アクセル全開新聞部
続きです。
-side 田島亮-
放課後。新聞部室にて。
「はーい! じゃあ、今からこの4人で今年の文化祭で新聞部は何をするのか決めましょう!」
右手にペンを持ち、テンションアゲアゲな状態でホワイトボードの前に立っているアリス先輩。今日も今日とて絶好調。
そしてホワイトボードの前には横一列に3つのパイプイスが並べられており...
「文化祭ではとりあえず金を稼げるようなことがやりたいネ。オイ、田島。なんか良い案出せアル」
1番左の椅子にリンさん。
「わーい、文化祭でありますー!!」
1番右の椅子に瀬奈ちゃん。
「いや、あのー...なんで俺が新聞部の会議に招集されてるんですかね...?」
そして2人に挟まれる形で、なぜか俺が中央の椅子に座っている。
「あ、あのー、アリス先輩? コレって新聞部の文化祭の出し物についての話し合いですよね? 俺ってココに居ていいんですか? 部外者の俺が意見をするのは良くないと思うんですが...」
「いやいや、ダーリンは部外者なんかじゃないわよ。だってダーリンは新聞部の準レギュラーじゃない」
あっはっは、なんかいつのまにか準レギュラー認定されてる。
「ま、まあ俺のクラスの文化祭準備は明日からだし、補習も文化祭本番まで無いから、今日の会議に参加すること自体はやぶさかじゃないっすよ。けど...俺を呼ぶ理由あります?」
「いや、むしろダーリンが居てくれないと困るのよ。だってさ? よく考えてみて? 私たちが話し合いをするのよ? そんなの、話が脱線しまくるに決まってるじゃない。話し合いが進むわけがないのよ」
「......つまりストッパーとして俺が必要だと」
「ふふっ、察しがいいわね。そういうことよ♪」
「な、なるほど...」
あー、うん。なんだろう。結構理不尽な理由で呼ばれてるはずなのに、なんか俺がここに居なきゃいけないような気がしてきたわ。新聞部には強烈なブースターしか居ないからな。多分俺が居ないと会議が破滅する。
「はい! じゃあ早速会議開始! 何か良い案が思いついたら誰でもドンドン意見を言っていいからねー!!」
「了解です」
「分かったアル!」
「了解であります!」
よし、まあ色々あったが、とりあえず新聞部3人をコントロールしつつ、俺も自分なりに意見を考えるとしますか。
ま、まあ...直接自分が新聞部の文化祭に関わるわけではないんだけどな...
ていうか、そもそも...
「新聞部なんだから新聞を書けばいいんじゃないんですか? 『文化祭特別号!!』みたいな感じでデッカい新聞を掲示すればそれなりに目立つと思うんですけど」
「あー、それは去年やったのであります。結構大変だったから今年もやるのはちょっと抵抗があるのであります....」
「な、なるほど...」
あー、そういや文化祭って去年もあったんだったな。去年のこの時期は病院のベッドの上だったから、文化祭に出てないのは俺だけなのか。いかんいかん。完全に失念してたわ。
「いやー、ほんっと去年のアレは大変だったわね! いつもの3倍は取材したもの!」
「なるほど。アリス先輩はインタビューをするために色んな所を駆け回ってたわけですね」
「いつもと違って大きい紙に手書きで記事を書くのも大変だったのであります!」
「へぇー、瀬奈ちゃんは記事を書いてたんだ。あ、リンさんは去年の文化祭で何をしてたの?」
「あー、私は2人を応援してたアル」
「へぇー、応援ね......ん? 応援? 応援って何?」
「応援は応援アル」
「......なるほど」
あー、うん。多分この子は遊んでただけなんだろうな。
「つーか、もういっそのこと、アリス先輩がやりたいことをやればいいんじゃないんですか? ほら、アリス先輩は最後の文化祭なわけですし。多分アリス先輩の意見には誰も反対しないと思いますよ?」
「まあ、確かにそれは一理あるネ」
「ワタクシもそう思うのであります!」
「うーん、でも私は皆の意見も聞きたいんだよねぇ」
「あ! 良いこと思いついたアル! もうこうなったらワタシたちがやりたいと思ったことを全部やればいいと思うネ!」
「おー、確かにそれは良い考えであります! 『話し合って何をするのか決める』のではなく『話し合って出た意見を全部足し合わせる』ということでありますね!!」
え、ちょっと待て。なんか不穏なワードが聞こえてきたんだけど。やりたいことを全部やる...? それはちょっと無理があるんじゃ...
「はい! ワタクシは文化祭で陶芸をやりたいのであります!!」
「いや、ちょっと瀬奈ちゃん...文化祭で陶芸はさすがに...」
「ワタシはたこ焼き屋をやりたいネ! そして売り上げを全部部費にするアル!!」
「いや、たこ焼き屋と陶芸ってどう考えてもミックスできないような気が...」
「うーん、たこ焼き屋もいいけど、お好み焼き屋も捨て切れないわね! よし、どっちもやりましょう!! 大丈夫! 私のパパに頼めば出店資金はなんとかしてくれるわ!!」
「いやいや、アリス先輩。私財をブチ込んだら絶対赤字になりますって。だ、だから、その...やっぱやりたいことを全部やるってのは無理なんじゃ...」
「あ、ワタシ、綿飴も作ってみたいアル!!」
あ、もうダメだわコレ。止まんねぇわ。やっぱ俺がストッパーになるなんて無理な話だったわ。
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そして新聞部員3人がアクセル全開で意見を出し続けること約30分。彼女達もさすがにネタが尽きてきたようで、会話のラリーも随分と少なくなってきた。
あと気づいたら俺がホワイトボードにアリス先輩たちが出した意見をひたすら書きまくる感じになってたから、ホワイトボードが今まで見たことないくらい、文字ビッシリで真っ黒になってるわ。これはもはやホワイトボードじゃないな。ブラックボードだ。って、それ黒板じゃねぇか。
「はぁ...はぁ...ね、ねぇ、ダーリン? 今私たちが出した意見を全部合わせたらどんな感じになる...?」
いつのまにか俺とポジションを入れ替わり、現在はパイプイスに座っているアリス先輩が、随分と疲れた様子で俺に声をかけてきた。まあ疲れるのも無理はないだろう。なんせ、30分もぶっ続けで喋り続けてたんだからな。
「はぁ、なんか暑くなってきちゃった。よし、カーディガン脱いじゃおっ」
そう言って上着を脱いだアリス先輩の首筋には一筋の汗が光っているように見えた。また、普段は雪のように白い彼女の顔も、今は心なしか火照って赤くなっているように見える。
なんつーか...ちょっと色っぽいな。
「ふふ、ダーリンのエッチ」
いかん、チラチラ見てたのがバレた。
だがここでいつものように狼狽えてしまえば、俺はいつものように先輩にからかわれてしまうだろう。それは絶対に避けたい。
というわけで、俺は平静を装って先輩と対峙してみることにする。
「いいえ。いいえ、先輩。決して俺は変態などではありません。男子高校生は汗を書いている女の子が目の前に居たら、ついつい見てしまうものなのです。つまり俺がさっき先輩の方を見てしまったのは生理現象であり、決して邪な気持ちはなく...」
「田島、言い訳は見苦しいネ。さっきのオマエは明らかにエロい目で部長を見てたアル」
「そうであります! 普段は紳士な田島くんも、やっぱり男の子なのであります!」
「大丈夫よ、ダーリン。心配しないで。私はダーリンがどんなにエッチな男の子だったとしても絶対に嫌いにはならないから」
「......すいませんでした」
あー、うん。なんか新聞部3人には一生勝てない気がしてきた。
「え、えっと...さっき何の話してましたっけ? お三方が出した意見を全部足し合わせる話でしたっけ?」
「えぇ、そうよ!」
「い、いや、その......コレ本当に全部やるんですか? どうなっても知りませんよ?」
「いいのいいの! 多分私たちならやれるはずだから!!」
「いや、絶対無理っす。断言できます」
「えー!? そんなに否定しなくてもいいじゃない!! 最初から諦めるなんてダーリンらしくないわよ!!」
「いや、これは諦めるどうこうの話じゃないっす」
そう。これは諦めるとかそういうレベルの問題じゃない。彼女たちは明らかに前提から間違えているのだ。そもそも文化祭で自分たちがやりたいことを全部やるという発想自体がおかしいのである。
いや、だってさ...
「コスプレお好み焼きチョコバナナ陶芸たこ焼きメイド喫茶とか絶対無理でしょ!!」
ちなみにこの後、俺が死ぬほど頑張って新聞部を説得した結果、皆さんは普通に校内新聞の特別号を書くことになりました。
次回は咲ちゃんがお菓子作りを頑張ります。




