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Side シスレイ 3

 カミーユの婚約者のサイラスは、いい感じのクズだった。


 長年、多くの金と労力をカミーユに費やさせておきながら、カミーユを自分の下に置くために、徹底的に貶した。

おかげでカミーユの女としての価値は、ぼろぼろになっていた。

 たいていの男は、他の男からも価値があると認められた女に興味を抱くものだ。

どれだけ尽くしても婚約者にないがしろに扱われるカミーユは、そういった意味でも男たちから軽く扱われるようになった。

 しかもサイラスは、それを呼吸をするのも同然に、自然に行っていた。

自分でも、意図せずに行っていたのかもしれない。


 シスレイは、男をひきいれようとするのをカミーユに阻止されていら立つアンリエール姫に、そっと囁いた。

カミーユは、婚約者に執着している。

あの男との婚約を駄目にしたら、きっとカミーユは悲嘆にくれるだろう、と。


 アンリエール姫は、それに飛びついた。

カミーユとサイラスの婚約のくびきが、サイラスに支払われた大金だと知ると、自分の手持ちの宝石を売って現金をつくり、それをサイラスに渡した。

 このお金で、カミーユから自由になればいい、と。


 たっぷりの悪意を込めて囁かれた甘言に、サイラスはあっさりと乗った。

シスレイは、カミーユへの意趣返しを込めて、サイラスとも寝台を共にした。

そしてサイラスに、婚約破棄の場をよりドラマティックにするための知恵を授けた。


 サイラスは、見事にクズっぷりを発揮してくれた。

シスレイが指示した通り、公衆の面前で、カミーユを罵倒しながらの婚約破棄だ。

それは、あっという間に城中の話題になった。


 カミーユの生活は、あっという間に恥辱に落ちた。

シスレイは、アンリエール姫にあまい王を操り、サイラスを王の護衛騎士にした。

 サイラスは口が軽く、金ですぐに人を裏切る。

だからこそ、今回のアンリエール姫の所業も、この後どのように語るかわからない。

今でこそ噂は、金で婚約者に縛られていたサイラスをアンリエール姫が憐れみ、助けるために金を出したという美談のように語られているが、真相を知るものも多い。

 これ以上、アンリエール姫に悪い噂がつくのは困るでしょう?と言えば、王は悩みつつも、サイラスを自分のもとにひきたて、カミーユを貶す噂を出回らせた。


 カミーユはほとほと弱り、辞表をだしてきた。

しかし、こうなるとシスレイとしては、カミーユを傍においておきたかった。

そばで、彼女が弱り、腐っていく様を見ていたいと思った。

 さらにシスレイに操られた王は、カミーユの辞表を退けた。


 シスレイは、晴れ晴れと人生を楽しんでいた。

手元には、気に食わない女が泥にまみれ、絶望していた。

高貴な姫は身持ちを崩し、いまにもその人生は闇に落ちそうだ。

気に食わない女の婚約者は食いあきたものの、男は次から次へと面白そうな人間が出てくる。

今は、侯爵令嬢と幼馴染の婚約者を引き裂くのにも、はまっていた。


 このままずっと楽しい日が、これからもずっと続く。

そう思っていたのに。


 ある日、世界を壊すとかいう龍の卵が発見され、勇者などというわけのわからないものがこの世界に呼び寄せられた。

 そのせいで、シスレイのお楽しみの日々は、終わってしまった。

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