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Side シスレイ 1

ここから語り手が、悪い人のターン。

善意的に、常識がずれています。

暴力的・性的表現もすこし上がります。

苦手な方は、前のお話で終了してください。

 こんなはずじゃなかった、とシスレイは思った。

自分は、こんなふうに死ぬはずじゃなかったのに、と。


 シスレイは、ある男爵の愛人の娘として育った。

幼いころは、父が貴族だということも知らなかった。

けれど、裕福な父の援助のもと、大きな家で、たくさんの使用人にかしずかれ、たくさんのドレスやおもちゃに囲まれて、のびのびと育った。


 シスレイの母は、高級娼婦の娘として生まれ育ち、他の女を蹴落としてのし上がった生粋の娼婦だった。

そして裕福な男爵を捕まえ、シスレイを産み、愛人としてゆるぎない立場を得て、男爵の正妻が死ぬと、ちゃっかりと後妻におさまった。

シスレイが、13歳の時だった。


 そんな母を見て育ったシスレイだったが、彼女は母の計算高くも理性的な生き方から、なにも学ばなかった。

産まれた時からほしいものはすべて手に入れていたシスレイには、のし上がり安楽な生活を送ることを渇望した母のような気概はなかった。

欲しいものは手に入れ、飽きれば捨てる。

 それは、人間に対しても変わらないスタンスだった。


 だからシスレイは男爵家の娘として引き取られるまでにも、他の少女の恋人や夫に言い寄って、彼らの仲を裂き、飽きれば男を捨てる、そんな生活を送っていた。

 男爵家の娘として認められ、社交界に出てからも、それは変わらなかった。

彼女が毒牙にかける相手が、裕福な平民から貴族に変わっただけのことだ。


 そんなシスレイも適齢期を迎え、結婚を考える年齢になり、気づいた。

自分は男が好きなのではない、仲のいい恋人や夫婦の男を奪って、女たちが傷ついたり、怒ったりする様を見るのが好きなのだ、と。


 だから、シスレイは結婚はしないことにした。

ひとりの男に縛られるなんて、それがどんなに高貴な男であってもつまらない。


 もちろん、それは高貴な男に手を出さない、ということではない。

シスレイは王族にも、王にも、手を出していた。

 ふだん偉そうな男たちが寝台の上ではみっともなくシスレイを希うのを見るのも楽しかったし、とりすました女たちが陰で泣いているのを見るのは、とびっきり楽しかった。


 そうやってシスレイが好き勝手に生きていると、思わぬ楽しい獲物が手に入った。

この国の唯一の姫であるアンリエール姫である。


 とびきり高貴な家柄の、とびきりかわいらしい容姿の少女は、愚かな王に甘やかされ、なにもかもを手にして生まれ育った。

 そのくせ自分自身では、これといった望みもない性質だったので、そばにいる強烈な個性を持つ女性……シスレイに羨望し、彼女を師としてあおごうとした。


 シスレイは、自分以外の女は、すべて自分をねたみ、にくみ、恨んでいればいいと思っていた。

けれど、とびきり高貴な純なる姫君が、身を持ち崩し、自身の手で未来を暗黒に染めていく愚かな様は、王を褥で翻弄するよりも楽しく感じた。


 シスレイにしては珍しく、女のアンリエール姫に笑顔を向け、甘言をささやき、あっという間に彼女を自分に隷属させることに成功した。

 アンリエール姫はシスレイにそそのかされるままに男たちを寝台にひっぱりこみ、自分の身もちと評判を地に落とした。

 高貴なる姫君が、顔がいいだけの平民の男まで寝台に連れ込むのをそそのかしつつ、彼女が孕むようにシスレイは神に祈りをささげた。


 そんな生活を送っていると、アンリエール姫を面と向かってたしなめられない愚王も、不安を感じたのだろう。

お目付け役のような護衛騎士を、アンリエール姫につけた。

 それがくだんの女騎士、カミーユである。


 

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