多分私は恋愛脳
お待たせしました。続きです。
-side 田島亮-
週明けの月曜日。文化祭本番まで約2週間となり、今週からは本格的に文化祭準備が始まるということもあってか、今日の校内は普段よりも随分と賑わっている様子である。
「よし、演劇の台本も完成したことだし今週からは演技の練習の方にも力入れてくぞー! つーわけで、とりあえずキャストの発表だ!!」
そして昼休み。我らが2年3組もその例に漏れず、今まさに騒がしくなっているところであり、現在、新島翔(監督兼脚本家)が教壇の前に立ってクラス全員に指示を出しているところである。
つーか今さらキャスト発表かよ。いや、まあよく考えてみれば主人公役が俺ってこと以外は何も決まってなかったんだけどさ。
ていうか、そもそもキャストって発表するものじゃなくて立候補するものなんじゃねぇの? いや、まあどうせ俺は主役だからその辺はあんま気にしてないんだけどさ。
「えー、今回俺たちがやる演劇の内容をザックリまとめると『ある日突然魔女に攫われた王子を美少女騎士が助けに行く』っていう割とありがちな物語だ。世界観はなんか中世ヨーロッパっぽい感じの話になってる。ちなみに亮は王子役な」
「おい待て。その設定だと俺がヒロイン的なポジションになってるじゃねぇか」
なんで王子が女の子に助けられてんだよ。普通逆だろ。
「いやー、偶には男が女から助けられる物語もあっていいと思ってな。まあ、細かいことは気にすんなって」
「お、おう、なるほどな...」
まあ脚本を書いてくれたのは翔だし、ここで俺が設定にケチをつけるのは筋違いか......
「で、美少女騎士役は仁科に任せようと思ってるんだが、異論があるヤツは居るか?」
自分のヒロイン的ポジションに納得しかけいると、なんか唐突にキャスト発表が行われた。
「まあ唯ちゃんしか居ないよねー」
「適役だろうな。異議なし」
「満場一致なんじゃね? 俺も異議なし」
「私も唯ちゃんがいいと思うー!!」
おお、やっぱ唯の人気っぷりはハンパねぇな。男女関係なく誰も反対意見無しじゃん。いつも近くに居るから忘れかけてたけど、やっぱ唯ってスター性あるよなぁ。
つーか俺も普通に美少女騎士役は唯がやってほしいわ。もし他の子がその役だったら俺が変に気を遣っちまいそうだし。
なーんてことを考えつつ、俺は隣の席に座っている唯の方にチラリと目をやり、彼女の様子を伺ってみる。
「......ま、まあいいわよ。王子役の亮も気心が知れてる私との方がやりやすいだろうから」
「よし、じゃあ本人の了解も得たことだし騎士役は仁科で決まりってことで!」
わお、意外とすんなり決まったな。ちょっと決め方が一方的だったから、さすがに唯も少し抵抗すると思ってたんだが。まさか、こんなにあっさり決まるとは。
「おい、唯。良いのか? ほぼ強引に騎士役にされたみたいだけど」
まだ他の役のキャストについて説明を続けている翔の邪魔にならないように、俺は小声で唯に尋ねてみた。
「ん? まあ客観的に見ても騎士役は私が適役だと思うし、別に演劇に出るのが嫌だってわけでもないからね。そ、それに......」
「? それに?」
「い、いや、やっぱなんでもない......」
なんだ、随分と歯切れが悪いな。まあ、とにかく唯が騎士役を嫌がってるわけじゃないみたいで安心したわ。さすがに本人の意思に関係なく役を押し付けるのは可哀想だからな。
「じゃあこれからよろしくな、唯。本番まで一緒に頑張って行こうぜ」
「! う、うん...い、一緒に頑張ろ」
「お、おう」
うーん、気のせいだろうか。なんかさっきから唯の様子がおかしい気がするんだよな。ずっとキョロキョロしてるし、なんか口をモゴモゴさせてるし。
まあ......重要な役だし、唯も緊張してるのかもな。普段は明るくて元気いっぱいだけど、なんだかんだで根は真面目なヤツだし。コイツは部活だろうと勉強だろうと何でも、張り切って頑張ろうとしちゃうからな。もしかしたら大役を任されて超緊張してるのかもしれない。まあ、そういう責任感があるのは唯の良いところだと思うが。
でも緊張し過ぎて空回りするのも良くないしな。よし、一応念のために本番までは俺が気をつけて唯の様子を見ておくとするか。
-side 仁科唯-
「やったー!! 亮のヒロイン役だー!!!」
部活を終え、帰宅してシャワーで汗を流した直後。着替えを終えて部屋に戻った私は、ようやく溜め込んでいた喜びの感情を爆発させることができた。
学校にいる間はさすがにこの気持ちを抑えなきゃいけなかったからね......今日はニヤケそうになるのを我慢するので精一杯だったわ......
いや、だって『亮を私が助けるストーリー』なのよ? なにそれ、最っ高じゃない!! まあ亮は自分が助けられるポジションに入るのが嫌だったみたいだけど、そんなのは関係ないわ! だって物語において誰かを助けるってのは大体恋愛に繋がるって相場が決まってるもの!
そう! つまり今回の演劇は私と亮が結ばれるストーリーになる可能性が高いってこと!!
ていうか亮も偶には私に助けられときなさいよね。私は今まで何回もアンタに助けられてるんだから。今回くらいは私がアンタに良いところを見せても別に良いじゃない。私はアンタのカッコいいところをいっぱい知ってるんだから。
今回くらいは......私のかわいいところをアンタに見て欲しいのよ。
「って、もう! なに考えてんのよ私〜!! これじゃバカ丸出しの恋愛脳みたいじゃない〜!!」
なんてことを言いつつ、嬉しさを抑えられない私はベッドの上で足をバタつかせてみる。
「よーし! 明日からは一生懸命頑張らなきゃ!」
うん。クラスで文化祭で出し物をやれるのは今年で最後だし、2年3組のためにも頑張ろう。クラスの皆の期待に応えられるように、去年よりも気合を入れて頑張らなきゃ。
そしてなにより......
--今年は亮にアピールするためにも全力で頑張っちゃうんだからね!!
次回は市村咲と岬京香の文化祭準備の様子をお届けします。




