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警察不信  作者: 山本正純
Episode 5 銀の弾丸
99/106

Side.099 関係者たち Persons concerned

 午後10時25分。殺人事件の捜査は容疑者が特定されないまま時間だけが過ぎて行った。

 一方大野と海原の2人は浅野の話から未解決事件が動機ではないかと思い、関係者5人に話を聞くことにした。

 

 まず彼らが話を聞いたのは、酒井忠義衆議院議員と井伊尚政法務大臣。

 大野は単刀直入に酒井に質問する。

「このパーティー会場にいる人間は全員山本尊さんを恨んでいると考えていいでしょう。そしてあなたたちは山本尊が持っていた招待状には明日香という名前が書いてありました。そのことを聞いたあなたたちは顔を曇らせましたよね。なぜでしょう」


 酒井は大野の質問を聞き失笑した。

「そんな回りくどい質問をするとは。簡単な話だ。あの殺人事件の背景に倉田明日香が絡んでいるとしたら、不祥事が浮上する。それだけはどうしても避けなければならない」


 井伊は酒井の言葉に続いた。

「あの隠蔽した事件が浮き彫りになれば、隠蔽に関わった政府関係者は全員政界から追放されるでしょ

う。隠蔽工作に関わった政府関係者の中には、総理大臣もいます。真相が明らかになれば、日本政府史上最大の不祥事になる。それが堕天使たちの報復。小松原正一はこの日本政府がグルになって隠蔽工作に加担するという構図が許せなくて、不祥事を公表しようとしていました」

 井伊の言葉を聞いた酒井は激怒した。

「堕天使たちの報復については話すなと言っただろう。あれは機密事項だからな」

 酒井の一言で井伊は口を堅く閉ざした。


 これ以上彼らから話を聞くことは困難だろうと思った2人は、次に神部首相補佐官に話を聞く。

「一つだけ質問させてください。なぜあなたは倉田明日香さん失踪事件の隠蔽工作を止めようとしなかったのですか。愛すべき息子が殺されたのです。父親として犯人を逮捕してほしいと思うのが自然なはずですが」

「無理だった。仕事に私情は禁物だから、父親にはなれなかった。邪魔だったんだ。衆議院議員という役職が。役職は人を変えると誰かが言っていたが、それは正しかった」

 すると神部首相補佐官はあることを思いだした。

「そうだ。倉田明日香失踪事件が事件の背景にあるとしたら、怪しい人物がいる。瀬戸内平蔵だ。彼と杉谷雄介は高校の同級生。事件を隠蔽したことをひどく恨んでいるらしい」

 

 神部首相補佐官からの情報から、瀬戸内平蔵が第一容疑者として浮上した。大野たちは瀬戸内に事実確認をする。

「瀬戸内さん。あなたは杉谷雄介さん失踪事件までも隠蔽した日本政府が許せなかったのではありませんか」

 瀬戸内は大野の問いに頷いた。

「はい。そうですよ。僕は今でも隠蔽に加担した政府関係者を許せません。雄介が失踪した日最後に彼に会ったのは僕です。もしもあの日部室に忘れ物をしなければ、彼は一人にならなかった。そうなったら、あんな所に監禁されることもなかったでしょう」


 これ以上の話を聞くことができなかった大野たちは、最後にホテルの支配人大塚に話を聞いた。

「大塚さんは1999年の大晦日に投身自殺した環境省幹部の弟ですよね。そのことについて恨んでいませんか」

「恨まないと言わないと嘘になる。だけど兄さんに馬場研究所の研究への出資を勧めたのは俺だから、俺自身も恨んでいる。もしも復讐するなら、爆弾を使って隠蔽工作に関わった政府関係者を皆殺しにする。爆弾で皆殺しにするという話は冗談だけどね」

 

 一通り話を聞いたが、犯人を特定することはできなかった。そんな大野の携帯電話に合田から電話がかかってきた。

『合田だ。今そっちに向かっているが、その前に一つ報告させてくれ』

「それどころではありません」

 

 大野は山本尊がパーティー会場内で毒殺されたことと、容疑者は明日香という名前に反応した5人の中にいるのではないか推理していることを合田に伝えた。すると合田は驚き大野に事実を伝える。

『倉田明日香か。それならこの報告が事件解決の手がかりになるかもしれない。13年前の7月31日栃木県にある倉田さんのお屋敷を鬼頭が襲った。その日はホームパーティーを開催されており、彼もパーティーに招待されていたそうだ』

「彼とは誰でしょう」

 大野は合田の言葉を聞き顔色を変える。

「ありがとうございます」


 大野はやっと犯人が分かった。その推理を大野は喜田参事官に伝える。だが喜田は推理を聞いても納得しなかった。

「それが事実だとしても証拠がありません」


 すると喜田の元に赤城がビニール袋を持って現れた。

「喜田参事官。パーティー会場内に設置してあるゴミ箱からも毒物は発見されませんでした」

 その報告を聞いた大野は犯人をはめる罠を思いついた。

「喜田参事官。頼みがあります」


 午後10時55分。犯人は捜査が進展しないことを喜んでいた。

(やはり無能な警察は真相を掴めていないようだ)

 そんな犯人の前を二人の刑事が通り過ぎた。犯人の耳には刑事の会話が聞こえた。

「聞いたかよ。ステージ裏から不審物が発見されたって」

「早く報告した方がいいかもな。もしかしたら退屈な天使たちの仕掛けた爆弾かもしれないからさ」

 二人の刑事の会話を聞いた犯人は笑った。

(これで証拠は完全に消える)


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