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百四話 従魔超連携

「ふわおおお!? スゴイ、これはまさに嵐のごとくだよっ!」


 八重樫じいちゃんの口から出た、まだまだ序の口じゃ発言。

 その真意を確かめるために、迷宮をさらに進んでモントレさんの戦いをみせてもらったのだけど……。


 予想以上の、従魔ちゃん達による華麗なる『連携』が披露されていた。


 私達の現在地は『宇和島の迷宮』の八層。

 潜るにつれて天井からの水滴の量が増えて、足元の水たまりも深くなり、ちょっとしたウォーターワールドみたいになってきた中で。


 出現モンスターの『アクアパンサー』(水面の上を走れる黒ヒョウちゃん)を相手に、

 従魔師さん一人の従魔四体チームで挑み、誰が見ても感心してしまうほどの連携で圧倒していたのだ。


 向こうは力が落ちるといっても、この水の世界では大きなアドバンテージを持っているのに……。


 そんな事などお構いなし! 邪魔な水滴も水たまりもへっちゃらさ! と言わんばかりに、どの子達もしっかり活躍して仕留めちゃった。


 しかも、その子達の主人である従魔師さんの指示が『一つもない状態』で、だよ?


「本当にスゴイなあ。まるでサーカスを見せられてるみたいな……観戦料も取れちゃうレベルですね」

「ほっほっほ、じゃろう花蓮よ。人間同士、または人間と従魔。どちらも磨けば息の合った連携はできるが――従魔同士の極まった連携には到底及ばんよ」


 腕組みをして、誇らしげに言う八重樫じいちゃん。


 まだまだ序の口って……この鮮やかすぎる連携の事だったみたい。


 相手に息つく間も与えずに繰り出される攻撃。

 けどそこには絶妙な時間差があって、誰の邪魔にもならない抜群のタイミングで各個動いているのだ。


「一体一体でも強いのにこのチームワーク……。四体の力の足し算というより、掛け算みたいになって――ふおおおっ!?」

「ほっほっほ! 花蓮は本当にいいリアクションをするのう!」


 私の目に映ったのは、水面を歩いて奥から現れたアクアパンサーの集団。


 そして、その集団を異なる従魔師の従魔ちゃん達での『即席チーム』を作って――あっという間に仕留めてしまう光景だった。


 な……何と言うアンビリバボー!?

 同じ主人の従魔ちゃん同士の連携がスゴイのはまだ分かるけど、別の主人の従魔ちゃん達と組んでも、全然変わらない動きができるなんて……。


「我らが『従魔列車軍(モンスタートレイン)』の従魔、全二十五体――。基本的にはどの組み合わせでも、ほとんど同じレベルで連携が取れるのじゃ」

「ふおお、そうなんですね。ここまで鍛えるのはかなり大変そうだなあ……」


 たしかに、これはもう凄腕の探索者が入ったとしても、呼吸を合わせるのは無理なレベルだね。


 できたとしてもせいぜい一度か二度くらい。

 決着までずっと合わせ続けられる味方は、日々の訓練を共にした同じ従魔だけなのだろう。


 ……ふむふむ、なるほど。

 一体一体の強さも当然ながら大事だけど、この連携、一心同体な感じこそが従魔のスゴさってわけだね。


 ――と、そんな感じで驚いていた私の肩をポンと叩いて。

 八重樫じいちゃんは皆の従魔ちゃん達を後ろに下げて、自分の五体を前線に上げてから。


 年相応のシワのある顔をさらにくしゃっとさせた笑顔で、胸を張ってこう言った。


「じゃが、これでさえもまだ完璧ではない。――花蓮よ、さらに『上』の戦いというものをとくと見るがよい!」


 ◆


 八重樫じいちゃんの従える子達は全部で五体いる。


指名首(ウォンテッド)』にも指定されている、エースアタッカーとして活躍する強トカゲちゃん(エクスプロードリザード)。

 同じく『指名首(ウォンテッド)』で、水の王者とも呼ばれる双頭のシャチの双子ちゃん(ツインヘッドグランパス)。

 高い跳躍力で空中をカバーする、馬よりも大きいダチョウ君(ビッグオストリッチ)。

 人間みたいな戦闘技術と手に持つ盾で盾役をこなす、上野にもいるガンコちゃん(ガーゴイル)。

 鋭い風の刃で味方を援護する、伊豆にもいたカマキリ君(ウィンドマンティス)。


 ――これが『老将の探索者』、日本一の従魔師である八重樫じいちゃんの陣容だ。


 あんまり詳しくないけど、サッカーのシステムっぽく言うなら『2-1-2』の形。

 前線二枚が強トカゲちゃんとガンコちゃん、中央がダチョウ君、後ろ二枚が双子ちゃんとカマキリ君となっている。


 まさに鉄壁、一目見ただけで強いと分かるパーティーだね。

 そんな頼もしそうな皆に続く形で、私達がいるのは一層だけ進んで九層目。


 まだ一体一体でも普通に勝てる階層ではある。

 けれどモンスターの出現数が多いからと、この階層で『さらに上』の連携を見せてくれるみたい。


「……さあ花蓮よ。特等席でしかと見るのじゃ。ワシの従魔達による『超連携』をな」


 八重樫じいちゃんはハンドサインで指示を出して、従魔ちゃん達をさらに前へ進める。


 そして、また少し水量が増えたウォーターワールドな世界で。

 新たなモンスター(大きな青い豚。水牛ならぬ水豚?)が十体近く押し寄せてきたところで――強トカゲちゃんの爆裂先制パンチにより、集団対集団の戦いは始まった。


 …………いや、やっぱり前言撤回しよう。


 個々でも上回るのに、披露された鮮やかすぎる『超連携』で、あまりに一方的な蹂躙劇が始まっていた。


「お、おおおっ……。これはもう……アッパレとしか言いようがないなあ」


 強トカゲちゃんは言わずもがな、爆発&体術で青ブーちゃんを圧倒している。


 そこへ隣にいるガンコちゃんが、盾で上手く受け流して他の青ブーちゃんを供給(?)。

 強トカゲちゃんはそれを見もせずに、一回転からの回し蹴りで倒しちゃった。


 中央のダチョウ君はその跳躍力を活かして、天井や壁を蹴る『三角跳び』の要領で、漏れてきた敵を迎撃している。


 一見、一人だけ勝手気ままに暴れているようにも見えるけど……。

 周囲三百六十度。実は誰よりも注意を払って動き、自分で仕留める以外にも、後ろの子達に蹴飛ばして回しているのが分かった。


 その後ろの二枚、双子ちゃんとカマキリ君による『水と風』の援護射撃も隙がない。


 一度も被らず、そして何より一発も外さずに別々の個体へと。

 自分達の前にいる仲間三体にかする事なく、わずかに生まれたタイミングで撃っている。


 ……敵味方問わず、皆が動きを『予知』でもしているのかな?


 そう思ってしまうほどの見事な戦いを、皆はひざ丈以上の水たまりの中でやるのだから……ちょっと私には理解できないレベルの動きだね。


 これがさらに上、連携を超えた『超連携』かあ。


 目で見て確認。声を出して伝える。

 そんな当り前の動作をやっていては、とても間に合わないし邪魔になってしまうだけ。


 全ての子が本能、研ぎ澄まされた感覚だけで判断して、一切の無駄を省いた状態で動いているみたい。


「まだ私はスラポンとフェリポンの二体だけだから遠い話だけど……。これが従魔師として目指すべき頂ってやつですね!」

「その通りじゃ。じゃからまずはワシらの従魔との連携に慣れてもらうぞい。そうしておけば、新たな従魔を迎え入れた時の動きも違うからのう」


 ――と、いうわけで。

 ちょうど強トカゲちゃん達も青ブーちゃん軍団を全て倒したところだし、レッツ連携訓練! だね。


 ガンコちゃんとカマキリ君が抜けて、代わりにスラポンとフェリポンが入っての同じ五体編成。

『迷宮サークル』では単純に盾になったり、回復するだけだったから、最初は難しいかもしれないけど――。


「いくよスラポンにフェリポン! 目指せ完璧連携百点満点っ!」

次はちょっと整理がてら、これまで出た迷宮の紹介を上げようと思います。

その次はばるたんの閑話を挟む予定です。

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