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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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治水工事1 排水路

 干物と言う最低限の保存食を確保した事で餓死と言う最悪の結果だけは避けられるようになったが、まだ食糧問題が解決したわけじゃない。

 火が使えない限り食べられる食材の種類に限りが有るのでこの食糧危機の状態はいつまでも続くであろう。

 やはり火の入手を最優先で考えなくてはいけない。

 その為には火打石の入手は絶対である。

 僕が火の入手の為に、とりあえずの目標と考えてるのが『七日分の食料の確保』と『七日分の飲料水の確保』。

 これが出来ない限り火打石の取れる山まで行く事が出来ず、僕たちに未来は無い。

 逆に言うと、これさえ出来れば、火打石を手に入れて、火を入手をし、鉄を作り次の文明開化のステップへと旅立つ事が出来る。


 それより先にしないといけない事が有る。

 河原と丘の間の通路の整備だ。

 今までは河原の岩の辺りを寝床としていたけど、これからは丘の上の小屋を寝床にするのであれば雨が降っても安全に登り降り出来る坂道の整備が必要だ。


 本当は石造りの階段が一番いいんだろうけど、今の道具が何も無い状態じゃそれを作るのは無理。

 僕は日が高く昇っても寝ているままのにゃん娘たちを起こすと、作業に取り掛かることにした。

 月夜と天色はすぐに起きてくれたが、夕焼けは何度揺さぶっても起きてくれない。


「夕焼けー、夕焼けー! 起きてくれー」

「にゃに? 夕焼けちゃんはまだ眠いのれすにゃ。ぐー」


 夕焼けはそれだけ言ったらまた寝てしまった。

 僕は再び夕焼けを揺り起す。


「夕焼け―! 起きて起きて。今日は晴れてるから朝から作業するぞ。寝るのは雨が降った日にいくらでも出来るだろ?」

「確かにそうにゃけど……眠いにゃ」


 僕が言っても起きないので、今度は天色が起こす。


「夕焼け。王様は俺たちの事を思って言ってるんだ。この小屋だって雨に濡れないで過ごせるすごくいい物だろ? 王様の言うことを聞かなかったらこの小屋を作る事も出来なかったし、ここに住む事も出来なかったんだぞ? 素直に言う事を聞こうぜ」

「しょうがないにゃー。解ったにゃ」


 目を擦りながら夕焼けが起き上がる。

 やっと起きてくれた。

 僕は小屋からにゃん娘たちを追い出す様に送り出すと、今日やる予定の坂道の整備の話を始める。


「今日は晴れてるので、この丘と下の河原を繋ぐ坂道の整備を行いたいと思う」

「何をするんにゃ?」

「あそこの坂道は雨が降ると、上の丘の雨水が流れて川みたいになって上れなくなるだろ?」

「確かに川みたいに水が流れて、滑って登れなくなるな」

「川になるにゃ」

「これからは丘に住むことにするので、雨が降っても河原から登って来れる様に整備をします」

「雨の日でもあの坂を登れる様にする事なんて出来るのか?」

「出来るよ。僕たちがやる事は二つだ。一つは雨が降っても水があの通路に流れ込まない様に上の丘から水が流れる排水路と言う小さな川の様な水が流れる通路を新たに作る事。もう一つはあの通路が雨で濡れても滑らない様に滑り止めになり水捌けを良くする砂利を撒く事だ」

「よく解らないけど、その排水路を作って、坂道に砂利を撒けばいいんだな?」

「そう。僕も一緒にやるから一緒にやろう」

「わかった」

「わかったにゃ」

「はい」


 僕は地面に大体の設計図となる線を棒で書きながら説明を始める。


「僕らの小屋と下の河原から登って来る坂道を大きく取り囲む様に溝を掘るんだ。そうすれば僕らの小屋と坂道が、他の場所から流れて来た雨水が流れ込んで坂が上れなくなる事が無くなるからね」


 今後、村に施設が増える事も考えてだいたい直径五十メートルの円で小屋を大きく取り囲む様に線を描いた。


「この線に沿って土を掘ればいいのか?」

「そう。幅と深さは、んー、どれぐらいかな? このぐらいの深さで彫ってみて」


 僕はそう言うと両手の親指と中指をいっぱいに広げて土を掘る深さと幅を示した。

 だいたい三〇センチメートル位だ。


「解ったにゃ」

「掘る時、素手で掘ると怪我をするから、石とか、木の棒とか使って掘ってくれな」


 昨日降った雨で土がぬかるんでいたので穴掘り作業は簡単だった。

 石や木の棒で楽々深く穴が掘れる。

 夕焼けと天色は、これまたやった事無い作業のせいか、大喜びで穴を掘っている。

 まるで、子供の砂遊びみたいな感じだ。


「ぐにゅって土が掘れて楽しいにゃ!」

「この、ムニュってする感触が堪らないなー!」

「ぐにゅだよ。ぐにゅ!」

「ムニュだって。ムニュ!」

「ま、どうでもいいにゃ」

「そうだな」

「あははは!」


 二人して大笑いする。


「それじゃ、わたしはここからこっちの崖にみぞ掘るから、天色ねえさんはそっち側から向うの崖に向けて掘ってにゃ」

「夕焼けの方が物凄く短いぞ?」

「いいの! 天色姉さんは力持で、体が大きいんだから。競争だにゃ!」

「ちょっ! 待て待て、もう少し公平に……」

「ようい! どん!」


 いきなり始めたかと思うと、溝を掘りはじめる夕焼け。

 意外と掘るのが早い。


「うわああ! 勝手に始めるなー! こうなったら意地でも勝ってやる! どりゃあああ!」


 土を撒き散らしながら、凄まじい勢いで掘り始める天色。

 でも掘る距離に差が有り過ぎて、結局天色は負けちゃったんだけどね。

 そりゃ三倍以上も距離に差が有ったら勝てる訳が無い。

 大きい身体なのに、しょうもない事ですっごく悔しがってる天色が可愛い。

 僕らは穴掘りを始めて昼ぐらいには何とか溝掘りを形にした。

 これで大雨が降っても丘に降った雨水が流れ込んで坂道が川の様になる事は無くなり、丘と川原の行き来も出来るようになった。

 もう以前の様に大雨で川原に取り残される事は無い。

 僕はほっと胸を撫で下ろした。

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