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現在地、繋いだ未来

自分の大学院試が迫ってきているため、申し訳ありませんが今後は更新のペースがいつもより遅くなるかもしれません。


読者の皆様には今後も温かい目で作品を見守っていただければ幸いです。それでは続きをお楽しみください。

-side 田島亮-


 現在時刻は11時。校舎2階の一角にて。


「うぅ.......死にたい.......恥ずかし過ぎて死にたい.......もう消えて無くなってしまいたいぃ.......」


 俺の目の前に居るのは、そう呟きつつ、両手で顔を覆って床にしゃがみ込んでしまった魔法少女.......じゃなくて、岬さん。


「ねぇねぇ、お兄ちゃんだぁれ? メルンちゃんのお友達?」


 そして俺の隣に居るのは、キョトンとした顔でこちらを見上げつつ、俺の制服の裾を引っ張っている可愛らしい幼女。




 ..............いや、コレ、どういう状況なんですかね?




「あ、あのー、お嬢ちゃん? えっと.......君はどこのお家の子なのかな?」


 このまま突っ立っている訳にもいかないので、とりあえず俺はすぐ隣に居る見知らぬ女の子(推定6.7歳)に声をかけてみた。


「あ、お兄ちゃんイケないよ。人の名前を尋ねる時は、まず自分から名乗らないといけないんだよ。えぇー、高校生なのに、そんなことも知らないのぉ?」


 ハッハッハ。随分と口の回るガキじゃないか。良い度胸してやがる。


 .......って、いかんいかん。なにを小さい子供相手にムキになっているんだ俺は。冷静。ここはあくまで冷静に対処だ。


「.......コホン。えーっと、俺の名前は田島亮だよ。お嬢ちゃんの名前は?」


「えぇー、別に名乗るほどの者でもないよぉー」


 いや、名乗れや! だったらなんで俺に自己紹介させたんだよ!!


 ま、まあ、この際名前はどうでもいいか.......見た感じだと、この子は多分親と一緒に文化祭に来て、それでいつのまにか迷子になってたパターンだろうな。この歳の子が1人でウチの文化祭に来るっていうのはありえないだろうし。


 と、自分なりに状況を把握しはじめた時だった。


「ねぇねぇ、メルンちゃん! メルンちゃんはどうして顔を真っ赤にしてるの?」


「う、うぅ.......私をメルンちゃんって呼ばないでぇ.......!」


 .......おい。やめなさい、チビッ子。今は話しかけずに、お姉ちゃんのことはそっとしといてあげなさい。メルンちゃんは今精神的に結構キテるんだよ。なんなら俺も今どう声を掛ければいいか分かんないし。


 しかし、それはそれとして.......岬さんのコスプレのクオリティめちゃくちゃ高いな。


 いや、マジでビックリしたわ。だって全然違和感ねぇんだもん。こんだけフリフリの衣装着て、ピンクのカツラも被ってるのに違和感が無いってマジで凄いと思うわ。うん、シンプルに超可愛い。


 ま、まあ、ステッキを振り回しながら『魔法少女メルン参上っ!』って言ってるのを見た時は、さすがにビビったけどな.......


「あ、あのー、メルンちゃん? そろそろ顔を上げてもらっても良いかな? ちょっと、今の状況を説明してもらいたいんだけど」


「もうっ! 田島くんまで私のことをメルンちゃんって呼ばないでよ!! すっごく恥ずかしいんだからねっ!!!」


 そう言うと、岬さんは顔を真っ赤にさせたまま床から立ち上がり、頬をプクリと膨らませつつ、少し怒った様子で俺をじーっと見つめてきた。


「ご、ごめんって、岬さん! 冗談! 冗談だから! だからそんなに怒らないで!!」


「こ、この格好はコスプレ喫茶の店員としてやってるだけなんだからね! け、決して私の意思じゃないんだからね!! そこは分かってよね!!」


「分かった! 分かったから、一旦落ち着こう岬さん!! ほら! そこのチビッ子も怯えちゃってるし!」


「うぅ......メルンちゃん怖いぃ......」


 未だに落ち着かない様子の岬さん。それをなだめる俺。そして、そんな俺たちを見て怯えている幼女。


 .......いや、マジでなんなの、この状況。ちょっとカオス過ぎるんだけど。


「あ、あのー、ところで岬さん? これは一体どういう状況で?」


「あ、え、えーっと......私、休憩時間になったから、衣装から着替えるために更衣室に向かおうとしてたんだけどね? でも、その途中で泣いているこの子を見かけちゃって......」


 ああ、やっぱりこの子は迷子だったのか。


「話を聞こうとしても『ママー! ママー!』って言いながら、泣いてるばかりだったから......だから、そ、その......メルンちゃんの決めゼリフを言ってあげれば、少しは泣き止んでくれるんじゃないのかなーって思って......」


 な、なるほど......あの決めポーズの裏にはそんな事情があったんだな。


「......はは、岬さんは優しいね」


「え? ど、どうしたの急に......?」


 うん、岬さんは......本当に良い意味で変わってきていると思う。


 あー、いや、別に以前の岬さんが優しくなかったというわけではないぞ? でもほら、きっと人目を怖がっていた頃の岬さんなら、こんな風に迷子の子供を慰めることなんてできなかっただろうしさ。


 もしかしたら、それは普通の人にとっては些細な変化で、大した変化ではないかもしれないけど......罪悪感を抱えていた、後ろ向きな岬さんはもう居ないっていうのが分かって、なんとなく嬉しくなったんだよ。


 笑ったり、恥ずかしがったり、時々怒ってみたり。最近の岬さんは本当にいろんな表情を見せてくれるようになった。


 1年前。俺が体を張って、記憶を失ってまで救った未来もの......今俺が目にしている光景はもしかしたら"記憶を失う前の俺"が守りたかった未来なのかもしれない。


 ......はは、改めてそう考えてみると、記憶が飛ぶ前の俺って相当なお人好しだったのかもしれないな。


 だって、大して仲も良くなかった、ただの知り合い程度でしかないクラスメートを守るために道路に飛び出したんだぞ? そんなの、お人好し以外の何者でもないじゃないか。


 でも、まあ......少なくとも、過去の俺が守ったものを、こうして今の俺が目の当たりに出来ているというのは、幸せなことなんだろうな。


 はは、そう考えると、急に過去の自分が誇らしく思えてくるから、不思議なものだ。『物は考えよう』とはよく言ったものだな。


「......ねぇねぇ、お兄ちゃん? どうして笑ってるの? なにか楽しいことでもあったの?」


 っと、いかんいかん。今は物思いに耽っている場合では無いな。まずはとりあえず迷子のこの子をどうにかしないと。


「ごめんね、お兄ちゃんはちょっと考え事をしちゃってたんだ。えっと、それで、お嬢ちゃん? 今日は誰と一緒に来たのかな? お母さんと一緒に来たのかな?」


「......お腹空いた」


「......なるほど」


 さて。秒で会話が成り立たなくなったわけだが、ここからどうしたものか。


「ねえねぇ、お兄ちゃん、メルンちゃん。私、おなかすいた。なにか食べたい」


 おうおう、随分とフリーダムなチビッ子だな。


 まあ......こういう人種と話すのは、普段から新聞部員あとひとたちと接している分、俺の中では得意な方だから別に良いんだけど。


 しっかし、このままじゃ埒が開かんな。はてさて、どうしたものか。


「うーん、どうする、岬さん? この子の親を探してあげたい気持ちは山々なんだけど、お腹空いてるって言ってるし、とりあえずテキトーに近くの店に連れて行ってみる?」


 まあ街中でそんなことをするのはマズイんだろうが、ここは校内だ。生徒の俺たちが迷子の子供に何か食べ物を買ってあげるくらいのことは許されるだろう。つーか、何か食わせてやんないと、この子はずっと駄々をこね続けるような気がするし......そんなんじゃ母親探しなんてやってらんないよな。


「あー、確かに田島くんの言う通り、一回何か食べさせてあげた方が良いかもね......まあ、ちょうど私のクラスの店も近くにあるし、とりあえず移動しよっか......」




 こうして俺の提案により、『男子高校生&コスプレ少女&迷子の子供』という、なんとも奇妙な俺たち3人組は、2年7組のコスプレ喫茶へ向かうことになった。

次回は咲視点からスタートです。

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