表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/233

八十話 太郎とズク坊の休日

8/19 アメリカンドッグ→おでんに変更しました。

「んーさて、今日は何しようかズク坊?」


 探索がお休みとなる週末。

 目覚めよく起きた俺は、朝食のシリアルを食べながらテーブルの上のズク坊に聞く。


「悩むところだな。ホーホゥ。今日は珍しくすぐるも花蓮もいないからなー」


 器用に魚肉ソーセージ(俺もズク坊も朝食はいつも軽めだ)をついばみながら、ズク坊はコテンと首を横に倒す。


 ズク坊の言う通り、いつも休日でも一緒にいるすぐるも、隔週で遊びにくる花蓮もいない。

 花蓮は一番下の小1の弟の歯医者の付き添いで、すぐるは単身メイドカフェ――いや何でもない。


 とにかく、正月休みを除けば久しぶりの俺とズク坊だけの休日だ。


「とりあえず借りてるDVDを見るか? ……あ、そういや撮り溜めた番組もあったか」

「なら録画したのにしよう。『あのネコ』のがいいぞホーホゥ!」

「了解。んじゃ一発目はそれにするか」


 ……若者のテレビ離れが叫ばれて久しい昨今、俺とズク坊はまったく関係なし。


 朝食を食べ終えると即行でテレビに向かい、山のようにある録画番組の中から一つを選ぶ。


 まず見るのは、ズク坊ご希望のバラエティ番組だ。

『あのネコ』改め――【人語スキル】によって喋る事ができる、日本一有名なネコである。


 リアルニ○ース。


 世間に登場した時はそう呼ばれていて、今や引っ張りダコのテレビスター。

 老若男女問わず人気があり、今ではひな壇から司会者にまで登り詰めた動物だ。


『――ニャニャニャ! さあ今週も始まった『ニャんころ芸人魂』! 皆で体を張ってお茶の間に笑いを届けるニャよ!』


 そんな人気ネコ、アメリカンショートヘアの『レオン』の可愛らしい声を聞きつつ、俺は飲みものを準備する。


 一人と一匹暮らしには大きめの冷蔵庫を開けて、

 すでにソファに座って見入っているズク坊の大好物、手作りバナナシェイクをいつもの皿に注ごうと――って、ない!?


「あ、やべ。すまんズク坊、バナナシェイクの作り置きするの忘れてた!」

「ホーホゥ!? そんな! い、急ぎ作ってくれバタロー!」


 俺の言葉を聞いて、真っ白い翼を広げながら取り乱して叫ぶズク坊。


 別にズク坊も他の甘いジュースは好きで、飲み会でも普通に飲んでいるが……朝食後はいつもバナナシェイクが定番だからな。


 仕方ない、俺のミスだしチャチャっと作るか――と思ったら。


 あ、やべ……。

 作ろうとアイランドキッチンの上を見たら、いつも置いてある肝心のバナナが一本もないぞ……。


「わちゃー、てっきりあると思ってたよ。ちょっと近くのコンビニに行って買ってくるか。……ズク坊はそのまま見てるか?」

「ホーホゥ。まったく、それなら俺も見回り(カラスの巡回)ついでに一緒に出るぞ」


 急ぎ玄関にあるコートを着て、ズク坊が右肩に乗ったのを確認してから俺達は部屋を出る。


 探索者の身体能力で早い&疲れなくても面倒なので、階段は使わずにエレベーターに乗ってマンションの外へ。


「ホーホゥ。やっぱりまだ寒いな」

「まあ一月だからな。これからもっと寒くなるぞ」


 なんて話しながら俺は身を縮ませて、右肩のズク坊の高級シルクのようなモフ毛に頬ずりして温まる。


 そうして、コンビニついたら各自任務を遂行だ。

 ズク坊はファバサァ! と大空へと羽ばたいて見回りへ、俺はその間に買い物を済ませていく。


「お、美味そうだ。朝メシ食ったばかりだけど……ええい買っちゃうか」


 探索者の財力(?)で節約など知らない俺は、レジ横のおでんで食えるやつを片っ端から購入。

 軽く立ち読みしてからコンビニを出た後は、見回りを終えたズク坊と合流し、二人で歩き食いしながら帰路についた。


 そこから急ぎミキサーを回してバナナシェイクを作れば、いざテレビ観賞を開始。


 どこで身につけたのか、相変わらずMCネコのレオンのトークは冴え渡る。

 芸人達のおバカでも真剣に体を張った芸もあって、スタジオも俺達も爆笑の嵐だ。


 さすがは視聴率二十パーセント超えの人気番組だな。今回も腹を抱えて笑わせてもらったぞ。


 んでもって笑った後は、俺もズク坊もバラエティと並んで大好きな『アニメタイム』だ。


 日常系とファンタジー系を一本づつ。

 さらに借りていたDVD(これもアニメだ)を見ている途中で――きゅるぅ~と。


 フェリポンの鳴き声みたいな腹の音が隣のズク坊から鳴り、ふと時計を見れば十二時を回っていた。


「もう昼か。よし、んじゃメシにするかズク坊。何か食べたいもんはあるか?」

「んーそうだな……。ホーホゥ。あのこってりな麺が食べたいぞ!」

「冷凍の油そばか。オッケー。それならすぐにチンすればいいからちょい待ってな」


 ミミズクとは思えない、ソファの上でダラけた体勢(日曜日のお父さんスタイル)で待つズク坊を置いて、俺はキッチンへ。

 油そばは汁がないから【モーモーパワー】の『食問題』にも引っかからず、何より美味いからいくつもストックしてあるのだ。


 とまあ、昼食をズルルッ! と食べた後は、ズク坊は日課の一人オーケストラごっこ、俺は買ったばかりのゲームを始める。


 ……え? 買い物に出た以外は全然動かないって?


 別にこれでいいのだよ。

 平日は肉体労働をしているのだから、休日はゆっくり過ごして体を休めるのがプロ探索者ってものさ。

 朝からテレビにかじりついて、昼も冷凍でパパッと済ませるぐーたら行為は必要というわけだな。


 ……え?? けど外出しないとお前にゃ出会いがないだろって!?


 うっさいんだよチミは! 俺には緑子さんと日菜子さんの美人姉妹がいるからいいのだよ(怒)!


「ホーホゥ? 何で上手く倒せたのにコントローラを投げつけてるんだバタロー?」


 ――おっといけない、ついつい取り乱してしまったな。

 俺は投げ捨てたコントローラを回収して、新作ゲーム(迷宮モノのRPG)に熱中する。


 きちんと三時のおやつを挟みつつ、ズク坊はホワイトボードでお絵かきもするなど、自由気ままな休日を過ごしていけば――……もう日が沈んで暗くなる頃に。


「よしズク坊。メシの前に早めに風呂に入っちゃうか」

「ホーホゥ。風呂だ風呂―」


 俺はリビングで素っ裸となり(一人暮らしの解放感!)、ズク坊と一緒に風呂へと向かう。


 ズク坊はミミズクだからか湯船には浸からないが、シャワーは大好きなので、右肩の上に乗せたままシャワーを浴びる。

 シャンプーすると羽がボロボロになるから、基本水浴びみたいな感じだな。


 あとは乾きが早いので、タオルで軽くサッと拭いてやれば完了だ。

 俺も今日は疲れていないため、適当にシャワーで済ませて五分とかからず風呂タイムは終了である。


 風呂から出れば俺はコーヒー牛乳、ズク坊はバナナシェイクを飲む。

 そうして、体の中までスッキリしたらいざ晩飯の準備を。


 ここのところは野々介さんの居酒屋に入り浸っていたから、今日は久しぶりの自炊だな。

 エプロンなどつけず、俺はパンツ一丁でキッチンに立ち――ザ・男料理の開幕だ。


「んじゃ、今晩はステーキを焼いてガッツリといこうか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ