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断章 妖精 -3-
今の私はかりそめの。
本当ではない俺の姿。
誰もアタシを知らないの。
僕の姿は誰にも見えない。
どうしてアイツは知っていたのか。
私の/僕の/俺の/アタシの秘密の姿を。
誰も知らないはずなのに。
誰にも見えないはずなのに。
キライ/嫌だ/怖い/憎い。
アイツもアイツも堕とさなくては。
ブンブンブンブン飛び回られると。
ノイズで頭がざわざわするの。
重い体を引きずって。
アタシは花園を進んでいく。
誰も僕が見えないから。
誰も私をあやしまない。
さあ、おいで。
贄は大地に横たわり。
紅の花を咲かせながら、
愚かな獲物がやってくるのを、
青白い顔で待っている。




