食べ物探してくるから、坂道の砂利撒きは月夜お前に指示を任せる。いいかな?」

「えーっと、普通に砂利を坂道に撒けばいいんですよね?」

「そうだな。この坂道は少し傾斜がきついからそれを緩やかにならして登りやすくして、砂利撒きは水捌けが良くなる様に少し多めで。それでいて登る時に足が沈み込んで足を取られない様に、絶妙な分量で頼む」

「解りました。お任せ下さい」

「じゃあ、僕は食べ物探してくる」


 坂道の造成作業を任せて、僕は上の丘の散策に向かった。

 上の丘で散策をするのには意味が有った。

 まだ、この丘の上をちゃんと歩いた事が無い事。

 この丘にどの様な物が有るのか、一通り回って確認しておきたい。

 もう一つは食料となる物が有るのかを、しっかりと確認したかった。

 この前のジャガイモは食べられなかったが、生で食べられる果物や野菜が有れば村の食糧事情が一気に改善する。

 その為に何としても食料を見つけておきたかった。

 確か栗やサツマイモを猿が生で食べていたのを見た事が有るから、そんな感じの物を見つけたい。

 出来るならばそれの栽培にまで繋げて、安定供給をしたい。


 あと長期保存の出来る食べ物も見つけたい。

 七日間の火打石の旅に持っていける保存性の良い食べ物を探す事だ。

 僕は丘を散策してすぐに食べ物を見つけた。

 木になっているサクランボウ位のサイズのまん丸い赤い実だ。

 それが、緑の葉を背にしてコントラスト鮮やかに僕の目に飛び込んで来た。

 あまりにも鮮やかな色なのですぐに目に入った。

 手に取ってみると表面がビーズの様に小さな丸い玉の集まりで、匂いを嗅いでみると甘ったるい匂いがして思わず我慢出来ずに口の中に入れてみた。

 別に苦くは無い。

 これは食べられると直感した僕はそれを恐る恐る噛んでみる。

 すると甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる。

 久しぶりの甘さが口の中いっぱいに広がり、懐かしさで涙が出て来た。

 この酸っぱさ、すごくグレープフルーツに似てるな……。

 グレープフルーツか……。


 懐かしい食べ物を思い出したので、日本に居た時の事を思い出した。

 水道をひねれば透明な水が出てくる生活。

 コンビニに行けば、好きなだけ食べ物が売っていて食べられる生活。

 懐かしいな。

 冷蔵庫でキンと冷えた炭酸の効いたジュースを、また飲みたいな。

 ふかふかの蒲団にも寝たい。

 音楽も聞きたいな。

 ネットもしたい。

 ネットが使えればこの生活をブログにでもするんだけどな……。


 運良ければ話題になって出版なんて事あるかも。

 きっと、ブログを見た人は僕の苦労も知らず、『夕焼けちゃんマジ可愛い。マジ天使! 一緒に住めて羨ましい』とか、『月夜さん、大人しくて可憐。あんな子の膝で膝枕されたい』とか嫉妬されるんだろうなー。

 ふふふ、羨ましいだろ?

 実際は苦労ばっかりだけどな……。

 今はこんな生活してるけど、僕はいつか元の世界に帰れるんだろうか?

 でも死んじゃって異世界に転生と言う形で生まれたから……。

 もう二度と日本に帰る事は叶わぬ夢なんだよな。

 せめて転生の時に前世の記憶が無ければ、こんな事を考える事が無かったのに……。

 僕と同じような悩みを、転生者の月夜は持っているんだろうか?

 多分持っているんだろうな。


 そう言えば夕焼けと天色は最初からこの島に住んでないようなこと言ってたけど、転生者じゃないんだろうか?

 この世界のどこかからか連れて来られた人なんだろうか?

 まあ、本人が自分から言い出すまでは聞くのを止めとこ。

 僕が過去を聞かれるのが嫌な様に、彼女達も嫌だろうしな。

 余計な詮索は無しだ。

 僕は余計な事を考えるのを止めて丘の探索を続けた。

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