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リア充撲滅委員会

続きです。

-side 田島亮-


「ただいまより裁判を開始する。被告人は田島亮、お前だ」


「はぁ? 裁判...? 翔、これは一体どういうことだ...?」


 俺は今体育倉庫でボロボロの椅子に座らされている。おまけになぜか手錠もかけられている。現在時刻は12:15。昼休み真っ最中である。


「被告人は黙ってろ!」


「裏切り者に死を!」


「裁判長! さっさと裁判を進めて下さい!」


 そして体育倉庫の入口付近に吉原、脇谷、西川という名前の3人の男子生徒がいる。今俺を罵倒してきたのはこいつらだ。


 ちなみにこの3人は全員駅伝部である。去年のクリスマスにウチで野郎どもで集まって寂しくパーティーした時に居たメンツだ。


 さらに俺の目の前には『裁判長』の新島翔がいて、今まさに裁判を進行させようとしている......


 いや、マジでどんな状況だよ。ワケわかんねーよ。




 ...ではどのようにして俺はこのカオスな裁判に巻き込まれたのか。それを説明するには今から4時間ほど遡る必要がある。




------------------------


 

 今日は2月の第2月曜日。ナンパやら相合傘やら色々あった岬さんとのドキドキデートの翌日である。


 いつものように登校して席に着くと、俺の席の机の中にこんな手紙が入っていた。


『田島亮へ。本日の昼休み、体育倉庫にて待つ。by RBI』


 ...なんだこれ? 昼休みに体育倉庫? てかRBIって何なの?


 なんか疑問点が多すぎるので、とりあえず俺は後ろの席の翔に手紙を見せて相談してみることにする。


「なあ、翔。なんか机にこんな手紙入ってたんだけどさ、お前これについてどう思う?」


「...なんだこれ。よく分からん手紙だな。でも体育倉庫には行った方が良いと思うぞ」


「え、そうか? 俺は無視しようと思ってたんだが」


「いや、無視したらRBIとかいう奴らにもっと面倒なことされるかもしれないだろ?」


「まあ一理あるな...」


「まあ心配すんな。一人で行かせるのはなんか不安だから俺も付いて行ってやるから」


「なんかすまんな。助かるわ」


「いいってことよ」


 こうして俺たちは一緒に昼休みに体育倉庫へ行くことになったわけだが...



---------------------------



「田島亮、確保ぉーー!!」


 昼休み。体育倉庫の中に入った瞬間、なぜか翔が制服の内ポケットから手錠を取り出し、いきなり俺を拘束してきたのである。


「翔...? なにしてんのお前...?」


「ふっふっふ...よし、吉原、脇谷、西川! もう出てきていいぞ!」


「はぁ!?」


 すると翔の声に反応して3人の男子高校生が一斉に体育倉庫の端にある跳び箱の中から出てきた。


「は!? お前らなんで跳び箱の中に隠れてたの!? てかお前ら何してんの!?」


「うるせえ! いいからお前はそこに座れ!」


「いや、訳わかんねーよ! っておい! お前らやめろ! 制服引っ張んな! 破れるから!」


 そして...俺はそのまま無理やり室内中央のボロ椅子に座らされ、今に至るというわけである。


------------------------


「では改めて裁判を開始する」


「翔、さすがに急展開過ぎる。説明を求める」


「裁判長と呼べ」


「はぁ...裁判長、質問させて下さい」


「よかろう」


「俺はなぜ裁判にかけられているのですか」


「そんなこともわからないのか。これが原因だ」


 すると翔はポケットから携帯を取り出して俺に見せてきた。


 そして携帯の画面をよく見てみると、そこには俺と岬さん(前髪上げバージョン)が一緒に写っていて...


「おい翔! テメェあの時盗撮しやがったな!」


「いや、こんな面白い場面、撮らないわけないじゃん」


「こいつ...!」


 ああ、なんとなく今の状況が分かってきたぞ。


 そう、俺は昨日チケットを買った時、岬さんのリスクばかり考えていて自分のリスクを全く考えていなかったのだ。


 そしてこのバカげた裁判はあの時俺がとった考えなしの行動が原因で起きていると考えられる。


 あの時、俺は最悪な状況を2つしか想定できていなかったのだ。そして今、俺はあの時想定していなかった第3の最悪状況に陥っているのである。


〜case3〜


俺「チケット2枚くれ」

翔「誰と見るんだ?」

俺「あそこにいる従姉妹だよ」

翔「マジか」

俺「おう」

翔(明日学校で吉原たちにこの事教えたろ)

DEAD END


 というわけだ。恐らくこの裁判は『かわいい女の子とデートしてた俺』を4人で盛大にイジるために計画されたものだろう。


 ...でもさ、こんな大掛かりなことする必要なくね?


「裁判長、こんなに大袈裟なことをする必要があるのでしょうか」


「それはそちらに居るRBIの方々に聞いてください」


「え? この3人がRBIなの? てか手紙見た時からずっと思ってたけどそもそもRBIって何なの...?」


「では吉原検察官、説明を」


 裁判長に促され、吉原が一歩前に出る。


「では説明を行います。まず、RBIについて。RBIとは我々『リア充撲滅委員会』のことです」


 ......あぁ、なるほど。




 R(リア充)B(撲滅)I(委員会)ね。




 つまりこいつらは自分達に彼女がおらず、目に入るカップルに対して『リア充爆発しろ』という思想のもとに行動してる集団って感じなんだろ、多分。


 つーか、そんな組織知らなかったぞ...なんて迷惑なヤツらなんだ...


 なんか...今の説明を聞いたらクリスマスにこいつらがウチに来たのは純粋にパーティーを楽しむのが目的だと思えなくなってきたな。


 よし、一応その辺を問いただしてみよう。


「あのー、RBIの皆さん? 突然ですが貴方たちがクリスマスの時にウチに来た理由を教えてもらってもいいですか?」


吉原「そんなの彼女がいないからに決まってるだろ」


脇谷「そんなのお前の妹ちゃん見たかったからに決まってるだろ」


西川「そんなのお前がクリスマスに抜け駆けしてデートに行けないようにしたかったからに決まってるだろ」


 このクズ共が...こいつらってそんな理由でウチに来てたのかよ...


「新島裁判長! そろそろ被告人の罪状について説明してもよろしいでしょうか!」


「認めます。始めなさい」


 そしてRBIについての説明を終えた吉原が今度は俺の罪状(全く身に覚えがない)について話し始めた。


「被告人は昨日、隣町の映画館で美少女とデートをしていた模様。これには新島氏の写真という確固たる証拠があります。また、昨日の被告人の行為は我々に対する裏切りと同義であり、大変遺憾であります」


 えぇ...そんなの私怨でしかないじゃん...


「よって死刑を求刑します」


「罰が重すぎない!?」


「検察側からは以上です」


 ふざけんな! このまま罰を受け入れてたまるかよ...!


「裁判長! 俺にも反論の機会を下さい!」


「却下だ」


「なんで!?」


「私が貴様の意見を求めていないからだ」


「せめて平等に進行しやがれクソ裁判長!」


「被告人、法廷では静粛に」


「黙ってられるかよ! 大体検察側3人で弁護側0人っておかしいだろ! 裁判って一方的に被告をボコボコにするものじゃないからな!」


「はぁ、やれやれ仕方ないな...反論の機会を与えてやろう...」


 すると翔は呆れた顔をしながら俺に反論の許可をくれた。


 チクショウ...コイツほんっとムカつく顔してんな...


「よし、じゃあ反論を始めるぞ。まずお前らが言ってる美少女っていうのは俺の従妹だ。決してお前らが思っているような関係ではない」


「異議あり!」


「認めます。脇谷検察官、前へ」


「かわいい従妹がいて、しかも2人きりで出かけられる関係。これをリア充と呼ばずに何と呼べば良いのでしょうか! つまり彼は我々RBIの裁きの対象となるのです!」


 そして脇谷の異議に吉原と西川も加勢してくる。


「脇谷の言う通りだ!」


「そうだそうだ! さっさと罪を認めろ!」


「えぇ...アウェー過ぎるだろ...つーかこういう時こそ裁判長は『静粛に!』って言わなきゃいけないだろ...なんで今は言わないんだよ...」


 そして今度は脇谷のすぐ後ろで控えていた西川が一歩前に出る。


「裁判長!」


「どうしましたか、西川検察官」


「被告が罪を犯しているのは明らかです! これはもう判決を言い渡しても良いのではないでしょうか!」


「主張を認めます。では今から判決を言い渡します」


「えぇ!? 急展開過ぎない!?」


「主文、被告人田島亮は...」


「...ゴクリ」


「死刑! ...はさすがに無理なので、右腕骨折の刑!」


「アホか! 十分重いわ! なんで骨を折られなきゃいけねえんだよ!」


 たまらず猛抗議する俺。


「なあ田島よ」


「...なんだよ吉原」


「世の中には『一本満足』と言う言葉があるだろ? お前の骨を一本折って俺らが満足。理想的な『一本満足』じゃないか」


「いや、『一本満足』ってそう言う意味じゃないだろ! あれはただの商品名だろうが!」


 しかしRBI3人組は俺の言葉を無視して急にこちらへ接近し始めた。


「満♪満♪満足♪一本満足♪」


「おい、翔! 頼むから歌いながら俺に迫ってくるこいつらを止めてくれ!」


「はあ、仕方ないな...おい、西川。罪を軽くしてやってもいいか。さすがに怪我させるのはマズイ」


「ああ、別に構わん。俺らも元々こいつに怪我させる気無かったしな。ちょっと脅しただけだ」


「いや、脅し方が物騒過ぎませんかね...まあ俺も冗談だとは思ってたけど」


 ふぅ...なんとか怪我なく終わったか...


「おい、田島」


「今度はなんだよ脇谷...」


「お前が俺たちの不平不満を聞いてくれたら、それでお前の罪を無かったことにしてやってもいいぞ」


「いや、そもそも俺って別に悪いことをしたわけじゃないんだけどな...でも面倒だからもうそれでいいわ...」


「よし! では俺からいくぞ!」


 すると今度は吉原が俺の目の前に立った。おそらく最初に俺に不平不満りふじんをぶつけてくるのはこいつなのだろう。


「なあ田島。俺はお前がこっち側の人間だと思っていたんだよ。入学して以来お前の周りにはあんまり女が寄り付かなかったからな」


「え、俺ってRBIそっちにカウントされてるたの? え、なにそれ。メッチャ嫌なんだけど」


「なのに! 俺はお前を仲間だと思ってたのに! お前は女の子とデートしてやがった! しかも写真を見た限りめちゃくちゃかわいい娘じゃねぇか! 羨ましいんだよ! コンチクショーが!」


「いや、だからあれは従妹で...」


「黙れぇい! 女と遊ぶ、これ即ちリア充なり! 貴様は裁きの対象じゃあ! 今度女の子紹介してくれぇ!」


「いや、紹介できるほど女友達いないんだけど...」


「うるせぇ!! 嘘つくんじゃねえぞコラァ!!」


「いや、ホントだっつーの...」


「チッ...」


 そして色々ぶちまけた吉原は舌打ちをしながら体育倉庫の入口の方へ下がっていった。


「よし、次は俺だな」


 選手交代。どうやら今度は脇谷さんが俺に何か言いたいようです。


「田島、実は俺にはお前にぶつけたい不満はないんだよ」


「...え? お前実はいいやつだったりする?」


「ただな、1つ頼みを聞いてほしいだけなんだ」


「頼み...?」


「ああ、そうだ。俺はお前に友恵ちゃんを紹介してほしいだk」


「いや、断固拒否するけど」


「田島ぁ! そこをなんとか頼むよ! 俺クリスマスに友恵ちゃんと偶然会った時に一目惚れしちゃったんだよぉ!」


「うわぁ、マジか...つーかお前よく考えてみろ。いいか? ノリノリでリア充撲滅運動しちゃうような男に俺が可愛い妹を紹介すると思うわけ?」


「た、確かにそうだな...チクショウ! RBIなんてクソ喰らえだ!」


「......死に晒せこのクソが!!」


 すると突然体育倉庫入口前に控えていた吉原が脇谷に急接近し、物騒な掛け声と共にラリアットをお見舞いした。


「痛いなオイ! いきなり何するんだよ!」


「テメェ今なんて言いやがった!」


「お前こそ急に何しやがる!」


「お前がRBIなんてクソ喰らえとか言うから制裁を加えただけだろ!」


「あぁ!? 実際クソみたいな集まりじゃねぇか! 俺たちは結局人を妬んでるだけでカップルを破局させる力なんて無いじゃねえか!」


「貴様ぁぁぁぁ!! 今言ってはならないことを言いやがったなぁぁぁ!」


 そして気づけば吉原と脇谷の取っ組み合いの喧嘩が始まっていた。





 ......俺は一体何を見せられているのだろうか。




「おい、そこのバカ2人。喧嘩は外でやってくれ」


「上等だぜ! 行くぞ脇谷!」


「おうよ! 覚悟しとけよ吉原!」


 すると2人は全力ダッシュで体育倉庫から出て行った。


 なんだよ、アイツら...意外と素直に言うことは聞いてくれるんだな...


「よし、田島...最後は俺だな...」


 そしてら満を辞して西川が俺の目の前に登場。よし、これでラストだな。


「田島、俺はお前が許せないんだよ」


「唐突ですね」


「仁科だけに飽き足らず従姉妹にまで手を出すとは...この女たらしめ!」


 は? なんでここで仁科の名前が出てくるの?


「なんだよ急に。お前もしかして仁科のこと好きだったりする?」


「違う。別に好意は寄せていない。ただ崇拝しているのだ」


「いや、それって普通に好きになるよりヤバくね」


「あの綺麗な黒髪。端正な顔立ち。そしてなんといってもあの大きなバスト。本当に素晴らしい女性だ。俺がそんな彼女に好意を寄せるなんておこがましいとは思わないか」


「だからって崇拝するのもどうかと思うけど...」


「ケッ、お前は仁科と仲が良いからそんな事が言えるんだよ。俺は同じ部活のはずなのにお前と違って全然仲良くなれてないんだ。ぶっちゃけ俺はお前が妬ましい」


「いや、仁科とはただ友達として仲良くしてるなんだけどな」


「黙れぇい! それだけでも十分羨ましいんだよコノヤロウ!」


「いや、だったらお前も俺を妬むばかりじゃなくて仁科と友達になれるように頑張ればいいだけじゃん。少しは努力しろよ」


「......クソが! 正論は嫌いなんじゃボケェ!」


「理不尽っ!」


 そして西川は不満をぶつけ終えると体育倉庫から出て行ってしまった。


 結果、体育倉庫に残っているのは俺と翔の2人だけということになる。


「なあ翔」


「あ? なんだよ」


「お前は俺に何も言わなくてもいいのか...?」


「ああ、俺は特に何もないぞ。つーか俺はRBIのメンバーじゃないしな。俺は他人が幸せなら自分も良い気分になる性格なんだよ」


「翔...お前っていいヤツなんだな...」


「でも俺は他人が罵倒されてるのを見ても良い気分になれる性格でな。だから日曜のことをRBIの奴らにリークしたわけだ。いやー、今日はホント面白かったわ。さっきまで腹抱えて笑ってた」


「前言撤回、お前クソ野郎だわ」


 クソ...最近まで俺の友達はいい奴ばっかだと思ってたけど割とそうでもないのかもな...そう思ってしまうくらいさっきの裁判は強烈過ぎた...


「なあ亮、そろそろ教室戻らないとヤバくね? 昼休みが終わっちまう」


「それはそうだが...すまん、教室に戻る前にお前に1つ確認してもいいか?」


「確認? なんだよ。とりあえず言ってみろよ」


「お前ってさ、RBIのやつ以外に日曜の映画館での写真を送ったりしてないよな?」


「ああ、心配するな。俺が写真を送ったのは4人だけだぞ」


「そっか、なら良かった...ってちょっと待て。お前今4人って言った? RBIって3人だけだよな? それってもう1人他の誰かに送ったってことにならないか?」


「まあそうなりますね」


「ふざけんなよお前! いいから誰に送ったのか今すぐ答えろ!!」


「スマン。依頼主との契約上それはできない」


「いや、そんなの知ったこっちゃねぇわ! いいから今すぐ答えろ!」


「ふはは! じゃあ答えて欲しかったら俺を捕まえてみな!」


 すると翔は全速力で体育倉庫から出て行ってしまった。


 チクショウ、あいつ逃げやがったな...


 つーか、写真送った相手って誰なんだよ。マジで気になるんだけど。そもそもあの写真をもらって得する奴なんているのわけ?


 まあ、今色々考えても仕方ないか。とりあえず教室に戻るか。


 ...と思って俺は体育倉庫を出ようとしたのだが、ここで俺は自分に重大なアクシデントが起きていることに気づく。








「あ、手錠を外してもらうの忘れてた...」





次回、バレンタイン編

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