Side 勇者 1
「タキイ・ラグノール、呼び出しがかかったぞ!来い!」
緊急連絡が、ホールに響く。
「呼び出し……?」
「マジかよ!よかったな、タキイ!!」
ちょうど5対5の無重力テニスの試合の真っ最中だった。
けど、仲間たちはラケットを放りなげて、俺のとこけ駆けてきて、バンバン背中をたたく。
一瞬呆けていたけど、その痛みで、これが現実だとわかった。
「呼び出し……、き、き、きたーーーーー!!」
緊急連絡での呼び出し。
これは文明が完成しきってなにもかもコントロールされてるh2@;k-で、唯一のイレギュラーだ。
h2@;k-は、この宇宙圏でぶっちぎりに文明が発達している小星だ。
いちおう先進星自主規制連合に加入しているものの、あまりにも他の星との文明差が大きくて、栄光ある孤立をするしかない小星。
俺たちの遠いご先祖様は、他の星を侵略したり、文明を促進したり、未開生物をさらってペットにしたりといろいろやりたい放題だったらしい。
が、そういう関わりすら、近代では遠のいている。
あまりの文明差に、他星へは、興味や関心もわかなくなるらしい。
けど、そんな中でも例外はある。
それが俺たち、「ツガイ持ち」ってやつだ。
h2@;k-では、人類種の増殖は、男性種がマザーパールに自分の種を植え、マザーパールがある程度育った子を産みだすという形態をとっている。
けれど「ツガイ持ち」は、神代のころと同じように、同じ人間種同士が交わって子どもを産むという、極めて動物的な関わりを求めずにはいられないイレギュラーな人類種だ。
もちろんh2@;k-では、子どもを胎に宿せる女性種は大昔に絶滅している。
だから「ツガイ持ち」は、自分と番ってくれる相手を探すため、他星の人類種との出会いをいつも求めている。
まぁ子ども云々は言い訳のようなもので、実際に番う相手は、男性種であることも多いんだけどね。
けれど、相手は必ず他星の人類種。
なぜか他星でツガイとして男性種を選ぶ人間でも、同じh2@;k-の人間と番うことはない。
このへんの謎は、いまだ明かされていないのだが、問題はそこではない。
「ツガイ持ち」の「ツガイ」は、特定の誰かを指すわけじゃない。
だが、不思議なことに、出会えば「わかる」らしい。
先達は、口をそろえてそういっている。
そしてやっかいなことに、「ツガイ持ち」は、ツガイとして選んだ相手たった一人しか愛せない。
いくらイレギュラーな「ツガイ持ち」という人類種とはいえ、h2@;k-で生まれ育った人類種にとって、人間同士の交わりというのは生理的嫌悪があるからだろう。
連綿と体と心に受け継いできた常識すら跳ね返すほどの相手でなければ、性愛をともなう愛情など育てられないのだ。
つまり、ツガイとして選んだ相手に拒絶されたら、残りの人生は真っ暗ってわけだ。
大昔のこととはいえ、h2@;k-は、わりとガチで他星を侵略したり、他星を狩場にしたり、滅ぼしたりしてきた。
だが現在では、先進星自主規制連合の取り決めに寄って、他星への干渉をこまかに規制されている。
ぶっちゃけそんなもの無視して好きにふるまっても、他星などh2@;k-の敵ではない。
気に入らなければぷちっと潰してしまってもよいのだが、h2@;k-の人類種はおおむね鷹揚で、自主的に他者に足並みをそろえることにしていた。
そもそも大多数のh2@;k-の人類種は他星に興味などないので、干渉を規制されても問題はないのだ。
そして数少ないイレギュラーである「ツガイ持ち」は、自分のツガイに嫌われるようなことは、こわくてできないので、約束事を守らざるをえない。
そんなh2@;k-の人間が、他星への関わりを許される例外事項。
それが「ツガイ持ち」が申請するツガイがいる国への転移許可願だ。
「ツガイ持ち」というイレギュラーな人類種が、h2@;k-の鑑定で、自分のツガイがいると鑑定された星へ転移するのだけは、認められているのだ。
これは、「ツガイ持ち」だった連合国トップが他星を威圧して得た権利らしい。
けれど、転移許可にはひとつの条件がつけられていた。
相手の星から、h2@;k-の人間への招待がなされてなければいけないのである。
「ツガイ持ち」自体が少数だからか、実際に他星へ転移許可が出ることはほとんどない。
年に1件か2件……、まったくないまま10年がすぎることもある。
俺も5年前に成人してすぐ転移許可願を出してはいるものの、あと数十年待つくらいの覚悟はあった。
けど、呼び出しは来た!




