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花園で笑う  作者: 宮澤花
第1部 千草
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8 第二の事件 -6-

 貴方も不愉快かもしれないが、星野志穂。

 私もこの件では、言いたいことがあるのだよ。


 星野志穂は、唇の両端を吊り上げた。イヤな笑い方。

 ああ。この子は、この表情をすることに慣れている。

「私が推薦したんです。忍さんにやってもらったら、きっとお姉さまが喜ぶと思って」


 やっぱり。

 忍のために、良かれと思ってやったことだったが。裏目に出たか。

 この子、私への鬱憤晴らしも兼ねて。妹に、悪役を押し付けた。


「そう。あの子に出来るか心配だわ。力不足じゃないといいのだけれど」

 私は冷たく言う。

 声にも表情にも。今度は、不愉快さをにじませる。

 プレッシャーをかけるために。


 星野志穂は少し怯んだ。

 それから。追いつめられたネズミがやけになったように。

 嗤った。


「クラスみんなで決めたことですから。忍さんも、引き受けてくれましたし。うまくやってくれるといいんですけど!」

 そう言うと。

 挨拶もせずに、会議室を飛び出した。

「あ。まだ、話は途中よ」

 私は彼女を追った。


 すると。そこになぜか、頭から足の先まで黒ずくめにおおわれた女が!

 すわ、不審者か。と、身構えたら。よく見れば撫子だった。

 頭から長い黒いベールをかけ、やっぱり黒の長いドレスを着ている。喪服の花嫁といったところだ。何、校内でそのコスプレ。


「ここは私に任せて。うまくやって見せるから」

 撫子は低い声でそう言うと、ずるずるしたドレスの裾をたくしあげて素晴らしい勢いで走り始め、廊下の角を曲がって消えた。

 しゃべり方がとろくさいので、おっとりして見られがちな撫子だが。実は結構なスプリンターである。かつては陸上部が何度も勧誘に来ていた。それでも彼女は六年間、占い研究会の所属を貫いたのだけれど。


 ああ。納得いった。今のアレは、占い研の学院祭の衣装か何かか。

 そう言えば、占い研の活動は隣の教室でやっているはずだ。百花祭を前に、衣装合わせか何かしていたのかもしれない。

 

 それにしても。何でここで撫子がしゃしゃり出てくるんだ。そう思わないでもなかったが。

 話を聞き出すことにかけては、私より撫子の方が手際がいい。任せろと言うなら、任せておいた方がいいだろう。

 

 私は会議室に戻り。残った委員たちと、今後のスケジュールについて寮の門限ギリギリまで話し合った。


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