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花園で笑う  作者: 宮澤花
第1部 千草
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8 第二の事件 -2-

 翌朝、月曜。また、いつもの百花園の日常の始まりである。


 朝、六時に起床。小百合はまだベッドで丸くなっている。

 コイツも、剣道部に在籍していた頃は毎日五時に起きては、私まで起こそうとして来て迷惑至極だったが。引退してからは、すっかりだらだらモードである。

 声をかけても丸くなるばかりなので放っておく。朝食を食べそこなっても、私のせいじゃないからね。


 制服に着替えようとして、昨日から放ったままの紙袋とバッグに気が付いた。厭になるけれど、このままにしておくわけにもいかない。ため息をついて、紙袋からワンピースを出し、丁寧に皺を伸ばしてクローゼットにしまう。

 入れ替わりに制服を出して、着替えた。パジャマ兼部屋着の、若草色のトレーナー上下をポイポイと脱ぎ捨て、自分のベッドに放り投げておく。

 洗濯したブラウスを着て、スカートをはき、ベストを着てから胸元にえんじ色のリボンを結ぶ。


 リボンは学年色なので、当たり外れが結構ある。このえんじとか、五年生の紺、一年生の濃緑色は落ち着きがあっていいと思うのだが、四年生のスカイブルー、三年生のピンクなんかは明るすぎて、はずれだと私は思う。

 いや、単体ではいい色なんだけど、制服全体の雰囲気に合わないというか。どう思うかは人それぞれだろうけど。


 ブレザーは、今の時期はまだ暖かいので、校内を歩く分には必須ではない。外出の際は着用しなくてはいけないが。

 今日は天気が良く、日差しも強そうなのでパス。


 バッグを片付けようとして、中身を確認する。

 お財布とか、貴重品はもう寮母さんに預け済みだけれど。ハンカチと化粧品と、交際届の紙が入っていた。

 ハンカチは後で洗濯するから、これもベッドの上に投げ上げておく。化粧品は、見つかったら没収対象なので考えどころであるが。とりあえず、学習机の抽斗に入れておいた。今の時期なら、

「百花祭用です~」

 という言い訳がきくだろう。


 交際届は丸めてゴミ箱に捨てようとして。どうしてもそれが出来なくて、仕方なくスカートのポケットに放り込んだ。

 まあいいや。後で処分しよう。


 部屋を出て、食堂や共用ロビーのある一階に下りていく。 

「あれ。新聞がない」

 共用スペースの新聞置き場に、朝刊が入っていない。寮母さんがいつも朝一番でやっておいてくれるのに。

「今日、新聞休刊日じゃないよね?」

「違うと思いますけど」

 傍にいた下級生も首をかしげる。


 テレビにも、『使用禁止』の張り紙がされている。

 この寮は、朝の八時までと、午後七時から七時半、午後九時から九時半は某NHK総合のニュース番組しか見てはいけない、素敵な管理社会であるが。

 それでも、初めからつけられない、というのは気分が違う。


「テレビ、故障でしょうか」

 下級生が私に尋ねてくる。私も知らないよ、起きたばっかりだもん。

 寮母さんに尋ねに行く。朝食の支度で忙しいところ悪いが、苦情や質問は全部寮長である私のところに来るのだから、情報は仕入れておかないと。


「登校したら、先生方から話があると思うから」

 私の質問に。寮母さんは歯切れ悪く、そう答えた。


 それは、ほんの一週間前の朝を思い出させて。

 とても厭な予感がした。


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