Side.085 三分だけの天下統一 World unification only for 3 minutes
午後3時バスは横浜駅に到着した。それからすぐに名乗り出た3人がバスから解放された。追跡していた3台のパトカーは彼らを保護する。
間もなくしてバスは再び走り出した。バスは東京スカイツリーへと向かう。
バスジャック事件の人質として解放された山田伸也の周りには多くの警察官が集まっている。
その内の一人の刑事は逮捕状を見せる。
「山田伸也。誘拐の容疑で逮捕する」
山田は全く抵抗することがなかった。潔く山田は警察署に移送された。罪から逃げないと決めた彼は黙秘することはないだろう。
退屈な天使たちという脅威は通り過ぎた。これでやっと当初の目的である小早川せつなに会うことができる。牧田が安堵していると、車内から銃声が聞こえた。
白いジャージを着た金髪の男と横綱のように太っている男と青いロリータ服を着た女の3人が拳銃を発砲したのだ。
金髪の男は笑いながら銃口を牧田に向ける。
「退屈な天使たちというプロ集団までこのバスを狙っていたと聞いた時は焦ったぜ」
牧田は冷や汗を掻く。
「まさかお前らも」
青いロリータ服の女は微笑みながら答える。
「そうよ。私たちもバスジャック犯。当初は鎌倉にいるボスと一緒にバスジャック事件を起こす予定だったのに。あなたがその前に乗り込んできてバスジャック事件を起こしたから3人で行うプランBを実行することになったじゃない」
太った男は周りを振り返る。バスの周りにはパトカーがなく、代わりにヘリの音が聞こえた。
「どうやら警察はヘリコプターでの追跡に切り替えたらしい」
金髪の男は牧田に銃口を近づける。
「俺たちのバスジャック事件を邪魔した罰だ。死で償え」
すると江角千穂は立ち上がり拍手した。
「すばらしいですね。第二のバスジャック犯さん。ここで彼を殺しても意味はありません。なぜなら証人が4人もいるから、あなたたちが彼を殺害したことは証明されるでしょう」
太った男は江角に殴りかかる。
「証人は出ないぜ。だってプランBは鎌田が持っているマシンガンで人質全員を乱射して殺害。その後命からがら逃げ延びたように演技して、罪をそのバスジャック犯に着せるような嘘の証言をするってやつだからよ」
東條は江角を庇い太った男の拳を受け止める。
「無駄や。そんなシナリオ成立せえへんで。俺と江角はんは死なへんから」
東條は左手で太った男の溝内を殴る。たった一発で太った男は気絶した。
東條は立ち上がり、金髪の男に近づく。
「次はあんたらの番や」
金髪の男はマシンガンを取り出す。
「そんな格闘技は近づかなければ当たらない。つまりマシンガンがあるかぎり、そんな格闘技意味がない」
東條は口笛を吹く。
「あんたが鎌田かい。でもな、それが通用するのは、アマチュアまでやで」
鎌田は東條の体を狙いマシンガンを乱射する。だが銃弾は鎌田の体に当たらない。江角は銃弾を少ない動きで避けているのだと思った。だとするとこの男はかなりの動体視力の持ち主だろう。只者ではない。
「全然当たらへんやん。自分。初心者やろ。銃器になれてないから簡単に避けられるんや。まああんたがプロでも結果は変わらへんけどな」
東條は手を挙げながら鎌田に近づく。
「一方的にやれれるんはつまらんやろ。これから1分間黙って一歩も動かずに、攻撃もせえへんから、いくらでも攻撃してええで。1分で俺を殺せんかったら、反撃するからな」
ふざけたことだと鎌田は思った。鎌田はマシンガンを捨ててポケットからナイフを取り出す。
「いいだろう。1分でお前を殺す」
鎌田はナイフを持ち東條に襲いかかる。だが東條は一歩も動かない。逃げるそぶりがなかったことから江角は東條が本気であることを悟った。
鎌田は何度もナイフで東條の心臓を狙い刺す。だが東條の体に傷一つつけることはできない。
「化け物だ」
1分が経過しても東條は死ぬことはなかった。自分より強いボスでも軽い切り傷を作るだけで精一杯だろうと鎌田は思った。
「1分経過や。終わりやで」
鎌田の右頬に強い衝撃が走った。東條が素手で彼の右頬を殴ったのだ。鎌田はその場に倒れこんだ。たったの一撃で気絶させるほどの打撃が出せる東條は化け物だと考えながら鎌田は意識を失った。
青いロリータ服の女は冷や汗を掻く。仲間を一撃で気絶させるほどの実力者が目の前に現れたのだから無理もない。
(冗談じゃないわ。あんなの受けたら死ぬかもしれないじゃない)
東條はロリータ服の女の顔を見るとニヤリと笑った。
「大丈夫や。女と子供は手加減するで。さっきの鎌田ちゅう兄ちゃんを気絶させた時の力の3割で行くわ」
東條は青いロリータ服の女に近づき、彼女の耳元で囁く。
「あんた。右利きやろ」
女の右足を強い衝撃が襲う。東條は蹴り技を使った。
東條は後ろに倒れた女を抱きとめ、彼女の左足も蹴る。これで両足の骨は折れただろう。
あきらかに手加減なんてしていない。女は倒れた。
東條は女の顔を見て微笑む。
「これでも手加減はしたで。あんたの骨が脆かっただけの話や。女の顔はどうしても傷つけとうなかったから、両足に蹴り技を使ったんやけど、まさか骨が折れるとは思わんかったわ」
こうして偶然居合わせた3人のバスジャック犯は気絶した。彼らのバスジャック事件の時間はたったの3分。三日間だけ天下をとったあの武将も驚くだろう。




