第十三節 お見舞い②...主が同僚となった頃
エピローグ迄に、まだ回収が必要なフラグがあるので、まだ辿り着けませ〜ん(T ^ T)
お見舞いイベント、次の人!竜ヶ峰 紅葉先生!
「一か月ぶりです、お嬢様。お元気ですか?」
「うんうん、元気元気。指輪があればもっと元気。」
流れるように紅葉先生を苛める。
しかし、紅葉先生は涼しい顔をしている。俺の指輪が壊れた事は彼女と無関係なのか、彼女がそういう自分の感情を隠せるキャラなのか。兎に角、彼女は俺の弄りに動じなかった。
なら、無理に弄ろうとしない方が良いだろう。俺が頑張って彼女を弄ろうと続けたら、逆に彼女に弄られている事になる。
「ってか、遠くない?」
俺は自分から10メートルくらい離れている紅葉先生を見て言う。
今回の俺は自分の部屋ではなく、この屋敷のちょっと広い居間の一つで、紅葉先生と会う事にしている。
なんても紅葉先生の魔力量が多すぎて、メイド達がよくうろつく俺の部屋周りで彼女に会うのは危険とか、よく分からない話を早苗さんから教えられた。
なのにメイド一人、しかも魔法が得意柳さんを俺の側に置く。そうしておかないと、逆に魔力が補充されず、それもまた危険とか、良く分からない話を...以下略。
「もしかして、オジョウ...柳が苦手?」
「あら、そんな事ありませんわ、お嬢様。」柳さんは「うふふ」と上品に反論する、「紅葉さんとは旧知の間柄ですわ。ねぇ、紅葉さん?」
「あぁ。」紅葉先生はいつも通りに不愛想に返事した。
このように、新しい指輪が届くまで、俺は紅葉先生と普通に会う事が出来ない。まるで百姓がお代官様に謁見するような形でないとダメ。何とかこの場を作った早苗さんもそもそも今会う事に反対している。
だけど、新しい指輪がいつ出来上がって、こっちに届けるのか、お母様と連絡取れない俺は分からない。色々紅葉先生に聞きたい事もある所為で、気の短い俺はとても待っていられなかった。
その上、紅葉先生自身も俺に会いたがっているらしくて、結局は俺と紅葉先生の両方から「お願い」された早苗さんは仕方なく許可を出した。
難しい俺と紅葉先生の面会に早苗さんは本当によく頑張った。脳みそを絞って、俺と紅葉先生が少し我慢すれば済むようなお願いを、その無理そうな事を可能にして、叶ってくれた。
ありがとう、早苗さん!後で頭よしよししてあげる。
「あの、お嬢様。」紅葉先生が消えそうな声で言う。
「ん、何?」
一応反応しておいたが、今紅葉先生の言おうとしている事は何となく分かる。
きっと、慣れていないのだろうな、謝罪を。
「この度は、私の意味不明な逆恨みによって、お嬢様に大変なご迷惑をお掛けして、申し訳あり...」
「え?なんだって?」大声で話の腰を折る、「遠すぎて、聞こえない!」
紅葉先生はムスッと顔を顰めて、さっきよりちょっと大きな声で、「こ~の~た~び~は~...」
「聞こえな~い!」と、俺はまたも茶々を入れた。「私の耳~、聞きたくない事が~、聞こえない耳なの~。」
紅葉先生が口を噤んだ。
俺の意図が分かったのか、それとも、何を喋ればいいのかが分からなかったのか。理由はどうであれ、彼女は俺が喋るのを待つことにした。
「紅葉先生。私はね、」俺は膝の上に丸くしている可愛い「毛玉肉団子」を撫でながら、話を続ける。「謝られるのが苦手なんた。」
「......」
「『ごめん』という単語だけなら、もう聞き慣れ過ぎて、『挨拶』みたいに感じるが、大真面目に謝罪されると、少し恥ずかしくなるのだよ。」
「お嬢様が、ですか?」
「えぇ、恥ずかしい。『いいよ、許す』という言葉が言いたくないんだよ。『あはは、気にしていない』とか、『私も、悪い所があった』とか、畏まるのが...『作る』のが苦手なんた。」
何を「作る」のか、敢えてその「何か」を口にしなかった。
「だから、この話はもう終わりましょう。君も、『作る』のが苦手でしょう?謝るのが苦手でしょう?」
「私は、嘘を言うつもりはありません。本心から、お嬢様に謝罪が...」
紅葉先生の声が「謝罪」という単語を発した時、一瞬震えたように聞こえた。それは俺の気の所為じゃないと思うが、「ほら、それ!」と指摘して、実際気の所為だったら恥ずかしいから、スルーする事にした。
「別に『作る』事が『嘘吐く』事になるとは思ってない。本心からだとしても、手振り身振りして人に伝える、それも『作る』。
慣れない事を無理してやる必要はないよ。私はクールな紅葉先生が好きだから。」
「ま~、お嬢様。」何故か柳さんが口を隠して「うふふ」と笑った。「旦那様とそっくりですね。」
「そ、そう?」
あのイケメンとそっくりと言われると、喜んでいいのか、嫌がるべきか。それが分からなくて、とても微妙だ。
「それより、先生。ちょっと教えて欲しい事があるのだが...」
「は?はい、何なりと。」
「あの、前...」
ん、あれ?それよりも先に伝いたい事があった。
「あ~、えっと。結構色んな物を貰って、ありがとうございます。」
「え?」
「物だけを貰って、くれた当の本人にまだ会ってないな~と、ずっと思ってた。ドラゴンの財宝、ありがとうございます。」
「ざ、『財宝』とか、そんな大層なものでもありません!殆どが返されたもので、逆にお嬢様にゴミを渡している気分で...」
「『ゴミ』?」面白い言葉は決して聞き逃さない俺。
「あ!失礼しました!決してお嬢様に要らない物を押し付けているのではない!自分が重要たと思う物を...」
自分が失言した事に気づき、パニックになる紅葉先生。いいね、クールの女の子がパニックった姿が。
「ああ、いい!いいから、紅葉先生!」パニックになっている紅葉先生を宥める。「私より、紅葉先生の方が活用できると思ったから返したんだ。それに、一部は貰ってるでしょう?」
「はい。」
「だったらいいじゃない。私にとって、君が私のモノになってくれた事が一番嬉しいのだから。」
おっと、うっかり紅葉先生を「モノ」と呼んでしまった。俺も失言した。
紅葉先生がスルーしてくれると助かるんだが...
「私はお嬢様の物。私の物はお嬢様の物。」
紅葉先生がトンデモナイ事を口にした。
今なら、紅葉先生に「足舐めろ」と命令しても、舐めてくれそうな感じがする。
「お嬢様、紅葉さんはかつての私の世話係。あまり困らせないであげてください。」
「へ~...え?」
メイドとしての振る舞いがちゃんと出来る柳さんが想定外に今日はお客さんの前でよく喋るね~と思っていたら、「世話係」?
「『旧知の仲』ってレベルじゃない!結構親しい仲!?」
「はい。子供の頃に、弟共々世話になった人ですわ、私のお家で家政婦を勤めてくれてました。」
「メイドと同じです、お嬢様。」紅葉先生が柳さんの話を補足する。
「へ~、メイド、メイドか...」「メイド」という単語を繰り返して口にする俺。
「うふふ、お嬢様と同じですね。」上品に笑う柳さん。
何となく柳さんが「名家出身」って感じだったから、ずっと気になっていた事だが...
「柳さんって、『お嬢様』?」
「『お嬢様』はやめてください、お嬢様。『さん』付けもやめてください。今の私はお嬢様のメイドです。きちんと僕として扱ってください。」
「お、おう。」
うちのメイドの中に一人、「元お嬢様」がいた。
貴族だったのかな?今の世の中...ではなくこの世界の今の世、身分の差なんて、「王族」でなければ「ない」と同じだな。
...そういえば、種族名で元は貴族か平民かが分かるんだな。
うちのメイド達の種族って...猫屋敷玉藻、高村桃子、藤林凛、柳玲子、赤羽真緒、神月椎奈、矢野春香。
絶滅種となった早苗の種族名は分からないと、俺の直属になったばかりの紅葉先生がドラゴンで、後一人知らないメイドを除けば、七人に四人も「貴族」がいる。
正式には、一時間でしか人間でいられないタマはメイドとして数えられないので...それでも半分が元「貴族」。
そんな「元貴族」達がプライドを捨てて、守澄家のメイドとして働いているって、やっぱ「守澄」は凄いんだ。
......
...柳さん以外、みんな、あまり貴族っぽくないな。
「お嬢様?考え事ですか?」柳さんが俺に話しかけてきた。
その常に微笑みを浮かぶ柳さんを見て、俺は一つ気づいた事がある。
「柳様のお家は今でも『大貴族』?」
「『様』付けもやめてください、お嬢様。『大貴族』かどうか分かりませんが、日の国の外れにそれなりに広い領地を持っていますわ。」
「かつてはこの国の重臣一家です、お嬢様。」
また柳さんの話を補足する紅葉先生。二人は仲良いんだな。
「所有権は?」
「弟にあります。」
「ほへ~、当主姉じゃん!」
「たまたま、『領主』の姉でございます。」
両手で裾を摘み、礼儀よくお辞儀をする柳さん、気品があるね。
「何で守澄家でメイドやってるの?」
「うふふ。」
「『うふふ』?」
「うふふ。」
柳さんは笑うだけで、質問に答えてくれない。
どうやら、ここが今の彼女のリミットのようだ。心を開ける限界というか、心を許せる限度というか。
これを越えてしつこくあれこれ聞こうとしたら、彼女から魔法を喰らわしかねない。
この話を終えよう。
「結構長いお付き合い?」紅葉先生を目で見て、柳さんに続けて質問。
「子供の頃、両親が家を留守にしている間、私達のお世話をしてくれました方ですので、とても感謝しております。」
「私はあくまで生活の為に...」
「はい、心得ておりますわ。それでも、感謝していますわ。太古の知識も教えてくれた優しい家政婦さんですから、タイスケはともかく、私はとても感謝しています。」
柳さんからまっすぐな礼を言われたからか、紅葉先生の顔が少し赤くなった。
タイスケ...柳さんが意識せずに口にした名前だが、話の流れからして、それは彼女の弟の名前なのだろう。
けっ、男の名前なんて興味ねぇよ。
「でも、私が七つの頃に辞めてしまいましたわ。その事で、子供の私は一日泣きました。人が仕事を辞めるって事はとても普通な事ですのに、うわうわと泣きながら紅葉さんを探してましたね。」
「何それ?オジョウ、可愛い!」
「今のお嬢様も可愛いですわよ。」
柳さんは微笑みを保ち、とても自然に俺の頭の上に手を乗せた。
メイドの分際で、ご主人様の頭に手を乗せるとは何事だ!
そんな事を思いながらも、俺は柳さんにしたいようにさせてあげた。
これは「頭で女の子の柔らかい手を楽しむ」高等プレイだ。別に頭を撫でられる事が好きな訳ではない。
「しかし、違和感なかったの?」
「何の『違和感』ですか?」
「ほら、紅葉先生って、見た目若いじゃん?」俺はすっかり白衣を普段着として着ている見た目二十代後半のあの女を指差す。「いい歳して、若くない?」
「お嬢様は意外と毒舌。」
「そこがお嬢様の魅力ですわ。親しい人に気を使わない、使わせない...私達の主なのに、同僚と一緒にいる時より気が楽ですわ。」
「にゃ~」
膝に寝転がっている毛玉が怠そうな鳴き声をした。女の子の相手に「共感です」と伝える時に、よく使う「ね~」に近い音だった。
確かに、俺はそのつもりで、気を使わない言葉使いでメイド達と接しているし、メイド達の躾にもあまり拘っていない。
前に、藤林凛にナメた態度を取られたのも、根本的にこれが原因かもしれないが、それでも、俺は今のやり方を変えるつもりはない。
もちろん、女の子限定だ!現時点で俺が命令できる男はセバスチャンだけで、年寄りの彼も同じようにやりたい放題させてあげているが、次の男の部下?僕?を甘やかすつもりはない。
たぶん...
「オジョウ、返事~!」
「はい、私は特に紅葉さんの見た目に気にしていませんわ。きっと、見た目の変化が遅い種族でしょう。お嬢様こそ、どうして『違和感』と言うのです?」
「え?」
どうしよう?
紅葉先生と柳さんの二人は仲良さそうだし、先生が「違法」な手段で長く生きていた事を柳さんにも伝えてるかもしれないが、その事を紅葉先生に確認していない。
もし、紅葉先生が「人を殺して生きていた」事を柳さんに伝えていなかったら、俺がうっかりそれを口にしたら、先生の為にも、柳さんの為にもよくない。
...隠す事にしよう。
「ボディがエロいのです!男の子の視線を独り占めしているのです!」
適当な事を言って、誤魔化した。
「あらあら、お嬢様はお年頃?」
柳さんが大袈裟に驚く。
「にゃっ?」
寝てる毛玉がタイミングよく起きて、大きな眼で俺を見つめる。
「お嬢様には、既に気になる人がいたのではないか。」
紅葉先生がアリエナイ事を言う。
これは良くない流れだ...変えよう。
「先生!教えて欲しい事がある。」
「またですか、お嬢様?何なりと聞いてください。」
「いいえ、そもそもコレが最初に聞きたい事なんだが、人生百...」
ん?ちょっと待って!
俺は今、紅葉先生に「人生百年」というルールに関する彼女の事を知ろうとしている。彼女の両親の死とか、彼女が「人の魂を喰らう」事とか。しかし、それでは結局柳さんに紅葉先生の秘密をばらしてしまい、さっきの「誤魔化し」が意味のない行動になる。
柳さんが俺の側にいる限り...というか、この屋敷内でなら、全ての「音」がモモに筒抜けだから、ここで紅葉先生にその事を聞けない。
くっ、これが「監視社会」か。まさか、彼女達を守るために、自分の「言論の自由」が制限されるとは思わなかった。
はぁ、仕方ない。一番最後の事だけを訊こう。
「...魔族!と、繋がってるって、本当?」
「紅葉さんが!?」
柳さんが驚いて、視線が俺と紅葉先生の間を泳ぐ。
あれ?これも「禁止ワード」だった!?
「はい。」
「ちょっ、紅葉先生!」
紅葉先生はあっさりと認めた。もうフォローができない。
「しかも、若い子の間で流行る『使い魔召喚』程度のものではない。私は本物の悪魔に魔力を提供している。」
「ほ~んもの?」
若い子の間で流行る?使い魔召喚?意外と魔族は人にとってそんな恐ろしいものではない、という事?
しかし、「その程度のものではない」と紅葉先生が言った。「フォローできない」と思い込んだ事が、「まだフォローできる」と分かったと同時に、結局「やはりフォローできない」事になっている!
くっ、何この高等プレイ?
「紅葉さん。今もその『悪いお友達』との関わりがありますの?」柳さんが主の俺が隣にいるのも気にせず、直接に紅葉先生に話しかける。
「今、もう提供していない。お嬢様の直属になるから、『魔族』ともう関わらない。」
「そう?良かったですわ。」
そう言って、柳さんはそれ以上何も言わなくなった。
あれ?意外と何ともなかった。
「悪いお友達」という言い方からして、「魔族」って、俺の世界の「極道」みたいなものかもしれん。安心...してはいけないんだが、ちょっと安心した。
しかし、誰だ!俺の紅葉先生に手を出した魔族野郎?
「で、誰なの?」
「悪魔の事が知りたいのか?」
「ダメなの?」
一応俺の「親友」と自称する魔族...というか魔王の知り合いがいるので、俺はそこまで魔族に嫌な感情を持っていない。
しかし、もしそれが良くない事なら、それなりに自制はしよう。
「...かの悪魔は自分の事を『強欲』・アワリティアと呼んでいる。」
「...へ?」
幻聴が...聞こえる。
聞いた事のある単語が聞こえた。
「名前は知りません。幼い女の子の姿をしているが、きっと私よりも長生きなのでしょう。
何度もあっているが、いつも楽しげに笑っていて、ちょっと不気味な悪魔だった。
その魔力の特徴は恐らく『殆ど感じない』ところでしょう。魔力がないと生きられない魔族でありながら、その悪魔から殆ど魔力を感じられないのに、ずっと生きている。
かの悪魔、微弱な魔力でも生きられる魔族であるなら、生きられる理由に説明がつくが、果たしてそう簡単に決めていい事なのでしょうか?
ん?お嬢様、大丈夫ですか?」
「え?」
紅葉先生に呼ばれた。
えっと、なんだっけ?何の話してだっけ?
「もしかしてお嬢様、体調が、もう限界でしょうか?」
「限界?体調?」
そういえば、今の俺は長く起きていられない体になっていたんだな。
別にそれが原因でボーっとしている訳じゃないんだが...今は屋敷内で、紅葉先生に色々聞きたい事が聞けない状態だ。無理に指輪のない時期に彼女にそれを確認しなくてもいいだろうし、また外出できるようになってから、学校なり、あのダンジョンなりで、そこで彼女と「密談」しよう。
それに、これからしばらくの間、毎日体力を残すようにしておこう。悪魔の事で、ティシェに直接確認がしたいから、彼女が来た時に起きられるようにしよう。
「折角会えたのに、ごめん、紅葉先生。今日はここまでにしよう。また指輪ができてから、お話ししよう。」
「あー...そうですね。今日は謝り来たつもりなのに、何故かそれが許されずに、別の話する事になった。」
「あまり話した気がしないんだが、紅葉先生、さよなら。君のあだ名も考えておくね。」
「それは...無理しなくて大丈夫です、お嬢様。無理しないでください。ロクなものにならない予感がするので、本当無理しないでください。」
あだ名をつける事に、紅葉先生から酷く反対された。
「柳、お嬢様をお願いします。今の私は近づく事も出来ないから。」
「承知しておりますわ。これから、同じ主に仕えるメイドとして、一緒に頑張りましょう。」
その後、俺は窓から紅葉先生が屋敷を出るのを見送って、柳さんに手を握られたままで、自分の部屋に戻った。
......
...
これはとある夜の事だが、俺は自分に訪ねてきた強欲の魔王・ティシェに、紅葉先生の事について尋ねた。
「だから『あの人に近づかない方がいい』と言ったでしょう?痛い目にあったね~。」
「いや、そういう話してんじゃない。私が言いたいのは君がその人に『契約』を持ちかけた事についてだな...」
「なになに?私を悪者にしたいの?ななえちゃん、私は貴女の為に、遠出のプレゼントもあげたのよ。酷いじゃないか。酷いじゃないか酷いじゃないか。」
「あぁ、まぁ...使う事はなかったけど、プレゼントはありがとう。しかし、それはそれ。紅葉先生の弱みに付け込んで、『契約』を交わしたよね。」
「私達悪魔は魔力がないと生きていけないのよ。もうそれを知ってるでしょう?彼女は力が欲しい、私は魔力が欲しい。ギブ・アンド・テイク、何がダメなの?」
「でも、私にとって紅葉先生が大事で...」
「貴女はいつ産まれたの?私がドラゴンと契約を交わした何百年後じゃない!どうやって貴女達が仲良くなるのを予知できるの?ねぇ、ねぇねぇねぇ!」
「あうあうあう...」
このように...
正直、最初はどう考えても俺は悪くない筈なんだが、彼女と喋っていた時はいつの間にか責められ側に立たされていた。
最後は俺が謝って、彼女が俺を「許す」事で終わりとなったが、その日は同時に彼女から悪魔について色々聞きたいと思っていたのに、何も聞けずに終わっちまった。
凄く釈然としなかった。
ただ、ティシェは紅葉先生に「魂を喰らう」力を与え、紅葉先生よりも長生きした悪魔だという事は分かった。
決して口にはできないが、ティシェの...あくまで俺の心の中の彼女のあだ名は「ロリババァ」と決まった。




