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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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保存食作り1 保存の出来る魚

 その日は小屋作りで疲れたので良く寝れた。

 翌日、昨日の雨が嘘だったかのように素晴らしい快晴で水位も元に戻っていたので漁は大漁だった。

 

「よし! 分配するぞー。今日は一人十匹だな」

「やったー! 久しぶりにたっぷり食べられるにゃ」

 

 夕焼けが魚を一気に食べようとするので僕は大声を出して止めた。

 

「ちょっと待って!」

 

 僕が大声で制止すると、夕焼けがビックリして飛び跳ねた。

 

「な! なんにゃ? いきなり大声あげるとビックリするにゃ!」

「今日は我慢して一人五匹でお願い。残りの五匹は僕に渡して」

「えー、王様がひとりじめするの!?」

「王様ずるいぞ! 見損なったぞ!」

 

 夕焼けが必死に僕に抗議すると、天色も僕を責めた。

 

「違うよ。夕焼け、天色。僕は王様なんだからそんな事はしない。昨日作った倉庫って所にしまっておくんだ」

「そっか。そんな話があったにゃ」

「みんなも手伝って欲しいんだ。これからいつでも食べられる魚を作るんだ」

「いつでも食べられる!? この前言ってたやつかにゃ?」

「そう、雨の日でも食べられる魚を作るんだ」

「す、すごいにゃ! そんな事が出来るのかにゃ! これで雨の日でもお腹空かないにゃ」

「ああ、これからは雨の日でもお腹が空いて鳴る事は無くなるぞ」

「王様すごいにゃ!」

「僕がこれからやる事を真似して欲しいんだ。あ、その前にみんなにナイフを渡す」

 

 僕はみんなにナイフを渡した。

 

「これ、石だにゃ。とんがった石だにゃ」

「黒い石の欠片だな」

「そう。この前火打石を探す時に割れた石の中から、尖った石を探して来た。これは良く切れるから絶対に手を切ったりしない事。みんないいね?」

「わかったにゃ」

「おう」

「はい」

「あと、もう一つ約束して欲しいんだ」

「なんにゃ?」

「これを絶対に人に向けて使ってはいけない。いいね? これを人に向けて使ったら、力の無い夕焼けや月夜でも力持の天色を殺せるぐらいの危ない物なんだ。絶対に他人に向けて使わないって約束してくれるね?」

「わかった」

「もし、約束を破って、誰かが怪我する様な事が有ったら……」

「あったら?」

「僕は責任取って死にます」

 

 それを聞いた、夕焼けの顔が一瞬で青ざめた。

 顔から血の気が無くなりブルブルと震えだした。

 

「いやにゃ! 王様死んじゃうのは嫌にゃ。こんなもの要らないにゃ!」

 

 夕焼けは立ち上がると、石のナイフを河原に投げつけた。

 僕はそのナイフを拾い上げ、僕の手の平で包み込む様に夕焼けの手の中にそっと戻した。

 夕焼けの手は僅かに震えていたが、ほんのり暖かかった。

 

「だいじょうぶ。夕焼けが人に向けなければいいんだよ」

「でも……王様死ぬのは嫌にゃ」

「これはとっても便利な反面、とっても危険な物でも有るのは間違いない。でも、これを危険と言って避けていたら、僕らは一生食べて寝るだけのケモノのネコで終わってしまうんだ。そんなの嫌だろ? 僕らの子供たちに雨が降っただけでお腹を空かせて泣かせるような事はさせたく無いんだ。だから解ってくれ。これは危ない物だけど、強い意思を持って危ない使い方をしなければいい。夕焼けが危ない使い方さえしなければ大丈夫だから……ねっ」

「わかったにゃ……」

  

 夕焼けは石のナイフを受け取った。

 

「じゃあ、雨の日でも食べれる魚の続きをします。これはなんて説明したら解るかな……? んー? 乾いた魚? いや、ちょっと違うな……開いた魚? これも違うな。説明するのが難しいな」

 

 干物って言えばいいんだけど、それだと解らないだろうしな。

 見た事無い人に説明するのが難しい。

 すると月夜が言った。

 

「干物です」

 

 あ、干物って言えばいいのか。

 細かい事はどうでもいいのか。

 これから作り方説明するんだもんな。

 

「そそ、その干物を作ります」

「どう作るにゃ?」

「まず、さっき渡したナイフでお魚のお腹を切ります。こんな感じでね」

 

 僕は慣れない手つきで四苦八苦しながら魚の腹を切る。

 すると内臓が飛び出してきた。

 

「そして、中に入ってるはらわたと言うぐにょぐにょを取り出して捨ててください」

「捨てちゃうの? 美味しそうにゃのに……」

「じゃあ、食べていいです」

「やったー! じゅーしーで美味しいにゃ!」

 

 はらわたを美味しそうに食べる夕焼け。

 満面の笑みで本当においしそうだ。

 僕は血生臭い内臓だけを食べることはちょっと無理。

 こういう所は可愛くても獣なんだなと実感させられる。

 

「あ、僕のもあげる」

「私のもあげます」

「やったにゃ!」

 

 僕と月夜ははらわたを夕焼けに渡すと、夕焼けはとろんとした目をして美味しそうに食べた。

 さすがに、転生者の僕と月夜ははらわただけじゃ食べれない。

 

「そしたら、次にお魚を開きます」

 

 僕は左右の身をナイフで切り開き、魚の開きを作り上げた。

 

「じゃあ、みんなここまで全部の魚を同じようにやってみて」

 

 皆、器用に魚を開く。

 僕よりも上手かった。

 

「出来たにゃー」

「出来たぞ」

「出来ました」

「じゃあ、これを持って海に行きます」

「海に? なんで?」

 

 海に行くと言った僕の言葉に不思議がる夕焼けであった。

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