Side.096 無意味な対決 Meaningless confrontation
三分も経たない内にレミエルは黄色い鴉が対戦している公安の刑事を見つけた。
レミエルは堂々と公安の刑事の前に立ちはだかる。公安の刑事は拳銃を構えて叫ぶように話す。
「まさかお前は退屈な天使たちのメンバーではないだろうな」
「ああ。そうだ」
レミエルから発されている異常なオーラを感じ公安の刑事は身震いする。
「この場であなたを拘束・・」
レミエルは拳銃で公安の刑事の頭を撃ちぬいた。一人目の公安の刑事はあっさりと殺害された。
その頃ハニエルは二人目の公安の刑事と5階の廊下で遭遇した。
「こんなかわいい姉ちゃんもテロリストかよ。絶対キャバクラにいた方が儲かるって。そしたら毎日のようにみつぎに行ってやるからさ」
刑事らしからぬ発言にハニエルは笑った。「辞世の句はそれでいいですか」
彼女は鞘を抜くと公安の刑事との距離を一騎に縮め、刑事の体を一刀両断する。これでもかというくらい廊下の床は血に染まった。
ハニエルは二人目の公安の刑事の携帯電話を奪い取り、着信履歴を確認する。
同じころレミエルも一人目の公安の刑事の携帯電話の着信履歴を確認した。どちらの携帯電話も二人の人物と1時間以内に頻繁に連絡を取っていた。
二人はシンクロしたように同じ言葉を呟く。
「鼠はあと一匹」
午後9時45分。ハニエルは株式会社マスタード・アイスを走り回っていた。
彼女はスマホで電話をしながら1階に向かっている。
「ピンクの鴉さん。非常口にあの爆弾を仕掛けてください。もしかしたら非常口から公安の刑事が脱出するかもしれません」
一方レミエルは階段を走り去る人影を目撃した。暗闇に包まれているため顔は分からない。
「1階の玄関から逃げようとしていやがるな。逃がさねぇ」
レミエルも1階へ向かった。その人影がハニエルだとは知らないで。
1階は電球が壊れているようで真っ暗で何も見えない。全く人の気配を感じなかったハニエルはまだ公安の刑事が逃げ込んでいないと判断し、自動ドアから離れた位置で待っている。
「暇ですね」
ハニエルが小さな声で呟いているとレミエルは1階に到着した。レミエルはかすかな人の気配を感じ取る。
(おもしれぇ。一騎打ちか。逃げておけば死ななくて済んだものを)
レミエルはデザード・イーグルに弾を込め引き金を握る。
殺気を感じ取ったハニエルは名刀黒薔薇を構える。
(受けて立ちます)
レミエルは暗闇の中で銃弾を発砲する。
ハニエルは華麗に銃弾を避け、レミエルに襲いかかる。
(馬鹿だ。俺との距離を縮めやがった)
その時突然ビルが揺れた。爆音が鳴り響いているから地震ではないだろう。
ハニエルは頬を緩ませる。
(どうやらトラップにかかったようですね。ということは4人目の公安の刑事がいたようですね)
それから10秒後何者かが懐中電灯の光が1階を照らした。堂々とサラフィエルは1階の自動ドアから侵入した。彼は懐中電灯を握っているから彼が照らしたのだろう。
「レミエルはん。あかんで。かわええ姉ちゃん襲っちゃ」
その時レミエルは初めて知った。先ほどまで交戦していた相手はハニエルだったということを。
「騙された。まさか交戦していた相手がお前だったとはな」
「はい。まさかレミエルさんと対戦することになるとは思いませんでした。公安はどんな手段を使ってでもテロリストを逮捕するって聞いたことがあるから、公安の刑事だと思いましたよ」
ハニエルの話にレミエルは同感だった。
ハニエルは突然現れた男の顔を見て驚いていた。今ハニエルの前にいる茶髪に赤い眼鏡をかけている痩せ型の男は午前中に起きたバスジャック事件で一緒に人質となった男。東條清太郎だった。
サラフィエルも江角の顔を見て驚いている。
「誰やと思ったら江角はん。また会えるとは思わんかったな」
レミエルは二人の会話を聞き、二人がバスジャック事件の時に隣に座って話し合っていたことを思いだした。ハニエルとサラフィエルは面識があるのだ。
「サラフィエル。先ほど爆発があったよな。何か知らないか」
するとハニエルは手を挙げた。
「それなら私です。三人目の公安の刑事が非常口から脱出するかもしれないと思って、非常口に流星会アジト爆破事件の時に使った爆弾を改良した、人の熱を感知したら爆発するタイプの爆弾を設置しました。おそらく間抜けな三人目さんは爆死したのでしょう」
その後3人は最上階へ向かい歩き出した。




