Side 勇者 7
すごくわかりやすく説明してあげたのに、女の子はまだ現実が受け入れられないみたいだ。
顔を真っ赤にして、きぃきぃと叫び始める。
困った。
耳が痛い。
さすがにこんな小さな子をぷちっとしたら、ツガイに嫌われるよな。
子をはらんで産む人類種は、自分の子どもじゃなくても、子どもに対する思い入れが深いっていうし。
群れの子どもをぷちっとしたら、いろいろ問題になるかもしれない。
まぁ、いざとなればこの星ごと支配して、誰も俺のすることに文句を言えなくする、とかでもいいかもしれない。
あー、でもほんと、この女の子うるさいなぁ。
きぃきぃきぃと。
ていうか、この人類種、小さいから子どもだと思ってたけど、よくみるとそこそこの年齢っぽい。
10代半ばくらいじゃないかな。
そのくらいの年齢なら、未開地の人間なら成人しているかもしれない年齢だ。
場をわきまえない身勝手な発言を続けるようなら、ぷちっとしても許されるかもしれない。
それにしても、この星に住む人は全体的に、ほんとに小さいなぁ。
そのせいで、頭の中身も小さいんだったりしないよな。
h2@;k-の人類種は、一時期自分たちをより優れたものにするために、あれこれ遺伝子を操作したことがあった。
だからたいていの異星人より、h2@;k-の人類種は大きく、美しく、知能や体力に優れているっていわれている。
このホールにいる人間種も、ほとんどの人間が俺の肩くらいまでしか身長がない。
カミーユは、他の女性種よりかなり大きい。
この星の女性種としては珍しい長身であることは、事実のようだ。
けれど、俺から見れば他の女性は小さすぎる。
この星の平均的な女性種は、マザーパールが生み出す子どもたちより少し大きいくらいの背丈だ。
なのに、顔だけは老けている。
顔だけ老けた子どもがいっぱいいるようで、正直にいえば若干気持ちが悪い。
ツガイの星の人間だ。
未開人への差別意識は持たないようにしているけど、ツガイ以外の未開の人類種にはやっぱりちょっと嫌悪感を感じてしまう。
彼らの野性味が、h2@;k-とは違いすぎるからだろう。
たいていは時間が解決してくれると、他星へ転移した諸先輩方は言っていたが。
それにしても、この女の子、いつまでわめき続けるつもりなんだろ。
この喧騒の中でツガイを口説くのは、効果が落ちそうで嫌なんだけどな。
ていうか、いいかげん恥ずかしくならないのかな。
こんな美しいツガイの前で、ずっと劣る容姿の女の子が、ツガイを罵るなんて。
どんな罰ゲームだよって感じなんだが。
このとき俺は、まさかツガイが、この女の子の言葉を気にするなんて、思ってもみなかった。
俺にとっては、ツガイがこの世でいちばん美しいってのが当然って認識で、女の子の容姿は残念としかいいようのないものだったからだ。
こいつ、この顔でよくツガイみたいな美人をこきおろせるなぁってあきれはするけど、真剣にとりあうようなものじゃないよなって感じだし。
ただただうるさくて不快だけどさぁ。
だけど、女の子のうるささにとうとう我慢できなくなった俺が、ツガイが見ていない間に、女の子をぷちっとしようかと思って、ツガイを見ると。
ツガイの目が、うるんでいた。
喜びではなく、悲しみのために。
ツガイは唇をかみしめ、手をぎゅっと握りしめている。
ああ、俺のカミーユが……!
この女の子のせいで、悲しんでいる……!




